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アクアポニックスとは?仕組みや利点、将来性を解説!

記事作成日:2025.04.30
「省スペースで効率よく野菜を育てたい」「環境に優しい方法で食料を生産できないか」とお考えではありませんか?近年注目を集めている「アクアポニックス」は、魚と植物を同時に育てる革新的な農法です。水の使用量を大幅に削減し、化学肥料も必要なく、限られたスペースで高い生産性を実現できます。本記事では、アクアポニックスの基本から始め方、将来性まで詳しく解説していきます。
アクアポニックスとは?仕組みや利点、将来性を解説!

目次

アクアポニックスって何だろう?

アクアポニックスは従来の農業とは異なる、新しい食料生産システムです。魚の養殖と植物の水耕栽培を組み合わせることで、持続可能な形で食料を生産する方法として注目されています。

1-1魚と野菜が一緒に育つ不思議な仕組み

アクアポニックスは「アクア(水)カルチャー(養殖)」と「ハイドロポニックス(水耕栽培)」を組み合わせた言葉です。この方法では、魚を飼育する水槽と植物を育てる栽培ベッドを接続し、お互いに良い影響を与え合いながら成長させます。
魚の排泄物が植物の栄養になり、植物は水をきれいにして魚に戻すという循環が特徴です。従来の農業と比べて土を使わず、水を効率的に使うことができます。環境への負荷が少ないのが大きな魅力です。

1-2自然の力をそのまま活かした循環システム

アクアポニックスは自然界の生態系を小さくしたような仕組みです。川や湖の生態系では、魚の排泄物が水中の微生物によって分解され、それが水生植物の栄養となります。植物は栄養を吸収することで水を浄化し、魚が住みやすい環境を作ります。
アクアポニックスはこうした自然の循環を人工的に再現したシステムなのです。特別な化学物質や肥料を必要とせず、自然が持つ力だけで野菜と魚を育てられることから、有機栽培を求める人々からも高い評価を受けています。

1-3意外と長い歴史!昔から注目されていた理由

実はアクアポニックスの原型は古くから存在していました。紀元前1000年頃、中国では水田で魚を飼育する方法が行われていましたし、アステカ文明では「チナンパス」と呼ばれる水上の農地で似たような農法が使われていました。現代的なアクアポニックスとしては、
1980年代に商業的なシステムが開発され始め、研究が進んできました。長い間注目されてきた理由は、水の使用量を大幅に減らせることと、肥料を外部から加える必要がないという持続可能性にあります。都市部での食料生産や水資源の乏しい地域での農業として大きな可能性を秘めています。

どうやって動くの?仕組みを解説

アクアポニックスの魅力は、その循環するシステムにあります。自然のバランスを活かした仕組みで、いかに効率的に食料を生産できるのか見ていきましょう。

2-1魚・微生物・植物の三者関係が鍵

アクアポニックスの中心となるのは、魚、微生物、植物の3つの生き物の関係です。魚は水の中で生活し、餌を食べて排泄物を出します。この排泄物には窒素化合物のアンモニアが含まれており、高濃度になると魚にとって有害です。そこに登場するのが微生物です。
水中の有益な微生物がアンモニアを亜硝酸塩に、さらに硝酸塩へと変換します。この硝酸塩こそが植物にとって重要な栄養素となります。植物はこの栄養を吸収して成長し、同時に水を浄化します。そして浄化された水が再び魚のもとへ戻るという循環が完成するのです。

2-2排水が栄養に変わる不思議な循環

アクアポニックスの水循環は、とてもシンプルでありながら効率的です。まず、魚の水槽からポンプで水をくみ上げ、植物の栽培ベッドへと送ります。この水には魚の排泄物が含まれていますが、これが微生物の働きで植物の栄養へと変わります。
栽培ベッドの中で植物が水中の栄養を吸収し、きれいになった水は重力で自然に魚の水槽へと戻ります。この循環により、水の無駄がなく、また魚の水を頻繁に交換する必要もありません。一般的な養殖では水の入れ替えが頻繁に必要ですが、アクアポニックスではその必要がほとんどないのです。

2-3家庭でも作れる!必要な道具と設置方法

家庭でアクアポニックスを始めるのに必要な基本的な道具と設置方法を紹介します。初心者でも簡単に始められるよう、シンプルなシステムから説明します。
アクアポニックスに必要な基本的な道具は以下のとおりです。
魚の水槽:
20リットル以上が理想
水中ポンプ:
水を循環させるため
栽培ベッド:
プラスチック容器でも可
水質フィルター:
オプション
エアポンプ:
水中の酸素を増やすため
栽培メディア:
LECA粘土ボール、軽石など
水質検査キット:
pH、アンモニア、硝酸塩を測定
初期の魚の数匹:
金魚やティラピアが適しています
植物の種や苗:
レタスやバジルなどの葉物野菜が最適
設置は比較的シンプルで、魚の水槽の上または横に栽培ベッドを置き、ポンプで水を循環させる仕組みを作ります。栽培ベッドには栽培メディアを敷き詰め、その上に植物を植えます。システムが安定するまでは水質を頻繁にチェックし、魚の健康状態を確認することが大切です。初期投資は少し必要ですが、一度システムが安定すれば、少ない手間で野菜と魚を同時に育てることができます。

アクアポニックスの5つのメリット

アクアポニックスには従来の農業方法と比べて多くのメリットがあります。環境にやさしいだけでなく、効率的で生産性も高いのです。どんな点が優れているのか詳しく見ていきましょう。

3-1自然に任せる栽培法

アクアポニックスの大きな魅力は、一度システムが安定すると非常に少ない手間で維持できることです。通常の畑作業では、土づくり、水やり、雑草取り、害虫対策など様々な作業が必要ですが、アクアポニックスではそのほとんどが不要になります。土を使わないので雑草が生えず、除草作業は完全になくなります。
また、閉鎖的なシステムなので害虫の被害も比較的少なく、農薬を使わずに済むことが多いです。水やりも自動化されているため、日々の作業は魚に餌をやることと、時々水質をチェックする程度で済みます。忙しい現代人にとって、手間を最小限に抑えながら新鮮な野菜を育てられる点は大きな魅力といえるでしょう。

3-2水の節約に貢献

アクアポニックスの素晴らしい点の一つが、水の使用量の少なさです。従来の土耕栽培と比べると、なんと約90%もの水を節約できるといわれています。これはなぜでしょうか。伝統的な農業では、水をやると多くが地中に浸透したり、蒸発したりして失われます。
一方アクアポニックスでは、水は閉鎖系のシステム内で循環し続けるため、追加する水は蒸発分のみです。例えば、レタス1キログラムを生産するのに必要な水は、通常の農業では約250リットルと言われていますが、アクアポニックスでは約25リットル程度で済みます。水資源が限られている地域や、将来の水不足が懸念される世界において、この水節約効果は非常に重要な意味を持ちます。

3-3生産性の高さの秘密

アクアポニックスで育てた植物は、従来の土壌栽培より速く成長することが知られています。例えばレタスの場合、通常の栽培では収穫まで60〜90日かかるところ、アクアポニックスでは30〜40日程度で収穫できることも珍しくありません。この高い成長率の秘密は、常に新鮮な栄養が供給されることと、植物が栄養を吸収しやすい形で提供されることにあります。
土壌では根が栄養を探して伸びる必要がありますが、アクアポニックスでは栄養を含んだ水が直接根に触れるため、植物はエネルギーを成長に集中できます。また、栄養バランスが整った環境で育つため、栄養価の高い野菜が育ちます。限られたスペースでより多くの収穫を得られる点も、都市農業や家庭菜園にとって大きなメリットです。

3-4完全オーガニックで安心安全

アクアポニックスの大きな魅力は、農薬や化学肥料を使わないオーガニックな栽培方法だという点です。システム内には魚が生きているため、有害な化学物質を使うことはできません。魚の排泄物が自然な肥料として機能するため、外部から化学肥料を加える必要もありません。また、閉鎖的な環境で育てるため、病害虫の発生リスクも低く、自然のバランスが保たれていれば病気も発生しにくいのです。
これにより、安全で健康的な野菜を家庭で育てることができます。アメリカなど一部の国では、アクアポニックスで育てた作物にオーガニック認証を与えています。化学物質の摂取を減らしたい人や、食の安全にこだわる人にとって、アクアポニックスは理想的な食物生産方法と言えるでしょう。

3-5魚と野菜が同時に育つ

アクアポニックスの大きな特徴は、一つのシステムで魚と野菜の両方を同時に育てられることです。これにより、限られたスペースで二種類の食物を生産でき、効率が非常に高くなります。例えば、4平方メートル程度のシステムでも、年間で数十キロの野菜と数キロの魚を収穫できます。
魚はティラピアや金魚、鯉などが一般的に使われますが、ティラピアは食用としても人気があります。家庭での小規模なシステムでも、レタス、バジル、水菜などの葉物野菜とともに、食卓に上る魚も育てられる可能性があります。また、観賞用の魚を育てる場合は、美しい魚を眺めながら新鮮な野菜も収穫できるという、実用性と楽しさを兼ね備えたホビーにもなります。

始めてみよう!家庭でのアクアポニックス

アクアポニックスの基本を理解したところで、実際に家庭で始める方法を見ていきましょう。初心者でも失敗しないコツや必要な準備を詳しく解説します。

4-1初心者でも大丈夫!小さく始める方法

アクアポニックスを始めるなら、最初は小さなシステムから始めるのがおすすめです。小規模なシステムであれば、失敗しても被害は少なく、経験を積みながら徐々に拡大していくことができます。最も簡単な方法は、10〜20リットル程度の小さな水槽と栽培容器を使ったミニシステムです。水槽の上に直接栽培容器を置き、簡単な排水システムを作るだけでも始められます。
初期の植物は、水耕栽培に適した葉物野菜(レタス、バジル、ミントなど)を選びましょう。魚も最初は丈夫な金魚やメダカなど、環境変化に強い種類を選ぶと安心です。小さく始めることで管理も簡単になり、アクアポニックスの基本的な仕組みを学ぶことができます。

4-2気になる費用は?準備するものリスト

アクアポニックスを始める際の費用は、システムの規模や材料の選び方によって大きく変わります。初心者向けの小規模なシステムなら、1万円から3万円程度で始めることができます。費用を抑えるためには、手に入りやすい材料でDIYするのがおすすめです。
基本的な費用の内訳は以下の通りです。
魚の水槽:
2,000円〜10,000円(中古品やプラスチック容器の活用も可)
水中ポンプ:
1,500円〜3,000円
エアポンプ:
1,000円〜2,500円
栽培ベッド:
1,000円〜5,000円(プランターやプラスチック容器でも代用可)
栽培用メディア:
2,000円〜5,000円(LECA、軽石など)
水質テストキット:
1,500円〜3,000円
配管材料:
1,000円〜2,000円
初期の魚:
500円〜2,000円(種類による)
植物の種や苗:
500円〜1,000円
ホームセンターやインターネットで材料を探すことができます。リサイクル品や代替品を使うことでさらに費用を抑えることも可能です。

4-3失敗しない育て方のポイント

アクアポニックスを成功させるには、いくつかの重要なポイントがあります。まず「システムの安定化」が大切です。特に立ち上げ初期は一度に多くの魚や植物を入れず、少しずつ増やしていきましょう。水質は定期的に測定し、pH値(6.8〜7.2が理想)やアンモニア、硝酸塩のレベルを確認します。
次に「適切な魚の密度」も重要です。水1リットルあたり1〜2cmの魚が目安です。また「水温の管理」も必須で、魚と植物の両方が快適に過ごせる温度(多くの場合20〜26℃)を維持しましょう。日々の観察を欠かさず、小さな変化も見逃さないことが成功への鍵です。

何を育てる?適した生き物と植物

アクアポニックスでは何でも育てられるわけではありません。システムの特性に合った生き物と植物を選ぶことが、成功への近道です。初心者が選びやすい組み合わせを見ていきましょう。

5-1初心者におすすめの野菜&ハーブ5選

アクアポニックス初心者には、成長が早く管理しやすい植物がおすすめです。特に葉物野菜やハーブ類が適しています。
①レタス
最も育てやすく、30〜40日程度で収穫可能。少ない栄養でも成長します。

②バジル
香りが魅力で、成長が早く収穫も簡単。葉を部分摘みすれば長期間楽しめます。③水菜:アクアポニックスとの相性抜群で、25〜35日で収穫可能。寒さにも比較的強いです。

④ミント
非常に丈夫で失敗が少ないハーブ。成長が早いので他の植物から離して育てます。

⑤パクチー
独特の香りが特徴で、約30日程度で収穫できます。いずれも水耕栽培に適しており、初心者でも成功しやすいでしょう。

5-2これは避けよう!栽培が難しい植物

アクアポニックスでは育てにくい植物もあります。まず根菜類(ニンジン、大根、ジャガイモなど)は避けましょう。これらは根の発達に十分なスペースと支持力が必要で、水耕環境では難しいのです。
特にジャガイモなどの地下茎は水中で腐りやすい傾向があります。また果菜類(トマト、ナス、ピーマンなど)も初心者には難しめです。
これらは実をつけるために多くの栄養素を必要としますが、初期システムでは供給が不十分なことがあります。冷涼な環境を好む野菜(ホウレンソウなど)も、魚に合わせた水温では暑すぎる場合があるため注意が必要です。

5-3どんな魚を選ぶ?おすすめの種類

アクアポニックスに適した魚は、環境変化に強い丈夫な種類がおすすめです。金魚は最も一般的で、温度変化や病気に強く初心者に最適。水温18〜24℃が適しており、観賞用としても楽しめます。
ティラピアは商業用によく使われ、成長が早く飼育も容易。食用としても利用できますが、水温23〜30℃と高めを好みます。コイも丈夫で環境変化に強く、入手しやすいのが魅力です。排泄物が多いため植物への栄養供給も優れています。メダカは小型システムに適しており、日本の気候にも合っています。小さなスペースで飼育でき、管理も簡単なため、初心者の最初の一歩として最適です。

気をつけたい!課題と対処法

アクアポニックスには多くのメリットがありますが、実際に始めると様々な課題も出てきます。これらの課題を知り、事前に対策を立てておくことで、スムーズに運用できるようになります。

6-1最初が肝心!導入時のコストと工夫

アクアポニックス導入時の大きな課題は初期コストです。しかし工夫次第で抑えることが可能です。まず、既存の物をリサイクルしましょう。使わなくなった水槽やプラスチック容器は再利用できます。ホームセンターの収納ボックスも水槽や栽培ベッドの代用になります。
DIYも大切です。専門部品より安価な代替品を探したり、自作したりすることで節約できます。ペットボトルを利用した栽培ポットはほぼコストゼロです。また小さなシステムから始めることで、失敗リスクも投資額も抑えられます。経験を積んでから徐々に拡大していく方法が賢明でしょう。

6-2トラブル発生!よくある問題と解決法

アクアポニックスでよく起こるトラブルと対処法を知っておきましょう。水質の悪化は最も一般的な問題です。定期的に水質をチェックし、異常があれば早めに対処します。アンモニア値が高い場合は、魚の数や餌を減らすか水の一部を交換します。pHバランスが崩れたら、クエン酸や重曹などで調整しましょう。
魚の病気も注意が必要です。異常な行動や外見に気づいたら、水質確認と共に病気の魚は隔離して治療を行います。植物の成長不良は栄養不足の可能性があります。魚の数を増やすか微量栄養素の追加を検討しましょう。配管詰まりやポンプ故障も起こり得るため、定期的な点検と清掃が大切です。

6-3継続のコツ!長く続けるための管理術

アクアポニックスを長く続けるには日常的な管理が重要です。まず日々の観察を習慣化しましょう。魚や植物の状態、水の色や臭い、ポンプの動作など、変化を見逃さないようにします。スマートフォンで写真を撮って記録しておくと便利です。次に定期的な水質検査も欠かせません。最低週1回はpH、アンモニア、硝酸塩の値をチェックします。
システムが安定したら頻度を減らしても構いませんが、定期検査は続けましょう。適切な餌やりも重要です。魚に与える餌は一度に食べきれる量を目安にし、食べ残しは水質悪化の原因になります。季節の変化にも対応し、特に屋外設置の場合は温度管理に注意が必要です。

まとめ

アクアポニックスは魚の養殖と植物の水耕栽培を組み合わせたシステムです。「アクアポニックスに興味はあるけれど、自分にもできるだろうか」と心配している方もいるでしょう。しかし、初心者でも十分に取り組める農法です。小さな水槽と数匹の魚、2〜3種類の葉物野菜から始めてみましょう。小さなシステムなら失敗のダメージも少なく、成功体験が自信につながります。基本的な設備(魚の水槽、ポンプ、栽培ベッド)を用意し、丈夫な魚と育てやすい植物から始めましょう。DIYで工夫すれば1万円程度から始められます。水質管理を徹底し、魚や植物を日々観察することで、長く健全なシステムを維持できます。

日本インストラクター技術協会編集部
インストラクターの専門性を高めるためや地位向上を目的とした団体である日本インストラクター技術協会(JIA)編集部が運営するコラムです。
美容・健康・ボディケアの資格の筋トレインストラクター、シェイプアップインストラクターや骨格診断士。心理カウンセラー資格のメンタル心理インストラクター、子供心理カウンセラー®、音楽療法カウンセラーや行動主義心理アドバイザー®など様々な資格を認定しています。
日本インストラクター技術協会編集部