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キャンドルのワックスの種類とは?それぞれの違いや選び方を解説

記事作成日:2025.01.10
お気に入りのキャンドルを購入したり、手作りしたりする際に「パラフィン」「ソイワックス」といった表示を目にしたことはありませんか?実はキャンドルの燃え方や香りの広がり、さらには環境への影響まで、使用されているワックス(ロウ)の種類によって大きく変わってきます。
自分に合ったキャンドルを選ぶために、ワックスの基礎知識を知っておくと便利です。本記事では、キャンドルのワックスの種類や特徴、そして選び方について詳しく解説していきます。
キャンドルのワックスの種類とは?それぞれの違いや選び方を解説

目次

キャンドルワックスとは

キャンドルワックスは、一般的に「ロウ」と呼ばれる物質のことです。常温では固体の状態を保ち、熱を加えると液体になるという特徴を持っています。
キャンドルの歴史は古く、紀元前から人類は様々な素材でワックスを作ってきました。かつては動物の脂や蜜蝋が主流でしたが、現代では石油由来のパラフィンワックスや、環境に配慮した植物性ワックスなど、多様な種類が開発されています。
これらのワックスは、その原料によって大きく以下の3つのカテゴリーに分類することができます。

・石油由来のワックス
・植物由来のワックス
・動物由来のワックス
それぞれのワックスには独自の特徴があり、用途や目的に応じて使い分けられています。
続いてそれぞれのワックスの特徴について、詳しく見ていきましょう。お手元にあるキャンドルのワックスの種類を確認しながら読んでいただくと、より理解が深まるはずです。

石油由来のワックス

石油由来のワックスは、現代のキャンドル製造で最も広く使われている素材です。19世紀に石油からパラフィンの抽出方法が確立されて以来、その扱いやすさと経済性から、キャンドル産業の主力となっています。

2-1パラフィンワックス

パラフィンワックスは、最も一般的なキャンドル用ワックスとして知られています。原油から精製される過程で生まれる白色または無色の物質で、キャンドル製造において最も多用途な素材といえます。
パラフィンワックスの最大の特徴は、その使いやすさにあります。溶かした際の温度管理が比較的容易で、色や香りを均一に混ぜ込みやすい性質を持っています。また、固まる際の収縮率が適度で、型からの取り外しも比較的簡単です。
融点は種類によって異なり、一般的には47℃から68℃の範囲に収まります。最も一般的なのは135℉(約57℃)タイプで、これは室温での保管や使用に適した温度といえます。
ただし、パラフィンワックスにも課題があります。燃焼時にススが発生しやすく、室内で使用する際は適切な換気が必要です。また、石油由来であることから、環境への配慮という点では課題が指摘されています。
このワックスは、単体で使用されることもありますが、他のワックスと組み合わせることで、より優れた特性を引き出すことができます。例えば、ステアリン酸を添加することで硬度を上げたり、マイクロワックスを混ぜることでクラッキング(ひび割れ)を防いだりすることが可能です。

2-2ジェルワックス

ジェルワックスは、透明感のある特殊なワックスで、1990年代に開発された比較的新しい素材です。見た目の美しさから、デコレーション用のキャンドルに多く使用されています。
このワックスの最大の特徴は、その透明度の高さです。まるでゼリーやガラスのような見た目を実現できることから、中に装飾物を入れて楽しむジェルキャンドルの製作に適しています。また、パラフィンワックスの約3倍という長い燃焼時間を誇るのも特徴です。
ジェルワックスには、ソフトタイプとハードタイプの2種類があります。ソフトタイプは容器入りのキャンドルに適しており、ハードタイプは自立するキャンドルの製作が可能です。ただし、取り扱いには注意が必要で、溶解時の温度管理が特に重要です。

2-3マイクロワックス

マイクロワックスは、主に添加剤として使用される特殊なワックスです。石油の精製過程で生まれる結晶構造の異なるワックスで、ソフトタイプとハードタイプの2種類があります。
ソフトタイプのマイクロワックスは、手で簡単にちぎることができるほど柔らかく、主にキャンドル同士の接着や、パラフィンワックスの物性を改良するために使用されます。添加することで、キャンドルのひび割れを防いだり、表面の光沢を増したりする効果があります。
一方、ハードタイプは融点が高く、キャンドルに硬度を与える効果があります。特に、気温の高い場所で使用するキャンドルを作る際に重宝します。両タイプとも、一般的にはパラフィンワックスに1-3%程度添加して使用します。

植物由来のワックス

近年、環境への意識の高まりとともに注目を集めているのが植物由来のワックスです。再生可能な資源から作られるため、環境負荷が少ないことが特徴です。

3-1ソイワックス

ソイワックスは、大豆油から作られる植物性のワックスで、環境に優しい特性から、特に欧米で人気を集めています。パラフィンワックスと比較して、燃焼時のスス(煤)の発生が少なく、室内での使用に適しています。
このワックスの大きな特徴は、その燃焼特性にあります。ゆっくりと低温で燃えるため、パラフィンワックスよりも40-50%ほど燃焼時間が長くなります。また、香りの拡散性も優れており、アロマキャンドルの製作に適しています。
ソイワックスも、ハードタイプとソフトタイプの2種類があります。ハードタイプは自立するキャンドルの製作に、ソフトタイプは容器入りキャンドルの製作に適しています。表面はマットな質感になり、高級感のある仕上がりを実現できます。
ただし、ソイワックスは油分が多く、色むらができやすいという特徴があります。また、香料や染料を入れすぎると燃焼不良を起こす可能性があるため、適切な配合比率を守ることが重要です。

3-2パームワックス

パームワックスは、アブラヤシの実から抽出される植物性のワックスです。最大の特徴は、固まる際にクリスタル(結晶)状の美しい模様が自然に形成されることです。
パームワックスは、環境に配慮した素材として知られていますが、その美しい外観と優れた燃焼特性から、デザイン性の高いキャンドル作りに特に重宝されています。固まった際のクリスタル模様は、注ぐ温度や冷却速度によって様々な表情を見せ、アーティスティックな表現が可能です。
このワックスは、パラフィンワックスと比べてススの発生が少なく、室内での使用に適しています。また、ソイワックスと同様に、アロマオイルとの相性も良好です。しかし、原料となるアブラヤシの栽培による環境問題も指摘されており、持続可能な生産方法への転換が課題となっています。

3-3その他の植物性ワックス

植物性ワックスの世界は多様で、様々な原料から作られるワックスが存在します。それぞれが独自の特性を持ち、用途に応じて選択されています。
ココナッツワックスは、ココナッツオイルから作られる比較的新しいワックスです。低温で溶けるため扱いやすく、自然な甘い香りが特徴です。ただし、融点が低いため、保管時は温度管理に注意が必要です。また、比較的高価なため、主に高級キャンドルの製造に使用されています。
ライスワックスは、米ぬかから作られる日本特有のワックスといえます。表面がさらっとしていて、ソイワックスよりも硬度が高いのが特徴です。環境への負荷が少なく、国産原料としての価値も高く評価されています。
菜種ワックスは、菜種油から精製される植物性ワックスで、主に添加剤として使用されます。ソイワックスと組み合わせることで、より安定した燃焼特性を得ることができます。また、国内で生産可能な原料として注目されています。
これらの植物性ワックスは、それぞれに長所と短所があります。例えば、ココナッツワックスは香りの拡散性に優れていますが、コストが高いという課題があります。ライスワックスは硬度が高く形状を保ちやすい反面、色付けが難しいという特徴があります。

動物由来のワックス

動物由来のワックスは、キャンドルの歴史の中で最も古くから使用されてきた素材です。現代では石油由来や植物由来のワックスが主流となっていますが、その独特の特性から、今でも特定の用途で重宝されています。

4-1蜜蝋(ミツロウ)

蜜蝋は、ミツバチが巣を作る際に分泌する天然のワックスです。キャンドルの原料として最も長い歴史を持ち、古代エジプトの時代から使用されてきました。
蜜蝋の最大の特徴は、燃焼時に放出される自然な香りです。ほのかな甘い香りは多くの人々に好まれ、特に高級キャンドルの素材として重宝されています。また、燃焼時にマイナスイオンを放出し、空気清浄効果があるとも言われています。
燃焼特性も優れており、パラフィンワックスと比べてススの発生が少なく、炎も安定しています。また、融点が比較的高い(62-65℃)ため、暑い季節でも形状を保ちやすいという利点があります。
しかし、蜜蝋にも課題があります。最も大きな問題は、その希少性と高コストです。ミツバチが自然に作り出す物質であるため、大量生産が難しく、必然的に価格が高くなります。また、ミツバチが集めた花蜜の種類によって色や香りが異なるため、製品の均一性を保つことが難しいという特徴もあります。

4-2ステアリン酸

ステアリン酸は、牛脂などの動物性脂肪から抽出される脂肪酸の一種です。単体でキャンドルを作ることは少なく、主に他のワックスの性質を改善するための添加剤として使用されます。
このワックスを添加すると、キャンドルの硬度が上がり、型からの取り外しが容易になります。また、燃焼時間を延ばす効果もあり、パラフィンワックスやソイワックスと組み合わせることで、より実用的なキャンドルを作ることができます。
ただし、ステアリン酸を使用する際は注意が必要です。シリコン製の型との相性が悪く、型を傷めてしまう可能性があります。また、添加量が多すぎると、キャンドルの透明度が下がり、白っぽい仕上がりになることがあります。

ワックスの選び方のポイント

キャンドルのワックスを選ぶ際には、使用目的や環境への配慮、コストなど、様々な要素を考慮する必要があります。ここでは、目的に応じた最適なワックスの選び方について解説していきます。

5-1コンテナーキャンドル用

コンテナーキャンドル(容器入りキャンドル)を作る場合は、容器との密着性が重要になります。ソイワックスのソフトタイプは、容器との相性が良く、また香りの拡散性も優れているため、アロマキャンドルとして最適です。また、ジェルワックスのソフトタイプも、透明感を活かした装飾的なコンテナーキャンドルの製作に向いています。

5-2ピラーキャンドル用

ピラーキャンドル(自立型キャンドル)では、形状を保つための硬度が重要になります。パラフィンワックスの高融点タイプやソイワックスのハードタイプが適しています。さらに、ステアリン酸を添加することで、より安定した形状を保つことができます。
特に高さのあるピラーキャンドルを作る場合は、ワックスの硬度が重要な要素となります。一般的に、融点が60℃以上のワックスを選ぶことで、夏場でも形状が崩れにくい安定したキャンドルを作ることができます。

5-3アロマキャンドル用

アロマキャンドルを作る場合は、香りの保持力と拡散性が重要です。ソイワックスは香りの拡散性に優れており、またパームワックスも香料との相性が良好です。蜜蝋は天然の香りを持っているため、自然な香りを楽しみたい場合におすすめです。
香料の配合比率は、ワックスの種類によって異なりますが、一般的にはワックス重量の5-10%程度が目安となります。特にソイワックスは、低温でゆっくりと燃焼するため、香りが穏やかに広がり、長時間楽しむことができます。

5-4デコレーション重視

模様や装飾を楽しみたい場合は、パームワックスがおすすめです。固まる際に自然とクリスタル模様が形成され、美しい外観を楽しむことができます。また、ジェルワックスを使用すれば、中に装飾物を入れたクリアな仕上がりのキャンドルを作ることができます。
パームワックスのクリスタル模様は、注ぐ温度や冷却速度によって異なる表情を見せるため、作り手の技術によって様々な表現が可能です。ジェルワックスに装飾物を入れる際は、比重の関係で浮き沈みが起こることがあるため、配置を工夫することで立体的な演出を楽しむことができます。

5-5燃焼時間で選ぶ

燃焼時間は、キャンドルの実用性を左右する重要な要素です。一般的なパラフィンワックスの燃焼時間を基準とすると、ソイワックスは約1.5倍、ジェルワックスは約3倍の燃焼時間を持ちます。長時間の使用を想定している場合は、これらの長時間燃焼タイプのワックスを選ぶと良いでしょう。
なお、燃焼時間は芯の太さや長さ、キャンドルの直径によっても大きく変わってきます。例えば、同じワックスでも芯が太いと燃焼が早くなり、細いと遅くなります。また、キャンドルの直径が大きいほど、溶けたワックスのプールが広がり、結果として燃焼時間が長くなる傾向があります。このため、用途に応じて適切な芯の選択も重要になってきます。

5-6環境配慮の視点からの選択

環境への配慮も、現代のキャンドル選びにおいて重要な要素となっています。植物性ワックスは再生可能な資源から作られるため、環境負荷が低いとされています。特にソイワックスは、燃焼時のスス発生量が少なく、室内の空気環境にも配慮した選択といえます。

5-7コストパフォーマンスの考慮

コストパフォーマンスも無視できない要素です。最も一般的なパラフィンワックスは、比較的安価で大量生産が可能なため、経済的な選択といえます。一方、植物性ワックスや蜜蝋は、価格が高くなる傾向にありますが、燃焼時間が長いため、長期的な視点では経済的な選択となることもあります。

5-8保管のしやすさ

保管や取り扱いの容易さも考慮すべき重要な要素です。融点の低いワックスは、夏場の保管に注意が必要です。特にココナッツワックスやソフトタイプのワックスは、高温時に変形しやすい傾向があります。反対に、パラフィンワックスの高融点タイプや蜜蝋は、比較的高温にも耐えられる特性を持っています。

ワックスのブレンド

キャンドル作りの醍醐味の一つは、複数のワックスをブレンドして、理想的な性質を引き出すことです。それぞれのワックスの特性を理解し、目的に応じて適切に組み合わせることで、より魅力的なキャンドルを作ることができます。

6-1耐久性を高めるブレンド

キャンドルの耐久性を高めたい場合は、パラフィンワックスをベースに、ステアリン酸を5-10%程度添加するのが一般的です。このブレンドにより、キャンドルの硬度が増し、形状の保持力が向上します。
また、燃焼時間も延びる効果が期待できます。より自然な素材でブレンドを考える場合は、ソイワックスにマイクロワックスを3-5%程度添加することで、ひび割れを防ぎながら適度な硬度を得ることができます。

6-2アロマ効果を重視したブレンド

アロマの効果を重視する場合は、ソイワックスとパームワックスのブレンドがおすすめです。ソイワックス80%にパームワックス20%程度をブレンドすることで、香りの拡散性を保ちながら、美しいクリスタル模様も楽しむことができます。
また、パラフィンワックスとソイワックスをブレンドすることで、コストを抑えながら、程よい香りの広がりを実現することも可能です。

6-3デザイン重視のブレンド

見た目の美しさを追求する場合は、それぞれのワックスの特性を活かしたブレンドが効果的です。例えば、ジェルワックスは単体で使用することが多いですが、中に入れる装飾物の種類や配置を工夫することで、より魅力的な見た目を作り出すことができます。
パームワックスを主体としたブレンドでは、注ぐ温度や冷却速度を調整することで、クリスタル模様の出方をコントロールすることができます。

6-4温度管理のポイント

温度管理は、キャンドル作りの成功を左右する重要な要素です。各ワックスには適切な溶解温度があり、それを超えると変色や劣化の原因となります。特にジェルワックスは150℃以上に加熱すると変色してしまうため、厳密な温度管理が必要です。
また、注型時の温度も重要で、高すぎると収縮やクラッキングの原因となり、低すぎると表面の凹凸や気泡の原因となります。温度計を使用して、各ワックスの推奨温度範囲を守ることが、美しいキャンドル作りの基本となります。

6-5添加剤の使用法

添加剤の使用も重要なポイントです。マイクロワックスやステアリン酸などの添加剤は、少量でも大きな効果をもたらします。しかし、使用量が多すぎると逆効果になることもあります。
例えば、ステアリン酸の配合比率が高すぎると、キャンドルが白濁したり、燃焼状態が不安定になったりする可能性があります。添加剤を使用する際は、まず少量から試して、徐々に理想的な配合比率を見つけていくことがおすすめです。

まとめ

キャンドルのワックスは、その種類によって大きく特徴が異なります。パラフィンワックスは扱いやすさと経済性に優れ、ソイワックスは環境への配慮と香りの拡散性が特徴です。また、蜜蝋は自然な香りと環境への優しさ、ジェルワックスは透明感のある美しい外観が魅力です。
キャンドルを楽しむ際は、使用目的や環境への配慮、コストなどを総合的に判断して、最適なワックスを選びましょう。本記事で紹介した知識を参考に、自分に合ったキャンドルライフを見つけていただければ幸いです。安全で豊かなキャンドルライフを楽しむために、まずは小さな実験から始めてみてはいかがでしょうか。