心理カウンセラー資格には、認定団体や専門性の異なるさまざまな種類があります。
ここでは、心理カウンセラー資格の分類として主な5項目を挙げ、それぞれの特徴について解説します。
心理カウンセラー資格には、国の法律にもとづいて知識や技能が認定される「国家資格」と、民間団体が認定する「民間資格」があります。
心理カウンセラーをともなう仕事に役立つ主な国家資格・民間資格は、以下のとおりです。
国家資格 | ・公認心理師(試験実施団体:一般財団法人 日本心理研修センター) ・精神保健福祉士(試験実施団体:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター) ・社会福祉士(試験実施団体:公益財団法人社会福祉振興・試験センター) |
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民間資格 | ・臨床心理士(公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会) ・認定心理士(公益社団法人 日本心理学会認定)など |
心理系国家資格はすべて「名称独占資格」のため、資格保有者のみ、その名称を名乗ることが許されます。
「心理カウンセラー資格」といっても、その専門性や難易度はさまざまです。
たとえば、主な心理系国家資格3種類では、以下のような資格の概要・合格率の違いがみられます。
資格の概要 | 合格率 | |
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公認心理師 | 保健医療、福祉、教育そのほかの分野において、相談者に対して心理的支援などを行う者を認定する資格 | 73.8%(令和5年実施・第6回) |
精神保健福祉士 | 精神科病院や精神障害者の社会復帰を支援する施設などにおいて、相談・援助を行う者を認定する資格 | 71.1%(令和5年実施・第25回) |
社会福祉士 | 身体的・精神的な障害を抱える方などの福祉に関する相談に応じ、助言・指導等を含む支援を行う者を認定する資格 | 44.2%(令和5年実施・第35回) |
「合格率=難易度」と一概には言えませんが、資格の種類によって大きな差があることがわかります。
また、民間資格の場合も同様に、認定試験で問われる内容や難易度はそれぞれ異なるため、「病院で心理カウンセラーとして働きたい」「取得しやすいものから挑戦したい」などの目的を明確にしてから、複数の資格を比較検討するとよいでしょう。
心理カウンセラー資格の試験方法の違いについて、主な心理系資格5種類を例にみてみましょう。
受験方法 | 筆記 | 面接 | |
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公認心理師 | 会場受験 | 〇(マークシート) | × |
精神保健福祉士 | 会場受験 | 〇(マークシート) | × |
社会福祉士 | 会場受験 | 〇(マークシート) | × |
臨床心理士 | 会場受験 | 〇(マークシート・論文記述) | 〇 |
認定心理士 | ×(認定試験なし) | × | × |
国家資格3種類は、いずれもマークシート形式の筆記試験を会場で受験します。
一方、民間団体主催の「臨床心理士試験」では、一次のマークシート形式の筆記試験で一定の基準を満たした者に、二次の口述面接試験に進む資格が与えられます。
「認定心理士」は、大学で指定科目の単位を取得することで、書類申請のみで取得可能資格のため、認定試験はありません。
そのほかの民間資格のなかには、テキストを見ながら自宅でオンライン受験できるものや、通信講座の受講のみで認定試験免除で取得可能なものもあります。
心理系資格は、心理学の知識を有することの証明として、心理カウンセラーの仕事に応募する際に有意にはたらく可能性があります。
履歴書の資格欄に記載する資格の種類に、明確な決まりはありません。
ただし、以下のように「履歴書に書くべき資格」と「履歴書に書かないほうがよい資格」を見極めることが大切です。
・書くべき資格:採用・歓迎の条件に含まれているもの/業務内容に関連するもの/国家資格
など
・書かないほうがよい資格:知識・スキルの証明となるレベルに達しないもの/趣味・教養として取得する方が多い民間資格
など
業務内容に直結しない資格や、心理学の知識を有するとは言い難いレベルの資格の場合、記載することで「求人の要件自体を理解せずに応募している」と判断され、逆効果になるケースもあるようです。
心理カウンセラーを目指して資格取得を目指す場合は、履歴書に書けるか否かも含めて種類を選択するとよいでしょう。
心理系の国家資格や、信頼性の高い一部の民間資格には、学位や実務経験などの受験資格が設けられています。
たとえば、学校でカウンセリング業務を行うスクールカウンセラーの採用条件にも含まれる民間資格「臨床心理士」を取得するためには、次の条件を満たすことが必須です。
・指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
・臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
・諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
・医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者
など
一方、そのほかの多くの民間資格では、受験に際して学歴や年齢、実務経験などが問われることはないため、誰でも取得を目指せます。
受験条件を満たすまでに数年かかる場合もあるため、取得を目指して勉強を始める前に、受験条件について確認することをおすすめします。
心理カウンセラーは、専門資格の保有が必須の仕事ではありません。
しかし、資格の種類によっては、取得することで就職や転職に有利にはたらく可能性も期待できます。
ここでは、医療機関や教育現場、福祉の現場などの心理カウンセラーの採用条件に含まれることが多く、心理カウンセラー関連資格のなかでも信頼性の高い5種類をご紹介します。
「公認心理師」は、カウンセリングや心の健康に関する教育などをとおして、心理的支援を必要とする方をサポートする専門職です。
2015年の「公認心理師法」制定を受けて誕生した日本初の心理職の国家資格で、2021年12月末時点で、5万2,099名が登録しています。
公認心理師の活動分野は、保健医療、福祉、教育、司法、産業など幅広く、スクールカウンセラーの採用条件にも含まれています。
「精神保健福祉士」は、精神科病院やそのほかの医療施設で精神障害の治療を受けている方や・社会復帰を目指す精神障害者・患者を支える家族の相談に応じ、助言や指導、日常生活に適応するための援助を行う専門職です。
2023年12月時点で、10万3,907名が各都道府県で精神保健福祉士として登録しています。
精神保健福祉士の業務内容は、現場によって異なりますが、相談受付をはじめ、障害児の自立支援やひきこもり支援、母子・父子自立支援など、さまざまな境遇の相談者の支援に携わっています。
「社会福祉士」は、身体上もしくは精神上の障害がある方や、環境上の理由で日常生活を送るのに支障がある方の福祉に関する相談に応じる、福祉の現場のカウンセラーです。
2023年12月末時点で、28万7,179名が登録しており、福祉や生活に関する助言や指導のほか、相談者がスムーズに福祉サービスを受けられるよう、関係先への連絡や調整などを行っています。
社会福祉士は、介護老人保健施設や介護老人福祉施設などで必要とされており、高齢化社会の日本において、今後ますます需要が高まっていくことが予想されます。
「臨床心理士」は、精神障害や不適応行動がある方の回復や予防、その研究を目的とする臨床心理学をもとに、知識と技術を用いて相談者の心の問題を解決へと導く専門職です。
2022年度の認定試験では1,173名が合格し、認定試験が始まった1989年度からの累計合格者数は4万名を超えています。
臨床心理士は、保健医療や教育の現場などで臨床心理査定や面接、調査・研究などを行いますが、働く場所によって相談者の属性や相談内容は異なるため、それぞれのケースに柔軟に対応する能力が求められます。
「認定心理士」は、心理学に対する標準的基礎学力と技能を有することを証明するために作られた認定制度です。
大学で認定基準を持たす科目の単位を取得したうえで、書類申請を行うことで認定を受けられる資格で、2022年時点で、累計7万839名が取得しています。
認定試験がないため「大学で心理学を学んだ証」としての意味合いにとどまりますが、心理学の知識を有する人材を必要としている場所での採用などに、プラスにはたらく可能性があるでしょう。
国家資格や、医療機関をはじめとする特定の現場で採用条件に含まれることが多い一部の民間資格は、心理カウンセラーとしての活動に大いに役立つ可能性があります。
では、受験資格が設けられておらず、気軽に挑戦できる初心者向けの心理カウンセラー資格は、取得しても意味がないのでしょうか?
実際には、初心者向けの資格でも、取得することで以下のようなさまざまなメリットが得られます。
・心理学の知識を体系的に身につけられる
・最新の心理学に関する知識をインプットできる
・仕事や学業と両立しながら効率よく知識を習得できる
・未経験から心理カウンセラーを目指す際のファーストステップとして役立つ など
心理カウンセラーの仕事に資格は必須ではありませんが、心理カウンセラーとして働くためには、心理学の知識が欠かせません。
そのため、知識を身につけながら取得を目指せる初心者向けの資格は、心理カウンセラーの仕事に興味関心のある方にとって、大きな意味のある資格といえるでしょう。
初心者でも気軽に取得を目指せる心理カウンセラー資格には、心理学の基礎を身につけられるものから、特定の人間関係や状況に役立つ知識に特化したものまで、さまざまな種類があります。
ここでは、「心理学の知識」を身につけながら、通信講座の受講をとおして自分のペースで取得を目指せるおすすめの資格を3つご紹介します。
「メンタル士心理カウンセラー資格」は、心理学の基礎知識について十分に理解し、カウンセラーとして活動するレベルに至っているとされた方へ与えられる資格です。
心の問題と密接な関係にあるストレスや、ストレス症状に対する効果的な治療方法に関する知識を習得できます。
資格検定試験内容 | 心理的ストレスによる特徴的症状 ・心理的ストレスの主な原因 ・外部的治療法/内部的治療法 など |
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受験資格 | 特になし |
受験料 | 1万円(税込) |
受験申請 | インターネットからの申し込み |
受験方法 | 在宅受験・期日までに解答用紙を提出 |
合格基準 | 70%以上の評価 |
試験日程 | 2ヶ月に1回のペースで開催(年度により異なる) |
「行動心理カウンセラー」は、人の行動から相手の考えや気持ちを読み解く「行動心理学」についての基本的な知識を有することの証明となる資格です。
行動心理学を学ぶことで、手の動きや目線などの細かない動きからも相手の思考を読み取りやすくなるため、自身の気持ちを言葉にするのが困難な相談者のカウンセリングにも対応しやすくなるでしょう。
資格検定試験内容 | ・両面提示の法則 ・イエス誘導法 ・類似性の法則 など |
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受験資格 | 特になし |
受験料 | 1万円(税込) |
受験申請 | インターネットからの申し込み |
受験方法 | 在宅受験・期日までに解答用紙を提出 |
合格基準 | 70%以上の評価 |
試験日程 | 2ヶ月に1回のペースで開催(年度により異なる) |
「福祉心理カウンセラー」は、心理学の基礎知識に加え、福祉やストレス症状に関する知識を備え、カウンセラーとして活動するレベルに至っているとされた方に与えられる資格です。
一般的な心理学の学びには含まれない病気や入院、介護に関する内容も含まれるため、特に介護の現場の心理カウンセラーに関心のある方におすすめの資格です。
資格検定試験内容 | ・クライアントと家族の関係性 ・理解とサポート ・入院までの過程 など |
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受験資格 | 特になし |
受験料 | 1万円(税込) |
受験申請 | インターネットからの申し込み |
受験方法 | 在宅受験・期日までに解答用紙を提出 |
合格基準 | 70%以上の評価 |
試験日程 | 2ヶ月に1回のペースで開催(年度により異なる) |
心理カウンセラー資格には、信頼性や専門性、試験方法、受験資格の異なるさまざまな種類があり、国家資格や信頼性の高い一部の民間資格は、心理カウンセラーとしての活動に大いに役立つ可能性があります。
一方、受験資格が設けられておらず、誰でも気軽に取得を目指せる民間資格は、「学習経験0の状態から心理学の知識を効率よく身につけられる」点が、大きなメリットといえるでしょう。
本記事でご紹介したおすすめの3資格は、「SARAスクールジャパン」プラチナコース、または「諒設計アーキテクトラーニング」W資格取得講座の受講で、自分のペースで学びながら認定試験免除で取得できます。
心理カウンセラーへの第一歩として、心理学の基礎知識を身につけたい方は、ぜひご検討ください。