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ミキサー食とは?ムース食・ペースト食・流動食との違いや作り方のコツ

記事作成日:2025.06.11
高齢の家族の食事に悩んでいませんか?噛む力や飲み込む力が弱くなってきた時、どんな食事を作れば安全で美味しく食べてもらえるか分からない方も多いでしょう。本記事では、ミキサー食とムース食の違いから作り方のコツ、おすすめレシピまで詳しく解説していきます。ぜひ最後までご一読ください。
ミキサー食とは?ムース食・ペースト食・流動食との違いや作り方のコツ

目次

ミキサー食って?

ミキサー食について理解を深めるために、まずは基本的な知識から確認していきましょう。適切な食事形態を選ぶためには、特徴や適応を正確に把握することが重要です。

1-1ミキサー食とは?定義と特徴

ミキサー食とは、通常の食材をミキサーやブレンダーを使ってポタージュ状やペースト状にした食事です。食材の形をほとんど残さず、液体に近い状態まで細かくすることで、噛む力や飲み込む力が弱くなった方でも安全に栄養を摂取できるようになります。
スプーンですくって食べることができ、口の中でバラバラにならないように配慮されています。ミキサー食は「ペースト食」や「ピューレ食」、「ブレンダー食」と呼ばれることもありますが、基本的には同じものを指します。

1-2どんな人に向いている?

ミキサー食が適している人は、主に以下のような状況にある方です。歯がない方や歯の状態が悪く噛むことが困難な方、口を開けることが難しい方、咀嚼する力が著しく弱くなった方などが対象となります。
また、飲み込む力が低下している方や、内臓機能の低下により消化が困難になった方にも有効です。口腔内や喉の手術後の患者さん、パーキンソン病やALSなどの神経疾患を持つ方も、ミキサー食の対象となることがあります。

他の介護食との違い!ムース食・ペースト食など

介護が必要な方の食事には、いろいろな種類があります。その人の噛む力や飲み込む力に合わせて、最適な食事を選ぶことが大切です。ミキサー食を上手に使うために、他の食事との違いをしっかり覚えておきましょう。

2-1ムース食との違い

ムース食は、食材をすりつぶした後にゲル化剤やとろみ剤を使って固めた介護食です。プリンやムースのような滑らかで弾力のある食感が特徴で、舌で軽く押しつぶせる程度の固さに調整されています。
ミキサー食は液体に近くサラサラとした状態であるのに対し、ムース食は固形状でプリンのような弾力があります。見た目では、ミキサー食は全てポタージュ状で単調になりがちですが、ムース食は型を使って成形できるため、元の料理に近い見た目を作ることが可能です。調理の手間を考慮すると、ミキサー食の方が比較的簡単に作ることができます。

2-2ペースト食との違い

ペースト食はミキサー食に含まれる食事形態で、ミキサー食の中でも水分量が少ないものを指します。ミキサー食と比べると粘度があり、ムース食より水分が多く、ミキサー食より水分が少ないのがペースト食の特徴です。
基本的にはミキサー食の一種として扱われることが多く、同じ調理方法で作ることができます。水分の調整によってミキサー食からペースト食へと変化させることが可能で、食べる人の状態に応じて使い分けることができます。

2-3ソフト食との違い

ソフト食は食材を舌や歯茎で潰せる程度の柔らかさにした食事で、見た目は普通食に近く保たれています。ミキサー食のように液体状にするのではなく、食材の形を残しながら柔らかく調理します。
調理方法では、時間をかけて柔らかく煮込んだり、圧力鍋で加圧したりして作ります。ミキサー食は食材をミキサーで粉砕しますが、ソフト食は調理の段階で柔らかくするため、見た目の満足度が高く、食事の楽しさを保つことができます。

2-4流動食との違い

流動食は固形物を完全に濾して液体状にしたもので、重湯やスープ、具材なしの汁物などが該当します。ミキサー食は食材をミキサーで細かくしますが、流動食はさらに濾す工程が加わります。
消化機能が著しく低下している方や、胃腸に負担をかけたくない場合に使用されます。ミキサー食よりもさらに消化しやすく、栄養の吸収が容易ですが、満腹感が得にくく、栄養価を保つのが難しいという特徴があります。

2-5きざみ食との違い

きざみ食は食材を細かく刻んだ食事で、普通食に最も近い見た目と食感を保てます。食材を約5mm~2cm程度に刻むため、介護食でありながら通常の食事に近い外観になります。
ミキサー食と大きく異なるのは、固形物が残っている点です。咀嚼力はあるが噛む力が少し弱くなった方に適していますが、飲み込む力が弱い方には誤嚥のリスクがあるため注意が必要です。ミキサー食は液体状のため誤嚥リスクは異なりますが、きざみ食は口の中でバラバラになりやすいという特徴があります。

2-6ゼリー食との違い

ゼリー食は、ミキサーにかけた食材をゼラチンや寒天で固めた食事です。ミキサー食よりもまとまりがあり、するりと飲み込めるため、咀嚼力がかなり弱い方に向いています。
ミキサー食が液体に近い状態であるのに対し、ゼリー食は固形状でありながら柔らかく、口の中で崩れやすい特徴があります。水分量の調整が比較的しやすく、誤嚥のリスクを抑えながら栄養摂取ができます。見た目をきれいに仕上げることも可能で、型抜きして元の食材に似せることもできます。

ミキサー食の作り方とポイント

実際にミキサー食を作る際の基本的な手順と、美味しく安全に作るためのポイントを詳しく解説します。

3-1基本の作り方と必要な道具

ミキサー食作りに必要な道具は以下の通りです。
・ミキサーまたはフードプロセッサー
・すり鉢・すりこぎ
・マッシャー
・ゴムベラ
・計量スプーン・計量カップ
・デジタル計量計
また、調理材料としてとろみ剤、ゼラチン、ゲル化剤などを準備しておきましょう。これらの道具を使って、食材を適切な状態に加工することで、安全で美味しいミキサー食を作ることができます。市販のとろみ剤は調整しやすく便利ですが、片栗粉や葛粉でも代用可能です。

3-2食材ごとの下ごしらえと注意点

肉類の下ごしらえでは、脂肪分が多い部位を選ぶとミキサーにかけやすくなります。鶏肉なら胸肉よりもモモ肉、牛肉なら赤身よりもロース肉を使用することをおすすめします。調理前に一口サイズに切り、十分に加熱して柔らかくしてからミキサーにかけましょう。
野菜類では、繊維質の多いセロリやアスパラガス、ごぼうなどは避け、かぼちゃ、ほうれん草、にんじんなどの柔らかくなりやすい野菜を選びます。生野菜は時間が経つとえぐみが出るため、加熱調理したものを使用することが重要です。

3-3水分量・とろみの調整と誤嚥リスクの対策

水分量の調整は、ミキサー食作りで最も重要なポイントです。水分が多すぎると誤嚥のリスクが高まり、少なすぎると飲み込みにくくなります。目安としてはポタージュスープ程度の粘度を保つことが理想的です。
水分を加える際は、単純な水ではなく出汁やスープを使用することで味を保ちながら適切な粘度を作ることができます。とろみ剤を使用する場合は、少量ずつ加えながら様子を見て調整しましょう。完成後は必ず温度を確認し、熱すぎないことを確認してから提供します。

3-4美味しさ・見た目アップの工夫

ミキサー食の見た目を改善するには、食材を一品ずつ別々にミキサーにかけることが効果的です。複数の食材を一緒にかけると色が混ざり合い、茶色っぽい見た目になってしまいます。
味の工夫では、調理時に使用した煮汁や調味料を水分として加えることで、元の料理の味を保つことができます。また、小皿を使って少量ずつ盛り付けたり、色とりどりの食材を使って彩りを工夫したりすることで、食欲を刺激する見た目を作ることができます。

ミキサー食のおすすめレシピ集

家庭で簡単に作れる美味しいミキサー食のレシピをご紹介します。栄養バランスを考慮しながら、飽きずに食べられるよう工夫されたメニューです。

4-1主食(ご飯・おかゆ・うどん・パンなど)

ここでは、おかゆ、パン粥、うどんのミキサー食について紹介します。
おかゆ
米1:水10の割合で作った十分粥をベースにします。米をよく洗い、多めの水で40分程度炊いた後、ミキサーで滑らかになるまで攪拌します。味付けには鶏がらスープや昆布だしを加えると風味が良くなります。
パン粥
食パンを牛乳に浸してふやかした後、ミキサーにかけます。甘い味付けにしたい場合ははちみつを、塩味にしたい場合はコンソメを少量加えます。うどんのミキサー食では、柔らかく茹でたうどんを麺つゆと一緒にミキサーにかけ、適度なとろみがつくまで攪拌します。

4-2主菜(肉・魚・豆腐・卵など)

今回は鶏肉、白身魚、豆腐を使ったミキサー食について紹介します。
鶏肉のミキサー食
鶏モモ肉を柔らかく煮込んだ後、煮汁と一緒にミキサーにかけます。たまねぎやにんじんも一緒に煮込むことで、栄養価と風味をアップできます。完成後は塩コショウで味を調整しましょう。
白身魚のペースト
鯛やヒラメなどの白身魚を蒸し、骨を完全に除去してからミキサーにかけます。少量の牛乳を加えることで滑らかな仕上がりになります。
絹ごし豆腐
絹ごし豆腐はそのままでも滑らかですが、だし汁と混ぜてミキサーにかけることで、より飲み込みやすくなります。

4-3副菜・デザート(野菜・果物・おやつ・スイーツ)

今回はかぼちゃ、ほうれん草、フルーツ、ヨーグルトを使ったメニューについて紹介します。
かぼちゃのペースト
、蒸したかぼちゃを牛乳と一緒にミキサーにかけ、砂糖で甘みを調整します。自然な甘さで栄養価も高く、デザートとしても楽しめます。
ほうれん草のペースト
茹でたほうれん草をだし汁でのばし、滑らかになるまで攪拌します。
フルーツゼリー
熟したバナナやリンゴをミキサーにかけ、ゼラチンで固めます。ビタミン補給にも効果的で、食後のデザートとして最適です。ヨーグルトムースは、プレーンヨーグルトにはちみつと少量のゼラチンを加えて固めることで、滑らかで食べやすいデザートになります。

4-4汁物・スープ(野菜スープ・ポタージュなど)

今回は野菜ポタージュ、かぼちゃポタージュ、トマトスープについて紹介します。
野菜たっぷりポタージュ
にんじん、じゃがいも、たまねぎを柔らかく煮込み、コンソメスープと一緒にミキサーにかけます。牛乳を加えることでまろやかな味に仕上がります。塩コショウで味を調整し、最後にバターを少量加えると風味が良くなります。
かぼちゃのポタージュ
蒸したかぼちゃをチキンスープでのばし、生クリームを加えて滑らかにします。

トマトスープ
湯むきしたトマトを野菜スープと一緒にミキサーにかけ、塩と胡椒で味付けします。これらのスープは栄養価が高く、水分補給にも効果的です。

4-5栄養強化メニュー(高カロリー・高タンパク)

今回は高カロリーポテト、プロテイン入りスムージー、アボカドクリームについて紹介します。
高カロリーポテト
蒸したじゃがいもにバター、牛乳、チーズを加えてミキサーにかけます。カロリーが不足しがちな高齢者の栄養補給に最適です。
プロテイン入りスムージー
バナナ、牛乳、プロテインパウダーをミキサーで混ぜ合わせた栄養価の高いドリンクです。
アボカドクリーム
熟したアボカドを牛乳と一緒にミキサーにかけ、塩で味付けします。良質な脂質とカロリーを効率よく摂取できます。これらのメニューは、体重減少が心配な場合の栄養強化に効果的です。

市販・宅配・外食で選べるミキサー食

手作りが困難な場合に利用できる、市販品や宅配サービスについて詳しく解説します。

5-1市販品の選び方

市販のミキサー食を選ぶ際は、ユニバーサルデザインフード(UDF)の区分を確認することが重要です。区分4「かまなくてよい」がミキサー食に該当し、舌で潰せる程度の硬さに調整されています。
主要メーカーとしては、キユーピーの「やさしい献立」シリーズ、ホリカフーズの「おいしくミキサー」シリーズ、ハウス食品の「やさしくラクケア」シリーズなどがあります。選び方のポイントは、食べる人の嚥下機能に合った硬さであること、栄養バランスが考慮されていること、味の種類が豊富であることです。

5-2宅配サービス・ホテル・レストラン

宅配サービスでは、まごころ弁当やメディカルフードサービスなどが介護食対応の宅配を行っています。これらのサービスでは、管理栄養士が監修したバランスの良いミキサー食を自宅まで届けてくれます。
近年では高齢者向けホテルやレストランでも、ミキサー食の提供を行う施設が増えています。事前に連絡することで、特別メニューとして対応してくれる場合があります。外食を楽しみたい場合は、事前に問い合わせることをおすすめします。

5-3市販ミキサー食のメリット・デメリット

メリットとしては、調理の手間が省けること、栄養バランスが専門家によって調整されていること、保存がきくこと、味のバリエーションが豊富であることが挙げられます。特に介護者の負担軽減には大きな効果があります。
デメリットは、手作りに比べてコストが高いこと、添加物が含まれている場合があること、個人の好みに完全に合わない可能性があることです。また、温め方を間違えると食感が変わってしまうこともあります。上手に活用するためには、手作りと市販品を組み合わせて使用することが効果的です。

ミキサー食の栄養と健康管理

ミキサー食でも十分な栄養を摂取するためのポイントと、健康維持のための工夫について説明します。

6-1栄養価の維持のコツ

ミキサー食では水分量が多くなるため、同じ量を食べても栄養摂取量が減少しがちです。この問題を解決するためには、高カロリーで栄養価の高い食材を積極的に使用することが重要です。
エネルギーアップの方法として、バター、オリーブオイル、マヨネーズなどの良質な脂質を適量加える方法があります。また、牛乳や生クリーム、チーズなどの乳製品を使用することで、カロリーと同時にタンパク質も補給できます。市販の栄養補助食品を併用することも効果的です。

6-2低栄養・体重減少を防ぐポイント

低栄養を防ぐためには、1日の必要カロリーを把握することから始めましょう。75歳以上の高齢者の場合、男性で1,800kcal以上、女性で1,400kcal以上が目安とされています。
食事回数を増やすことも有効で、1日3食にこだわらず、少量ずつ頻回に摂取する方法をおすすめします。間食にも栄養価の高いものを選び、プリンやヨーグルト、栄養ドリンクなどを活用しましょう。体重の変化を定期的にチェックし、減少傾向が見られる場合は医療専門家に相談することが大切です。

6-3カロリー計算・栄養指導

カロリー計算では、使用する食材のカロリーを把握し、1日の総摂取量を記録することが重要です。ミキサー食では見た目で量を判断しにくいため、計量を心がけましょう。
栄養バランスを保つためには、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することが必要です。特にタンパク質不足になりやすいため、肉類、魚類、豆類を意識的に取り入れましょう。管理栄養士による栄養指導を受けることで、個人に合った食事プランを作成することができます。

ミキサー食を続けるためのコツと工夫

毎日のミキサー食作りを楽にして、食べる人にも作る人にも負担の少ない方法について詳しく解説します。

7-1時短で作る冷凍保存テクニック

ミキサー食は毎日作ると大変な作業ですが、まとめて作って冷凍保存することで負担を大幅に減らすことができます。おかゆは一度に多めに作って小分けして冷凍しておけば、温めるだけですぐに食べられます。
肉や魚、野菜もそれぞれやわらかく煮込んで小分け冷凍しておくと便利です。食べる時に調味料で味を変えれば、同じ素材でも飽きずに食べ続けられます。冷凍食品や缶詰、レトルト食品も上手に活用することで、手作りの負担を軽くできます。市販の総菜をミキサーにかけて使うのも一つの方法です。

7-2栄養バランスの考え方

ミキサー食では水分でかさが増えるため、見た目の量に比べて実際の栄養は少なくなりがちです。一人分の目安として、元の料理の1.5倍程度の量になることを計算に入れておきましょう。
1日3食にこだわらず、少量ずつ5~6回に分けて食べる方法も効果的です。間食にも栄養価の高いプリンやヨーグルト、栄養ドリンクを取り入れることで、1日に必要な栄養をしっかり摂取できます。体重の変化を定期的にチェックし、減少が続く場合は医師に相談することが大切です。

7-3家族みんなで同じメニューを楽しむ方法

家族と同じ料理を一部取り分けてミキサーにかけることで、食事の統一感を保ちながら介護食を提供できます。例えば、カレーを作る時は具材を取り分けてミキサーにかけ、同じカレールウで味付けすれば家族と同じ味を楽しめます。
ハンバーグや煮物なども、調理の途中で一人分を取り分け、やわらかく煮込んでからミキサーにかけることで、家族と一緒の食事時間を大切にできます。食事前にミキサーにかける前の料理を見せることで、何を食べているかを理解してもらい、食欲を刺激することも重要です。

7-4食べやすくするためのポイント

浅めの食器を使うことで、スプーンですくいやすくなり、食べる人の負担が軽減されます。食材の色が映える明るい色の食器を選ぶと、見た目も良くなり食欲を刺激します。
食事の温度管理も重要で、人肌程度の温度が最も食べやすいとされています。熱すぎると口の中を傷つける恐れがあり、冷たすぎると飲み込みにくくなります。食事の前には必ず温度を確認し、適温で提供することを心がけましょう。静かで落ち着いた環境で、家族との楽しい会話を交えながらゆっくり食事をすることも大切です。

まとめ

ミキサー食は、噛む力や飲み込む力が低下した方にとって重要な食事形態です。適切な作り方を覚え、栄養バランスと安全性を両立させることで、食事の質を維持できます。ムース食との使い分けや市販品の活用により、介護者の負担を軽減しながら、食べる人にとって美味しく楽しい食事を提供することが可能です。
今後も食品技術の発達により、より美味しく栄養価の高いミキサー食が開発されることが期待されます。まずは基本的な作り方をマスターし、個人の状態に合わせた工夫を重ねていくことから始めましょう。

日本インストラクター技術協会編集部
インストラクターの専門性を高めるためや地位向上を目的とした団体である日本インストラクター技術協会(JIA)編集部が運営するコラムです。
美容・健康・ボディケアの資格の筋トレインストラクター、シェイプアップインストラクターや骨格診断士。心理カウンセラー資格のメンタル心理インストラクター、子供心理カウンセラー®、音楽療法カウンセラーや行動主義心理アドバイザー®など様々な資格を認定しています。
日本インストラクター技術協会編集部