甘くて美味しいジャムとコンフィチュールですが、実は製法や特徴に大きな違いがあります。
ジャムは、果物を細かく刻んで砂糖と一緒に煮詰めて作る保存食品です。日本農林規格(JAS)では、果実・野菜・花弁を砂糖類とともにゼリー化するまで加熱したもので、糖度40%以上のものをジャムと定義しています。
英語の「jam」は「詰め込む、いっぱいにする」という意味の言葉が語源となっており、実際に果物をぎっしりと詰め込んだような濃厚な食感が特徴です。煮詰める過程で果物の水分が飛び、粘度が増して滑らかなテクスチャーになります。果物に含まれるペクチンと酸、糖分が化学反応を起こすことで、とろみのあるゼリー状になるのです。
コンフィチュールはフランス語で、「砂糖、酢、油などに漬けた」という意味のconfit(コンフィット)が語源です。コンフィは「風味を保って保存する」という意味があり、長期保存する技術を指す調理用語としても用いられています。
コンフィチュールは果物を大きめの形状で残し、果汁を煮詰めたシロップに果肉を漬けて作るため、果物の形がゴロッと残り、さらりとした状態に仕上がるのが特徴です。砂糖の使用量もジャムより少なく、果物本来のフレッシュな味わいを楽しめます。
ジャムとコンフィチュールの主な違いは以下の通りです。まず製法の違いとして、ジャムは果物の原型が崩れるまで砂糖と一緒によく煮詰めるため、とろっと濃密になります。一方、コンフィチュールは果物を砂糖に漬けて果汁を浸出させてから作るため、果物の形がごろっと残り、さらりとした状態になります。
甘さの違いも重要なポイントです。ジャムは基本的に果実の重さとほぼ同量の砂糖を使用しますが、コンフィチュールで使う砂糖の量は果実の重さの約20%前後が一般的です。そのため、コンフィチュールの方が甘さ控えめで、果実のフレッシュ感を強く感じられます。
日本で人気のジャムには、それぞれ独特の特徴と魅力があります。
イチゴジャムの赤い色は、イチゴの中に含まれるアントシアニン色素によるもので、自然の鮮やかな色合いが特徴です。イチゴは甘く爽やかな香りとフルーティーで甘みのある風味を持ち、世代を問わず食べやすい味わいとなっています。
イチゴジャムは製品数が多いため、糖度の低い製品や砂糖不使用の製品も入手しやすく、健康を意識する方やダイエット中の方にもおすすめです。定番のパンやヨーグルトとの組み合わせはもちろん、チーズとの相性も良く、チーズトーストにイチゴジャムを乗せると甘みと塩気が絶妙な味わいを楽しめます。
ブルーベリーの濃い青紫色は、アントシアニン色素と呼ばれる水溶性の色素によるもので、この色素が眼によい効果があると注目されています。ブルーベリーは20世紀に改良が進められた比較的新しい果実で、1970年代後半から日本でも店頭に並ぶようになりました。
アントシアニン色素には、人間の網膜にあるロドプシンの再合成作用を活性化する効果があります。これにより眼の疲労回復や視野の拡大、夜間視力の向上などの効果が期待できるとされています。ブルーベリージャムはコクと甘みが感じられる濃厚な味わいで、ヨーグルトやレアチーズケーキなど白い食べ物にかけると美しい紫色で彩りを与えてくれます。
りんごジャムは品種によって様々な特徴があります。ジャムに向いている品種として、酸味の強い紅玉は加熱すると香りが引き立ちさわやかな味のジャムに仕上がります。ふじは甘みが強く形が崩れにくいため、食感重視の人にぴったりです。
りんごジャムは料理の隠し味としても優秀で、カレーの隠し味や肉料理のソースとしても活用できます。甘みと酸味のバランスが良く、様々な用途に使える万能なジャムとして人気があります。糖度も選択肢が豊富で、甘さ控えめのものから濃厚なものまで好みに合わせて選べます。
マーマレードは柑橘類の果実と果皮を使って作るジャム類で、柑橘類の果皮が含まれている点がジャムとの違いです。果皮特有のほろ苦さと柑橘の爽やかな香りが魅力で、甘酸っぱさとほろ苦さを兼ね備えた大人の味わいを楽しめます。
マーマレードには柑橘の果皮がそのまま使用されているため、果皮に含まれるヘスペリジンやペクチンなど体に良い成分を摂取できるのも特徴です。ヘスペリジンはビタミンPとも呼ばれ、抗酸化作用や血管強化作用があり、血流改善や高血圧予防、コレステロール値低下などの効果が期待されています。
コンフィチュールは従来のジャムより多様な楽しみ方ができる食品です。
コンフィチュールの主な材料は果物と砂糖で、イチゴや桃、キウイ、ブルーベリー、プラム、りんご、オレンジなどお好みの果物で作ることができます。最近では従来の保存食とは異なり、材料を数種類組み合わせたり、スパイスやアルコールを加えて風味豊かに仕上げるアレンジも人気です。
桃、イチゴ、キウイなど、どんな果物でも作れるのがコンフィチュールの魅力で、仕上げの直前に絞ったレモン汁を加えると色味がきれいで鮮やかになります。これは、レモンに含まれるクエン酸に発色を良くする効果があるためです。
季節の果物を使ったコンフィチュールは、その時期ならではの美味しさを楽しめます。春はイチゴや桜、夏は桃やブルーベリー、秋はりんごや柿、冬は柑橘類など、季節ごとに旬の果物を使ったコンフィチュールが製造・販売されています。
地域限定の果物を使ったコンフィチュールも人気で、北海道のハスカップや沖縄のパッションフルーツなど、その土地ならではの味を全国で楽しめるのも魅力の一つです。
最近では果物以外の素材を使った変わり種コンフィチュールも注目されています。野菜やナッツ、香辛料やハーブ、リキュールなど、フルーツ以外の要素も加えて仕上げたものが多数販売されています。
野菜を使ったコンフィチュールでは、トマトや人参、さつまいもなどが人気で、フルーツとは異なる独特の風味と食感を楽しめます。また、ハーブやスパイスを加えたものは、より複雑で奥深い味わいを楽しめるため、料理の調味料としても活用されています。
ジャム類にはいくつかの分類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
プレザーブスタイルとは、ジャムの中に形が残った果実や果肉が入っているもののことを指します。原料の果実の全形もしくは一定以上の大きさの果肉片を保持したものがプレザーブスタイルと呼ばれます。
果実の種類によって条件が異なり、ベリー類は全形の果実、いちごは全形または2つ割りの果実、その他の果実は5mm以上の厚さの果肉片を原料とし、その原形を保持するように作られています。果物の食感をそのまま楽しめるため、より自然な果物の味わいを求める方におすすめです。
JAS法では糖度40%以上のものをジャムと定義しているため、それに当てはまらないものは「フルーツスプレッド」という品名になることが多いです。フルーツスプレッドは糖度が低く、より果物本来の味わいを楽しめるのが特色です。
砂糖不使用のものも多く、りんごやぶどうなどの濃縮果汁で甘みを付けているものが主流です。健康志向の高まりとともに人気が増しており、ダイエット中の方や糖分を控えたい方にも適しています。
日本では糖度40~55%のジャムが全体の約45%を占めており、低糖度ジャムが主流となっています。低糖度ジャムは果物本来の風味をより感じられ、甘さ控えめで食べやすいのが特徴です。
アヲハタ55は1970年に発売され、当時主流だった糖度の高いジャムに比べ、フルーツの風味がより感じられるよう甘さをおさえ、国内初となる低糖度の55度に仕立てました。現在はさらに糖度を下げ、45度前後となっています。低糖度ジャムはカロリーも控えめで、健康志向の方にも適した選択肢となっています。
ジャムは製法によっても特徴が大きく変わります。
果実に砂糖類などを加えて煮込んでいくと、糖度が60~65%以上にならなければ粘稠になっていきません。高糖度ジャムは砂糖の保存効果により長期保存が可能で、昔ながらの伝統的な製法で作られています。
砂糖には抱え込んだ水分をなかなか放さないという性質があるため、微生物が細胞の水分を奪われて活動できなくなることで保存性が生まれます。高糖度ジャムは糖度60~65%で、濃厚な甘みと長期保存が可能な点が特徴です。
低糖度ジャムは果物本来のフレッシュな味わいと香りを楽しめるのが最大の魅力です。砂糖の使用量を抑えることで、果物の自然な酸味や香りがより際立ち、さっぱりとした味わいになります。
ただし、糖度が低い分保存性は劣るため、開封後は冷蔵保存で早めに消費する必要があります。また、カビが生えやすいため、清潔なスプーンを使用し、使用後はすぐにキャップを閉めることが重要です。
砂糖不使用ジャムの多くは、主役となる果実本来がもつ甘さにりんごやぶどう、デーツといったフルーツの濃縮果汁を使って甘味をプラスしています。また、ハチミツで甘味を付けている商品もあります。
果物由来の甘みのみで作られているため、より自然で上品な甘さを楽しめます。ただし、糖質が含まれていないわけではないため、食べ過ぎには注意が必要です。また、砂糖不使用のため保存性が低く、早めの消費が推奨されています。
果物の種類によってジャムの特徴も大きく異なります。
ベリー系ジャムには、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリーなどがあります。ベリー系の果物は酸味と甘みのバランスが良く、鮮やかな色合いが特徴です。また、アントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれており、抗酸化作用が期待できます。
イチゴは最も親しみやすい味わいで、ブルーベリーは眼に良い成分で注目されています。ラズベリーは独特の酸味と香りが魅力で、ブラックベリーは濃厚な味わいが特徴です。
柑橘系のジャムは主にマーマレードとして親しまれています。オレンジ、レモン、グレープフルーツ、夏みかんなど、それぞれ異なる酸味と香りの特徴があります。
バレンシアオレンジは酸味と甘みのバランスがよく、ネーブルオレンジは酸味と甘みが濃いのが特徴です。柑橘系ジャムは爽やかな味わいで、朝食に最適で、料理の調味料としても活用できます。
桃、杏子、プラムなどの核果系ジャムは、果肉が柔らかく濃厚な甘みが特徴です。特に桃のジャムは上品な甘さと芳醇な香りで人気が高く、杏子は程よい酸味とコクのある味わいが魅力です。
核果系の果物は果肉感を残しやすく、プレザーブスタイルでの製造にも適しています。また、加熱することで甘みが増し、より濃厚な味わいになるのも特徴の一つです。
りんごや梨などのリンゴ科の果物から作られるジャムは、クセが少なく様々な用途に使える万能性が魅力です。りんごジャムは特に人気が高く、品種によって異なる味わいを楽しめます。
リンゴ科のジャムはペクチンが豊富に含まれているため、とろみが付きやすく、ジャム作りにも適しています。また、他の果物との相性も良く、ミックスジャムの材料としてもよく使われています。
自分に合ったジャムを選ぶためのポイントを解説します。
糖度はジャムの甘さと保存性を決める重要な要素です。糖度の選び方は以下の通りです。
• 高糖度(65%以上):濃厚な甘みで長期保存が可能
• 中糖度(55%以上65%未満):バランスの良い甘さ
• 低糖度(40%以上55%未満):果物本来の風味を重視
• 糖度40%未満:さっぱりとした自然な甘さ
健康を意識する方や甘いものが苦手な方は低糖度やフルーツスプレッドがおすすめです。一方、しっかりとした甘みを求める方や長期保存を希望する方は中~高糖度のジャムが適しています。
果肉の残り方によってもジャムの食感と味わいが大きく変わります。滑らかな食感を好む方は通常のジャム、果物の食感を楽しみたい方はプレザーブスタイルやコンフィチュールがおすすめです。
果肉感のあるジャムは、パンに塗った時に果物の存在感を感じられ、より贅沢な味わいを楽しめます。一方、滑らかなジャムは塗りやすく、お菓子作りにも適しています。
使用目的によってもジャムの選び方が変わります。用途別の選び方は以下の通りです。
• パンに塗る:中糖度で程よい甘さのもの
• ヨーグルトに混ぜる:低糖度でさっぱりしたもの
• お菓子作り:高糖度で濃厚な味のもの
• 料理の調味料:マーマレードなど風味の強いもの
• 健康志向:砂糖不使用やフルーツスプレッド
複数の用途で使いたい場合は、中糖度の万能タイプを選ぶと良いでしょう。また、容量も使用頻度に合わせて選ぶことで、最後まで美味しく消費できます。
ジャムとコンフィチュールをより美味しく楽しむ方法をご紹介します。
パンとジャムの組み合わせは基本中の基本ですが、パンの種類によって相性の良いジャムが異なります。食パンには王道のイチゴジャムやマーマレード、全粒粉パンにはベリー系、フランスパンには濃厚なコンフィチュールがよく合います。
バターと一緒に使う場合は、バターの塩気とジャムの甘みが絶妙にマッチします。また、クリームチーズとジャムの組み合わせも人気で、特にブルーベリージャムやイチゴジャムとの相性が抜群です。
ジャムはヨーグルトやアイスクリームにかけるのはもちろん、マフィンやスコーンとの相性も抜群です。デザート作りではジャムをソースとして使ったり、生地に混ぜ込んだりと様々な活用方法があります。
パンケーキやワッフルのトッピング、シフォンケーキの層に挟むなど、ジャムを使うことで手軽に本格的なデザートを作ることができます。また、アイスクリームにジャムを混ぜてオリジナルフレーバーを作るのも楽しい使い方です。
鶏肉や豚肉のグリルにフルーツジャムを塗って焼くと、甘さが加わり、旨味が引き立ちます。特に、オレンジマーマレードやブルーベリージャムは、肉の風味と絶妙にマッチします。
ジャムは料理の隠し味としても優秀で、サラダドレッシングに加えたり、カレーの隠し味に使ったりできます。マーマレードは特に肉料理との相性が良く、照り焼きソースやバーベキューソースの材料としても活用できます。
自宅で簡単に作れるジャムとコンフィチュールのレシピをご紹介します。
手作りイチゴジャムの材料と作り方は以下の通りです。
材料(出来上がり約500g)
• イチゴ:600g • グラニュー糖:300g(イチゴの重量の半分)
• レモン汁:大さじ2
作り方
イチゴは水洗いし、へたを取り、水を切っておきます。なべにイチゴを入れ、砂糖の半量をまぶし、一時間ほどおいておきます。果汁が出てきたら鍋を火にかけ、弱めの中火で徐々に加熱していきます。イチゴが白っぽく軟らかくなったら残りの砂糖を入れ、沸騰したら火を弱め、さらに5分ほど煮詰めます。最後にレモン汁を加えて完成です。
手作りジャムは市販品と比べて保存料が入っていないため、清潔な瓶に詰めて冷蔵保存し、2~3週間以内に消費することが大切です。また、煮沸消毒した瓶を使用することで、より安全に保存できます。
コンフィチュールの基本的な材料と作り方をご紹介します。
材料(出来上がり約400g)
• お好みの果物:500g
• グラニュー糖:100g(果物の重量の20%)
• レモン汁:大さじ1
作り方
果物をさっと洗い、水気を切ります。容器に果物と砂糖を入れて混ぜ、しばらく(30分~1時間程度)置き、果汁を浸出させます。鍋に移して蓋をして中火にかけ一度沸騰させ、弱火で15~30分程度煮詰めたら完成です。アクが出たら丁寧にすくい取ってください。
コンフィチュールはジャムより砂糖が少ないため、より果物本来の味を楽しめますが、その分保存性は低くなります。清潔な瓶に詰めて冷蔵保存し、1~2週間以内に消費するようにしましょう。
手作りジャムを成功させるためのポイントをご紹介します。
• 果物は新鮮で熟したものを使用する
• 砂糖の量は果物の状態に合わせて調整する
• 弱火でゆっくりと煮詰める
• アクはこまめに取り除く
• 清潔な道具と瓶を使用する
• 適切な糖度になるまで煮詰める
• 熱いうちに瓶詰めする
手作りジャムの最大のポイントは火加減と煮詰め時間です。強火で煮ると焦げやすく、弱すぎると水っぽくなってしまいます。中火から弱火でじっくりと煮詰めることで、美味しいジャムができあがります。また、煮詰め具合の確認は、スプーンで落とした時にとろりと落ちる状態が目安です。
ジャムとコンフィチュールは、同じ果物を使った保存食でありながら、製法や特徴に大きな違いがあることがお分かりいただけたでしょうか。ジャムは滑らかで濃厚な甘さが特徴で、コンフィチュールは果物の形と風味を活かしたさっぱりとした味わいが魅力です。糖度や製法によっても様々な種類があり、用途や好みに合わせて選ぶことで、より豊かな食生活を楽しむことができます。健康志向の方には低糖度や砂糖不使用タイプ、従来の味を求める方には高糖度タイプがおすすめです。ぜひ様々な種類を試して、あなたのお気に入りの一品を見つけてください。