焼酎の多彩な種類を知る前に、焼酎とはどのようなお酒のことを指すのかを理解しておくことが大切です。
ここでは、焼酎の一般的な基本概要・定義について解説します。
焼酎に分類される種類は、酒税法で定められています。
糖を含んだ原料に水と酵母を加え発酵させた醸造酒から、蒸溜をして製品化されるお酒のことです。
酒税法では、ウイスキー・ブランデー・スピリッツなども「蒸溜酒類」として同じ分類としています。
それに対するのが「醸造酒類」と呼ばれるものです。
ワインなどの果実酒・日本酒などのように蒸留せずに、発酵のみで製造するお酒のことを称します。
アルコール度数は蒸留酒のほうが高く、かつ焼酎の場合は、日本酒・ワインの一般的な度数13〜15度前後に対して、25度前後です。
水とアルコールの沸点の差を利用する蒸溜技術により、純度の高いアルコール抽出がされることが理由となっています。
中には、アルコール度数が40度を超える焼酎もあるので、その品種などは多種多様です。
焼酎として認定されるお酒は、酒税法によって以下のように定義された蒸留酒です。
● 連続式蒸留機で蒸留したアルコール分36度未満のもの
● 単式蒸留機で蒸留したアルコール分45度以下のもの
さらにはウイスキー・ブランデー・ウォッカ・ラム・ジンなどの種類に該当しないお酒のことを指します。
「連続式蒸留機」とは、連続的に蒸留操作をして製造する機器のことです。
この方法は、1830年にアイルランドで開発され、1900年ごろ日本に伝来しました。
一方、「単式蒸留機」とは、昔ながらのシンプルな蒸溜機のことです。
古代メソポタミア文明にまで遡るといわれています。
単式蒸留と連続式蒸留の製造方法の違いによって、焼酎の味や風味などに大きな差が生じるのが特徴です。
今では焼酎は、気軽に楽しめるお酒として人気があります。
醸造方法は3つに大別され、さらに原料によっても種類が枝葉に分かれていく奥深さです。
それらの各特徴を理解しておくことで、焼酎を選ぶような機会に役立つことでしょう。
ここでは、焼酎の種類を製造方法ごとの定義から解説していきます。
単式蒸留焼酎とは、とてもシンプルな構造の単式蒸留機を使用して製造する焼酎を指します。
わずか1回(もしくは2回)のみの蒸留によって仕上げた焼酎で、原材料としては芋・麦・米・栗・蕎麦・黒糖などが使われるのが大きな特徴です。
そのため、素材の風味をそのまま残しながらお酒に仕上げています。
さらには、通常の気圧で蒸留する「常圧蒸留法」では、風味が濃厚で複雑になり、減圧・低温で蒸留する「減圧蒸留法」は、華やかでマイルドなテイストです。
単式蒸留焼酎は別名で「本格焼酎」「乙類焼酎」とも呼ばれ、有名な蔵元も多く、発酵・製造法が蔵元によって秘訣を持っていてその伝統を守り続けています。
アルコール度数は45度以下でやや高めです。
連続式蒸留焼酎は、糖蜜を原料に発酵させた液体を、連続式蒸留機で何度も蒸留させた上で製造します。
そのため、最終的には純度の高い無色透明なエタノールを生成し、水を加えてアルコール度数を35度以下にしたものが商品化される焼酎です。
別名「甲類焼酎」とも呼ばれます。
テイストは癖が一切消えてクリアな味わいが特徴的です。
市場で多く出回る製品化された酎ハイやサワーなどは、この方式を採用し大量生産されています。
比較的誰でも気軽に楽しめる焼酎でリーズナブルなのが魅力といえるでしょう。
水割り・お湯割り・レモンやライム、梅干しなどでアレンジを楽しむのもおすすめです。
甲類乙類混和焼酎は、単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎をブレンドし製造されたものです。
どちらの割合が多いのかによっても呼び名が変わります。
もし、単式蒸留の焼酎分量が多い場合は「乙類甲類混和」と区分され、連続式の焼酎甲類が多い場合は「甲類乙類混和」とラベル表記するのがルールです。
テイストは、単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎の良いとこ取りと思えばよいでしょう。
すっきりとした味わいながら、コクも楽しめる飲みやすさが特徴です。
今でこそ日本の伝統的なお酒のイメージである焼酎は、どのような起源と歴史を育んできたのでしょうか。
ルーツはメソポタミア文明にまで遡るとされています。
では、その蒸溜技術はどのようにして日本へ渡ってきたのでしょうか。
ここでは、蒸溜技術のルーツおよび日本伝来の歴史、焼酎文化として成長した背景などを解説します。
焼酎の種別は、ウイスキー・ウォッカ・ブランデーなどと同じ蒸留酒に含まれます。
そのため、蒸溜技術の発展に伴いながら歴史を築いてきたといえるでしょう。
蒸留技術が誕生したのは、紀元前3500年頃の古代メソポタミアとされています。
その当時の蒸留技術は、お酒の製造で利用したのではなく、香料の抽出のために使われていました。
蒸留酒として登場するのは数世紀ほど後のことになります。
正確な発祥地などの資料は存在しませんが、おそらく紀元前800年のインドで、米や砂糖を原料としたお酒が作られ、紀元前750年の古代アビシニア(現在のエチオピア)で、ビールが飲まれていた記録が残っていて、その周辺の時期や場所が濃厚とされているのです。
蒸留酒造りに使われる蒸溜機の歴史は、紀元前4世紀以降のヘレニズム文化の頃とされています。
ヘレニズム文化は、ギリシャ文化とオリエント文化が融合した時代です
その頃、哲学者のアリストテレスが、ワインの蒸留をしていたという記録が残っています。
化学が発展した時代でもあり、化学物質の蒸留技術が盛んにアップデートされ、8世紀には「アランビック」と呼ばれる初代蒸留機器が誕生しました。
この機械は、アラビア人たちが中東各地・西洋諸国・東洋へと伝えたとされています。
アジア周辺では、インド・モンゴル・中国・タイ・朝鮮へと伝来し、日本には「らんびき」という名称で登場しました。
焼酎が日本につたわってきた時期は、正確には明らかになっていません。
一説によれば、李氏朝鮮519年間の歴史文献「朝鮮王朝実録(李朝実録)」に、1477年(文明9年)には、琉球王国ではすでに蒸留酒が存在していた記録が残されています。
日本国内にて焼酎が登場するのは、それより後の時代です。
日本国内に伝わった起源は、14世紀以降とされ、東南アジアから中国経由での伝来ルートが考えられますが、ここにも諸説あります。
15世紀にタイなどとの貿易をおこなっていた琉球王国を経由して伝わった説や、14〜15世紀に中国大陸や東シナ海を荒らし回った「倭寇(わこう)」という海賊が日本へ伝えたという説、そして、15世紀に朝鮮半島の高麗酒が壱岐や対馬へ伝わった説などがあり、どれが信憑性が高い説なのかはっきりしません。
おそらく、沖縄を中枢としながら、九州地方へ技術が伝わって各地に焼酎文化が発展していったという説が濃厚となるでしょう。
伝来ルートについては定かではありませんが、室町時代にはすでに九州地方にて焼酎が飲まれていたと記録されています。
1546年(天文15年)に、ポルトガルの商人ジョルジェ・アルバレスが、フランシスコ・ザビエルに送った報告書には、米を製造して作る蒸留酒が、日本で日常的に飲まれていると記されているのです。
また、1559年(永禄2年)に、鹿児島県伊佐市の郡山八幡神社の補修を行った宮大工が、「施工主がケチで一度も焼酎を飲ませてくれず残念だ」といった内容の棟木札を書いていて、「永禄二歳八月十一日」の日付で残されています。
本格焼酎の種類でもメジャーなのが芋焼酎です。
芋の伝来は、青木昆陽(あおきこんよう)が記した「蕃薯考(ばんしょこう)」によると、薩摩地方に1705年に伝わったとされています。
元々の原産国は中南米で、中国より琉球王国経由で九州地方に入ったようです。
漁師が琉球王国から持ち込んだものとされています。
カライモ・リュウキュウイモ・甘藷(かんしょ)・蕃薯といった名称で呼ばれていました。
温暖なシラス台地である薩摩地方の風土と相性がよかったことや、米が育ちにくい環境による米の代用として流布していき、焼酎の原料としても試すようになったことがきっかけです。
沖縄の独特なお酒として「泡盛」が有名です。
泡盛は、米焼酎の一種であり、古くから独特の材料と作り方を育んできました。
今から約600年前に遡るとされますが、泡盛の存在を示す文書は今のところ発見されていません。
1575年の薩摩での記録では、「琉球が贈り物として60年前と同じ焼酎をもってきた」という旨が残されています。
一般的な焼酎は、芋を中心にさまざまな穀物や野菜から製造されますが、泡盛は古来の製法に則ってタイ米を使用し、黒麹のみで作られるのが特徴です。
しかも泡盛の場合は、一般的な焼酎とは異質で、熟成させることで風味が増すお酒でもあります。
同じ焼酎の仲間でありつつも、泡盛は一線を画した独自の発展を遂げてきました。
焼酎は甲類焼酎と乙類焼酎、その2つの混合という種類に別れますが、原料も異なっていて各々の特徴を引き出しています。
甲類焼酎の場合は、おもにサトウキビの絞りかすの「糖蜜」が原料となり、黒糖を製造する際の副産物です。
糖分が多くアルコール分解しやすいとされています。
一方で、乙類焼酎はさまざまな穀物や野菜などが活用されて完成する焼酎です。
ここでは、おもに乙類焼酎の原料別による焼酎の種類と特徴を解説します。
麦焼酎を製造する際は、主原料として「二条大麦」という品種が頻繁に使われています。
明治時代初期に、ヨーロッパからビール原料のために輸入されました。
デンプン質を豊富に含み、大粒なのが特徴です。
本格焼酎でありつつ、軽やかでスッキリとした風味と癖の少なさが人気となっています。
そのため、飲みやすさと香ばしさ、軽い口当たりが食事ともマッチする焼酎です。
代表的な銘柄には、「いいちこ」「一番札」などがあります。
芋焼酎の主原料は、頻繁にサツマイモが使われます。
サツマイモの中でも「コガネセンガン」という品種が主流です。
デンプン質を多く含むことで、アルコールに変換しやすいからとされています。
他にも、ベニアズマ・ベニサツマ・シロユタカ・ジョイホワイトなども芋焼酎の原料として採用される品種です。
ジョイホワイトなどは、芋臭さ・癖が比較的少なくて飲みやすい焼酎になります。
芋焼酎は独特な香りとテイストなので、焼酎を本格的に愛好する人に人気があり、ストレートに限らず、水やお湯で割るなどでも、濃厚な味わいが楽しめるでしょう。
代表的な銘柄としては、「黒霧島」「霧島」「三岳」などが有名です。
米焼酎の主原料は国産米が使われます。
中には、コシヒカリなどの有名なブランド米を使用することもあるようです。
まろやかで米の香りが高いため、比較的飲みやすいことが人気となっています。
消費者のトレンドとしては、吟醸酒のような香りとサッパリした味わいをしたソフトタイプの米焼酎が主流となりつつあるようです。
軽やかさ、甘み、すっきりとした味わいでクセが少なく初心者にも好まれます。
代表的な銘柄としては、「白岳」「吟香」などです。
黒糖焼酎とは、鹿児島県奄美諸島の特産品として、限られた酒蔵でしか製造が認められていない希少な焼酎の一種です。
主原料となるサトウキビから抽出する黒糖に、米麹を加えて製造されます。
甘い香りとまろやかな口あたり、さわやかな飲み心地など、黒糖の健康的なイメージそのままの焼酎です。
代表的な銘柄には、「里の曙」「奄美」などがあります。
そばの歴史は古くて、奈良時代にはすでに食用とされていましたが、焼酎の原料として使われるようになるのは最近のことになります。
1973年に宮崎県で誕生しました。
そば焼酎の登場により、焼酎カルチャー多様化へのきっかけとなったとされています。
さっぱりしながらも独特のコクがあり、やわらかでほのかな甘みがある味わいです。
日頃から、そば好きな人に向いています。
食中酒として飲まれる人も多いようです。
代表的な銘柄には「そば焼酎吉四六」があります。
ごまの香ばしさを生かした焼酎で、甘い香りと深みのある味わいが楽しめます。
歴史は浅く、1978年に福岡県の蔵元「紅乙女酒造」より誕生しました。
飲んでみるとごまの味がしっかりわかるので、ロックやお湯割りにすると飲みやすくなります。
代表的な銘柄としては、「鶴見」があげられるでしょう。
焼酎の種類は豊富で、酒税法では49品目が原料として認定されていますが、飲み方についても多様なスタイルがあります。
自分の好みに応じながら楽しむことができるでしょう。
ここでは、焼酎の飲み方のバリエーションについて説明します。
焼酎をロックで飲む場合は、氷を加えて冷やしながら香りや味わいを引き立てることができます。
大きめの氷をグラスにたっぷり入れたら、焼酎を注いで完成です。
比率としては、氷と焼酎を1:1、もしくは2:1の割合にするとよいでしょう。
氷が溶けるごとに焼酎の味わいが徐々に変化するからです。
最初は濃厚な味を楽しみながら、氷が溶けるにつれてまろやかさを感じます。
焼酎の種類の中では、芋焼酎・麦焼酎などがロックに最適です。
さらにレモンやライムのスライスを加えると、爽やかさが増すのでおすすめできます。
焼酎の水割りは、アルコール度数を調整しつつ風味を楽しむ方法です。
グラスに氷を入れても入れなくても楽しむことができます。
焼酎を注いだら水を加えますが、比率は1:1、2:1などさまざまです。
焼酎の風味を柔らかくしてまろやかな味わいが広がっていきます。
米焼酎・麦焼酎などは水割りに適していて、アレンジとして水の代わりに炭酸水や果汁を使ってもよいでしょう。
また、あらゆる料理とも相性が合うので、焼酎の香りを引き立てつつ、料理の味も堪能できます。
お湯割りは、温かいお湯で焼酎を割るスタイルです。
寒い季節に人気があり、約60〜70℃のお湯加減がベストでしょう。
焼酎を注いでお湯を加えますが、これも1:1や2:1の割合で割ります。
特に芋焼酎・米焼酎の飲み方の一つとして定番化され、生姜やレモンを加えると、さらに風味が増します。
身体の保温効果も期待できるので、一度試してみるとよいでしょう。
焼酎はカクテルとしても楽しむことができます。
今では人気の定番となった焼酎サワー(焼酎とレモン果汁)が代表的です。
他にも、焼酎モヒート(焼酎・ミント・ライム・ソーダで割る)などがあります。
とてもフルーティーな味わいで甘みや酸味が増し、飲みやすいため、焼酎ビギナーや女性におすすめできる組み合わせです。
見た目にも華やかなので多様な味わいが楽しめます。
焼酎をお茶で割ると、さっぱりとした飲み口になります。
緑茶やウーロン茶が一般的ですが、ほうじ茶・ジャスミン茶でも美味しく仕上がるでしょう。
グラスに焼酎を注いだらお好みのお茶を注ぎます。
1:1の割合を基準としながら、お好みに応じて調整してください。
お茶割りは、麦焼酎・米焼酎が適しています。
夏場は冷たいお茶で割るのがおすすめです。
焼酎をより楽しむためには、焼酎の基本的概念と種類を理解しておくとよいでしょう。
焼酎になる原料の品目は多彩で、米・芋・麦・そば・黒糖に限らず、全部で49品目に及んでいます。
また、単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎での製造方法の違いを知れば、自分の好みに合った焼酎を選びやすくなるでしょう。
焼酎には深い歴史と文化が育まれてきました。
そして、現代になっても進化を遂げています。
ぜひ、自分だけの焼酎の楽しみ方を見つけてください。