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【競技別・目的別】スポーツにベストな食事と栄養とは?

記事作成日:2025.06.11
「何を食べればパフォーマンスが上がるのかわからない」「競技に合った食事方法を知りたい」そんな悩みを抱えていませんか?同じスポーツ栄養でも、持久系と瞬発系では必要な栄養素が大きく異なります。本記事では競技別・目的別のベスト
な食事と栄養管理について解説していきます。
【競技別・目的別】スポーツにベストな食事と栄養とは?

目次

スポーツに食事が重要な理由

スポーツをしている人にとって、食事と栄養はただお腹を満たすためのものではありません。何を食べるかによって、パフォーマンスが大きく変わり、けがをしにくい体を作ることができます。

1-1競技力向上に不可欠

普通に入手できる多くの種類の食べ物から適切なエネルギーを補給していれば、トレーニングや競技に必要な糖質(炭水化物)・たんぱく質・脂質、そして微量栄養素の必要量をとることができるとされています。
私たちの体は、食べたものを材料にして作られています。筋肉を作るにはたんぱく質が必要で、動くためのエネルギーには炭水化物が欠かせません。脂質は長時間運動する時のエネルギー源になり、ホルモンを作る材料にもなります。
ビタミンやミネラルは、体の中で栄養素がうまく働くための手助けをします。免疫力を高めたり、疲労回復を早めたりする効果もあります。これらをバランスよく食べることで、トレーニングの効果を最大限に引き出せます。

1-2スポーツ栄養の基本原則

パフォーマンスを最大限に上げるために、「何を、いつ、どれだけ、どのように摂取するか」。スポーツ栄養学は、運動やスポーツにより身体活動量が多い人に対して必要な栄養学的理論・知識・スキルを体系化したものです。
食事のタイミングは、食べる内容と同じくらい大切です。練習前には燃料となる炭水化物を中心に食べ、お腹に負担をかける脂っこいものは控えめにします。練習後30分以内には、筋肉の回復を助けるたんぱく質と、エネルギーを補う炭水化物を一緒に摂ります。
一時的に食事を変えるだけでは、大きな効果は期待できません。毎日続けることで、体調が安定し、けがをしにくくなり、長期的にパフォーマンスが向上します。食事も練習の一部だと考えて、習慣として身につけることが成功への近道です。

競技別にみる食事と栄養

スポーツによって必要な能力が違うため、食事の内容も変える必要があります。マラソンのような持久力が必要なスポーツと、短距離走のような瞬発力が必要なスポーツでは、体が求める栄養素が異なります。

2-1持久力系スポーツ(マラソン・自転車など)

マラソンや長距離自転車などの持久力系スポーツでは、長時間動き続けるためのエネルギーを体に蓄えておくことがもっとも重要です
■糖質を十分に摂ろう
糖質は体を動かすガソリンのような役割を果たします。マラソンや長距離競技では、体に貯めておいた糖質(グリコーゲン)がなくなると急に疲れてしまうため、十分な糖質を摂ることが欠かせません。
普段の食事では、全体のカロリーの55~60%を炭水化物から摂るようにしましょう。ご飯、パン、パスタなどの主食を中心に、果物や野菜からも糖質を摂取します。また、糖質をエネルギーに変える手助けをするビタミンB1が豊富な豚肉、大豆、玄米なども積極的に食べることが大切です。
大会前には、「カーボローディング」という方法で、筋肉により多くの糖質を蓄えます。競技の3~4日前から糖質の量を増やし、体重1kgあたり8~10gの糖質を摂ることで、長く走り続ける力が高まります。
■水分・ミネラルを正しく補給
持久力系スポーツでは、たくさん汗をかくため、水分と一緒に大切なミネラルも失われてしまいます。水分不足はパフォーマンスを大幅に下げるため、正しい水分補給の方法を知っておくことが重要です。
運動前には、2~3時間前に500ml程度の水分を摂って、体の水分バランスを整えます。運動中は、15~20分ごとに150~250mlずつ飲むことを目安にします。1時間以上の運動では、糖質と電解質が入ったスポーツドリンクが効果的です。
運動後は、失った水分の1.5倍を目安に補給します。体重がどれくらい減ったかを見れば、どのくらい汗をかいたかがわかります。また、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルも一緒に摂ることで、より効果的に回復できます。
■持久力系アスリートの1日食事例
持久系アスリートの1日食事例では、糖質を中心としたエネルギー確保と持続的な栄養供給を重視します。
・朝食
オートミール(1カップ)+バナナ+はちみつ
全粒パン2枚
低脂肪牛乳
オレンジジュース(約800kcal、糖質120g)
・昼食
鶏むね肉のパスタ(300g)
野菜サラダ
フルーツヨーグルト(約900kcal、糖質140g)
・間食
エネルギーバー
スポーツドリンク(約300kcal、糖質70g)
・夕食
鮭の塩焼き
玄米ご飯(大盛り)
野菜の煮物
味噌汁(約700kcal、糖質100g)

2-2瞬発力・筋力系スポーツ(筋トレ・短距離走など)

短距離走や筋力トレーニングなどの瞬発力・筋力系スポーツでは、強い筋肉を作ることが最優先です。瞬発力系の競技では筋肉への負荷が大きい運動を行うため、持久力系の競技に比べると筋肉の材料になるタンパク質が多めに必要になります。
■たんぱく質で筋肉修復
たんぱく質は筋肉を作る材料そのものです。激しいトレーニングで傷ついた筋肉を修復し、より強く大きくするためには、十分なたんぱく質が必要不可欠です。瞬発力・筋力系アスリートは、体重1kgあたり1.6~2.2gのたんぱく質を摂ることが推奨されています。
良質なたんぱく質を含む食品として、鶏むね肉、魚、卵、牛乳・ヨーグルト、大豆製品などがあります。これらの食品には、筋肉を作るのに必要なアミノ酸がバランスよく含まれています。特に、筋肉の合成を促進する分岐鎖アミノ酸(BCAA)は、筋肉の成長に大きな効果があります。
たんぱく質は一度にたくさん摂るよりも、1日3~6回に分けて摂る方が効果的です。毎回の食事で20~40gのたんぱく質を摂ることを目標にし、間食にもプロテインドリンクやヨーグルトなどを活用しましょう。
■炭水化物と組み合わせよう
トレーニング前の食事では、体を動かすエネルギーを確保し、筋肉が分解されるのを防ぐことが大切です。トレーニングの2~3時間前に、消化の良い炭水化物と適量のたんぱく質を含む食事を摂ります。例えば、全粒パンのチキンサンドイッチ、バナナ、水分補給などの組み合わせが挙げられます。トレーニング直前(30分~1時間前)には、消化の良い軽食を摂ります。例えば、バナナ、エネルギーバー、スポーツドリンクなどです。
トレーニング後の食事は、筋肉の回復と成長にとって最も重要です。トレーニング後30分以内に、たんぱく質と炭水化物を組み合わせた食事を摂ることで、筋肉の成長を最大限に引き出せます。具体的には、プロテインドリンク+バナナ、チキンライス、ツナおにぎりなどのメニューがおすすめです。
■瞬発力・筋力系アスリートの1日食事例
瞬発力・筋力系アスリートの1日食事例では、たんぱく質を重視しながらエネルギーバランスを保ちます。
・朝食
スクランブルエッグ(卵3個)
全粒パン2枚
ギリシャヨーグルト
フルーツ(約650kcal、たんぱく質35g)
・昼食
鶏むね肉のグリル(200g)
玄米ご飯
蒸し野菜
牛乳(約750kcal、たんぱく質45g)
・間食
プロテインシェイク+バナナ(約350kcal、たんぱく質25g)
・夕食
サーモンのソテー(150g)
さつまいも
サラダ
豆腐の味噌汁(約650kcal、たんぱく質40g)

2-3球技(サッカー・バスケ・野球など)

サッカーやバスケットボールなどの球技では、瞬発力と持久力の両方が必要です。一瞬での判断力や体のキレがポイントとなります。筋肉の瞬発力をアップするためには、ナトリウム、カリウム、マグネシウムといったミネラルが重要になります。
■糖質とたんぱく質のバランス
混合系スポーツでは、糖質とたんぱく質をバランスよく摂ることが理想的です。糖質は全体のカロリーの50~55%、たんぱく質は体重1kgあたり1.4~1.8gを目安にします。
エネルギー源となる炭水化物と、筋肉を維持・成長させるたんぱく質をバランスよく摂ることで、試合中ずっと良いパフォーマンスを発揮できます。また、脂質も全体の25~30%程度摂取し、長時間の運動でのエネルギー源として活用します。
食事のタイミングも大切で、練習や試合の3~4時間前には十分な食事を摂り、直前には消化の良い軽食で最後のエネルギー補給を行います。
■試合前後・ハーフタイムの補食
試合前の補食では、エネルギーレベルを保ちながら、お腹に負担をかけないことが重要です。試合の1~2時間前に、バナナ、エネルギーバー、薄めたスポーツドリンクなどを摂ります。
ハーフタイムでは、短時間でエネルギーを補給することが大切です。糖質濃度6~8%のスポーツドリンク、カットフルーツ、エネルギージェルなどで素早くエネルギーを補い、後半戦に備えます。
試合後の補食は、疲労回復と次の練習・試合への準備が目的です。試合終了後30分以内に、たんぱく質と炭水化物を3:1の比率で摂ることで、筋肉の回復を促進し、失ったエネルギーを効率よく補えます。
■球技系アスリートの1日食事例
球技系アスリートの1日食事例では、糖質とたんぱく質のバランスを重視します。
・朝食
具だくさんオムレツ
ご飯
納豆
野菜ジュース(約700kcal、糖質80g、たんぱく質30g)
・昼食
豚肉の生姜焼き定食
ご飯大盛り
野菜サラダ
フルーツ(約850kcal、糖質110g、たんぱく質35g)
・間食
おにぎり2個
スポーツドリンク(約400kcal、糖質90g)
・夕食
マグロの刺身
ご飯
野菜炒め
豆腐の味噌汁(約650kcal、糖質75g、たんぱく質35g)

目的別の食事

競技力を向上させるために体重や体の組成を調整する時は、目的に合わせた具体的な食事方法が必要です。無理な食事制限や食べすぎは、パフォーマンスの低下やけがの原因になるため、正しい方法で行うことが重要です。

3-1増量期の食事法

効果的な増量では、筋肉を増やすことを目的とし、ただ体重を増やすのではなく、質の良い体重増加を目指します。消費するカロリーよりも多くのカロリーを摂ることが基本ですが、栄養のバランスを保ちながら進めることが大切です。
増量期に効果的な食事方法は以下の通りです。
・カロリーを増やす
今の食事に500~1000kcalを追加する
・たんぱく質を強化
体重1kgあたり1.6~2.2gのたんぱく質を摂る
・食事回数を増やす
1日3食から5~6食に分けて、常にエネルギーを補給する
・高カロリー食品を活用
ナッツ、アボカド、オリーブオイルなどの健康的で高カロリーな食品を取り入れる
具体的な食品選びでは、玄米などの全粒穀物、赤身肉、魚、乳製品、豆類などの栄養価の高い食品を中心にします。プロテインドリンクにバナナやオーツを加えて高カロリーにすることも効果的です。食事の間隔を短くし、空腹の時間を作らないことで筋肉の分解を防ぎ、効率的な増量ができます。

3-2減量期の食事法

アスリートの減量では、筋肉を減らさずに体脂肪だけを減らすことが最も重要です。極端なカロリー制限は筋力の低下や免疫力の低下を招くため、段階的で続けられる方法を選ぶ必要があります。
減量期の基本的な戦略は以下の通りです。
・適度にカロリーを制限
今の食事から200~500kcalを減らす
・たんぱく質は維持
体重1kgあたり1.8~2.7gのたんぱく質を続けて摂る
・炭水化物を調整
血糖値が急激に上がらない低GI食品を選ぶ
・脂質の質を向上
悪い脂肪を減らし、良い脂肪(オメガ3など)を増やす
食事のタイミングも重要で、朝食はしっかりと摂り、夕食は軽めにします。間食では野菜スティック、プロテインバー、ギリシャヨーグルトなどの低カロリーで栄養価の高い食品を選びます。水分を多く摂ることで満腹感を得やすくし、代謝も活発になります。

3-3怪我予防・疲労回復のための栄養

コンディションを整える栄養戦略では、炎症を抑える栄養素と回復を早める成分に注目します。適切な栄養摂取により、けがのリスクを減らし、疲労から素早く回復できます。
けが予防のために重要な栄養素は以下の通りです。
・カルシウムとビタミンD
骨を強くし、骨密度を高める
・てんビタミンC
コラーゲンの合成を促進し、抗酸化作用もある
・てんオメガ3脂肪酸
炎症を抑え、関節の健康を保つ

・マグネシウム
筋肉が正常に収縮・弛緩するのを助ける
疲労回復を早める栄養素では、抗酸化物質を多く含むベリー類、緑黄色野菜、緑茶などを積極的に摂ります。また、良質な睡眠をサポートするトリプトファンを含む食品(バナナ、牛乳、ナッツ類)も効果的です。練習後の炎症を抑えるために、チェリージュース、ターメリック、生姜などの天然の抗炎症成分も活用しましょう。

年代・ライフステージ別スポーツ栄養

年代やライフステージによって体の成長の流れや代謝能力が違うため、それぞれに適した栄養管理が必要です。成長期と高齢期では、同じスポーツをしていても栄養に対するアプローチが大きく変わります。

4-1ジュニアアスリートの食事

成長期のアスリートは、競技に必要なエネルギーに加えて、成長のためのエネルギーも必要とします。骨や筋肉の発達、身長の伸び、そして競技力向上のすべてを支える栄養摂取が求められます。
ジュニア期で特に気をつけるべき点は以下の通りです。
・カルシウムをしっかり摂る
1日1000~1300mgを目標とし、将来の骨密度を最大化する
・鉄分を重視
成長期の血液量増加と、特に女子選手の月経による鉄不足を防ぐ
・十分なエネルギー摂取
成長と競技の両方を支えるため、極端な食事制限は避ける
・正しい食習慣を身につける
朝食を必ず食べる、好き嫌いを減らす、規則正しい食事時間を守る
食事内容では、牛乳・乳製品、小魚、緑黄色野菜を豊富に取り入れ、カルシウムの吸収を高めるビタミンDも意識的に摂ります。また、正しい栄養指導により、自分で食事管理できる能力を養うことも重要です。体重管理よりも健康的な成長を優先し、長期的な競技力向上を目指します。

4-2シニア世代のスポーツ栄養

中高年以降でスポーツを続ける人では、健康維持と運動能力の維持を両立させる栄養管理が重要です。年齢とともに基礎代謝が下がり、筋肉量が減少し、消化機能も変化するため、それに合わせた食事調整が必要になります。
シニア世代の栄養ポイントは以下の通りです。
・たんぱく質の質と量
筋肉量を維持するため、体重1kgあたり1.2~1.5gの高品質たんぱく質を摂る
・抗酸化物質を強化
活性酸素の害を減らし、老化の進行を遅らせる
・水分摂取を意識
のどの渇きを感じにくくなるため、意識的に水分補給する
・消化の負担を軽減
消化酵素の分泌が減るため、消化しやすい調理法を選ぶ
具体的には、魚を中心としたたんぱく質源の選択、野菜や果物からの抗酸化物質摂取、発酵食品による腸内環境の改善などが効果的です。また、骨粗しょう症予防のためのカルシウム摂取、心血管疾患予防のためのオメガ3脂肪酸も大切な役割を果たします。運動と組み合わせることで、健康寿命を延ばすことができます。

実践!アスリートの一日食事例

理論的な知識を実際の食生活に活かすためには、具体的な食事例を知ることが大切です。ここでは、競技の特性や目的に合わせたメニューを紹介します。

5-1忙しい人でも続けられる簡単レシピ

忙しいアスリートでも実践できる簡単で栄養価の高いレシピを紹介します。時間をかけずに必要な栄養素を摂取できる方法を身につけることで、継続的な栄養管理が可能になります。
■朝食の時短レシピ
・オーバーナイトオーツ
オーツ、牛乳、ヨーグルト、フルーツを前夜に混ぜて冷蔵庫に入れておきます。朝はそのまま食べられ、炭水化物とたんぱく質をバランスよく摂取できます。
・プロテインスムージー
冷凍フルーツ、プロテインパウダー、牛乳、はちみつをミキサーで混ぜるだけです。5分で完成し、高たんぱく質で消化しやすい朝食になります。
■昼食の時短レシピ
・鶏むね肉のまとめ調理
週末に鶏むね肉を茹でて冷蔵保存し、サラダやサンドイッチ、パスタに活用します。高たんぱく質で低脂肪、様々な料理にアレンジできます。
・栄養満点丼ぶり
ご飯に茹で卵、ツナ、アボカド、野菜をのせ、ごまドレッシングをかけるだけです。10分で完成し、炭水化物、たんぱく質、良質な脂質がバランスよく摂取できます。
■間食・補食の時短レシピ
・バナナピーナッツバターサンド
全粒パンにピーナッツバターとバナナをはさむだけです。炭水化物、たんぱく質、良質な脂質を手軽に摂取できます。
・ギリシャヨーグルトパフェ
ギリシャヨーグルトにグラノーラとベリーを重ねるだけです。高たんぱく質で抗酸化物質も豊富です。

まとめ

スポーツ栄養は、競技力向上のために欠かせない要素であり、個々の競技特性や目的に応じたアプローチが必要です。持久力系スポーツでは糖質を中心としたエネルギー戦略、瞬発力・筋力系スポーツではたんぱく質を重視した筋肉づくり、球技系スポーツではバランスの取れた栄養摂取が基本となります。
本記事でお伝えした内容を、日常的な食習慣として定着させることでパフォーマンスを向上させることができます。最新の科学的知見も取り入れながら、自分に合った栄養管理方法を見つけ、実践していきましょう。

日本インストラクター技術協会編集部
インストラクターの専門性を高めるためや地位向上を目的とした団体である日本インストラクター技術協会(JIA)編集部が運営するコラムです。
美容・健康・ボディケアの資格の筋トレインストラクター、シェイプアップインストラクターや骨格診断士。心理カウンセラー資格のメンタル心理インストラクター、子供心理カウンセラー®、音楽療法カウンセラーや行動主義心理アドバイザー®など様々な資格を認定しています。
日本インストラクター技術協会編集部