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スポーツ時の水分補給がパフォーマンスを左右する!最適な補給方法とは?

記事作成日:2025.06.11
スポーツをしているとき、「もう少し頑張れたはずなのに」と感じたことはありませんか。実は、運動中のパフォーマンス低下の原因の多くが水分不足にあることをご存知でしょうか。本記事では、効果的な水分補給方法とパフォーマンス向上のコツについて解説していきます。
スポーツ時の水分補給がパフォーマンスを左右する!最適な補給方法とは?

目次

スポーツで水分補給はなぜ重要?

スポーツを行う際に体内で起こる変化を理解することで、なぜ水分補給が重要なのかが明確になります。

1-1スポーツ時に体内で起きる変化

スポーツを行うと、私たちの体の中では様々な変化が起こります。筋肉が動くことでエネルギーが消費され、その際に熱が発生します。これにより体温が上昇し、体は正常な温度を保つために汗をかいて体温を下げようとします。体温が1度上昇するだけでも、運動能力は大幅に低下してしまうため、体温調節は極めて大切な機能です。
汗をかくことは体温調節に欠かせない生理現象ですが、同時に体内の水分が失われることを意味します。運動時には平常時の数倍から十倍以上の汗をかくことがあり、これによって体内の水分バランスが大きく変化します。また、呼吸が激しくなることで呼気からも水分が失われ、体内の水分減少はさらに進行します。
激しい運動時には、心拍数が増加し、血液循環が活発になります。この際、十分な血液量を維持するためには適切な水分量が必要です。水分が不足すると血液が濃縮され、心臓への負担が増加し、全身に酸素や栄養素が、行き渡りづらくなります。

1-2汗で水分とミネラルが失われる

汗の成分は約99%が水分ですが、残りの1%には、

・ナトリウム
・カリウム
・マグネシウム
・カルシウム

などの重要なミネラル(電解質)が含まれています。これらのミネラルは、筋肉の収縮や神経伝達に重要な役割を果たしており、失われると体の機能に直接影響を与えます。
通常の日常生活では1日に約2.5リットルの水分が失われますが、激しい運動時には1時間で1~2リットル以上の汗をかくことも珍しくありません。この大量の水分とミネラルの喪失が、スポーツパフォーマンスに大きな影響を与える主な原因となります。
特にナトリウムは汗に多く含まれており、1リットルの汗には約1~3グラムのナトリウムが含まれています。ナトリウムが不足すると、筋肉のけいれんや痙攣が起こりやすくなり、重篤な場合には低ナトリウム血症を引き起こす可能性があります。また、カリウムの不足は筋肉の疲労を早め、マグネシウムの不足は筋肉の硬直を招くことがあります。
発汗量は個人差が大きく、体質、体格、運動への適応度、環境条件などによって変わります。暑熱環境に慣れていない人や、普段運動をしていない人は、より多くの汗をかく傾向があり、汗中のミネラル濃度も高くなるため、特に注意が必要です。

水分補給とパフォーマンスへの影響

水分が足りていないと、運動のパフォーマンスも低下します。ここでは水分補給と運動能力の関係をくわしく解説していきます。
水分が足りないと、体も頭も働かない
体内の水分量と運動能力には密接な関係があります。人間の体の約60%は水分で構成されており、筋肉量の多いアスリートではこの割合がさらに高くなります。体内水分が不足すると、血液の濃度が高くなり、いわゆる「血液ドロドロ状態」になってしまいます。
この状態になると、血流が悪くなり、筋肉への酸素や栄養素の供給が低下します。結果として、筋肉の働きが鈍くなり、持久力や瞬発力が大幅に低下してしまいます。さらに、心臓への負担も増加し、心拍数が上昇することで体力の消耗が早まります。
さらに、脳への血流も影響を受けるため、集中力や判断力の低下が起こります。スポーツにおいては、瞬時の判断や正確な技術が要求されるため、これらの認知機能の低下は致命的な影響をもたらすことがあります。

2-1脱水症状とそのリスク

脱水症状は段階的に進行し、それぞれの段階で異なる症状が現れます。体重の1%の水分を失うと軽度の脱水状態となり、のどの渇きを感じ始めます。体重の2%の水分を失うと、明確なパフォーマンスの低下が始まり、集中力や判断力にも影響が出てきます。
体重の3%以上の水分を失うと危険な状態に入り、筋肉のけいれんや痙攣、体温調節機能の障害が起こります。体重の5%以上の水分を失うと、吐き気やめまい、極度の疲労感が現れ、熱中症のリスクが非常に高くなります。これらの症状は運動を続けることを困難にし、最悪の場合は生命にも関わる危険な状態となります。
体重の1%の水分喪失で体温が約0.3度上昇し、2%の喪失で運動能力が10~15%低下するとされています。3%の喪失では運動能力が20~30%低下し、明らかな疲労感と運動を継続することが難しくなります。4%以上の喪失では、頭痛、めまい、吐き気などの明確な脱水症状が現れ、運動を続けることはきわめて危険な状態となります。

2-2パフォーマンス低下の具体例

水分不足によるパフォーマンス低下は、具体的にどのような形で現れるのでしょうか。まず、持久力が必要なスポーツでは、すぐに疲労感を感じるようになり、通常のペースを維持することが困難になります。また、反応速度が低下し、ボールを追いかける際の判断が遅れたり、適切なタイミングでのプレーができなくなったりします。
筋力を要するスポーツでは、筋肉の収縮力が低下し、パワーが発揮できなくなります。さらに、集中力の低下により、技術的なミスが増加し、怪我のリスクも高まります。チームスポーツでは、コミュニケーション能力も低下し、連携プレーにも支障をきたすことがあります。
マラソンやトライアスロンなどの持久系競技では、水分不足により後半のペースダウンが顕著に現れます。テニスやバスケットボールなどの球技では、正確性を要するショットやパスの成功率が低下し、戦術的な判断力も鈍ります。サッカーでは、試合終盤での走行距離の減少や、ボールロストの増加が観察されます。

スポーツ時の正しい水分補給

効率的な水分補給を実現するには、科学的根拠に基づいた方法を理解することが重要です。

3-1水分補給のタイミング

効果的な水分補給を行うためには、適切なタイミングと量を理解することが重要です。水分補給は、運動前、運動中、運動後の3つの段階に分けて考える必要があります。
運動前の水分補給では、体を十分に潤した状態で運動を開始することが目標です。具体的には以下のタイミングと量が推奨されます。
・運動開始の2~3時間前
500~600mlの水分を摂取
・運動開始30分前
200~300mlを追加で摂取
この事前の水分補給により、運動中の脱水を予防し、最初からパフォーマンスを発揮できる状態を作ることができます。

3-2運動前・運動中・運動後の水分補給

運動中の水分補給は、こまめに行うことが重要です。理想的には、15~20分ごとに200~250mlの水分を摂取することが推奨されます。一度に大量の水分を摂取すると、胃に負担をかけ、腹痛や不快感の原因となるため、少量ずつ頻繁に摂取することがポイントです。
運動後の水分補給では、失われた水分を迅速に回復させることが目的です。運動前後の体重差を測定し、失われた水分量を把握することが効果的です。一般的に、体重1kgの減少に対して約1.5リットルの水分補給が必要とされています。これは、運動後も汗や尿として水分が失われ続けるためです。
また、運動後の水分補給では、失われたミネラルの補充も重要です。特に長時間の運動や高強度の運動後には、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの電解質を含む飲料を選択することで、より効率的な回復を促進できます。さらに、糖質を含む飲料は、筋肉のグリコーゲン回復にも寄与するため、持久系競技の選手には特に重要です。

3-3喉の渇きを感じる前に飲むべき理由

「喉が渇いたら水を飲む」というのは、日常生活では自然な行動ですが、スポーツ時にはこの感覚に頼ってはいけません。なぜなら、喉の渇きを感じた時点で、すでに体重の2%の水分が失われており、パフォーマンスが低下し始めているからです。
運動に集中していると、自分の喉の渇きに気付くタイミングが遅れることがあります。実際の研究では、喉の渇きを自覚した時点で水分補給をした場合、必要な水分量の約半分ほどしか補給されていないという報告もあります。そのため、喉の渇きを感じる前に、計画的に水分補給を行うことが重要です。
さらに、運動中は交感神経が活発になり、消化器系の機能が低下します。そのため、喉の渇きを感じてから水分補給をしても、胃からの吸収に時間がかかり、体内の水分不足が改善されるまでに遅れが生じます。予防的な水分補給により、このタイムラグを最小限に抑えられます。

水分補給に適した飲料の選び方

運動時の水分補給には様々な選択肢があり、状況に応じて最適な飲料を選ぶことが重要です。

4-1水・スポーツドリンク・お茶の違い

水分補給に使用する飲料には、それぞれ異なる特徴があります。水は最も基本的な水分補給手段で、カロリーがなく、消化に負担をかけません。短時間の軽い運動や、日常的な水分補給には水で十分です。
スポーツドリンクは、水分だけでなく、失われた電解質や糖質を同時に補給できる利点があります。長時間の運動や大量の発汗がある場合には、スポーツドリンクが最適です。一方、お茶類では、麦茶のようにカフェインを含まないものは水分補給に適していますが、緑茶やコーヒーなどカフェインを含む飲料は利尿作用があるため、運動時の水分補給には適していません。

4-2塩分・糖分の必要性

運動時の水分補給において、塩分(ナトリウム)と糖分は重要な役割を果たします。日本スポーツ協会では、0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml)と4~8%程度の糖質を含んだ飲料が推奨されています。
塩分は失われた電解質を補充し、体液の浸透圧を維持する役割があります。糖分は運動中のエネルギー源となるだけでなく、ナトリウムと一緒に摂取することで、腸管での水分吸収を促進する働きもあります。ただし、糖分が多すぎると胃に負担をかけ、少なすぎると水分吸収効率が低下するため、適切な濃度を保つことが重要です。
塩分濃度については、個人の汗中ナトリウム濃度によって調整が必要です。一般的に、汗中のナトリウム濃度は20~80mEq/Lの範囲にあり、個人差が大きいことが知られています。塩辛い汗をかく人は、より多くのナトリウム補給が必要となります。
糖分の種類も重要で、ブドウ糖、果糖、マルトデキストリンなどが使用されます。異なる種類の糖質を組み合わせることで、吸収効率を高めることができます。また、糖分濃度が高すぎると胃内容物の排出が遅れ、運動中の不快感の原因となるため、6~8%程度が適切とされています。

4-3アイソトニック飲料の有効性

スポーツドリンクは、浸透圧の違いによって「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」に分類されます。アイソトニック飲料は、人間の体液とほぼ同じ浸透圧に調整されており、安静時や軽い運動時の水分補給に適しています。
アイソトニック飲料は糖質含有量が多く、エネルギー補給にも優れているため、運動前の水分補給や、長時間の持久運動時のエネルギー補給に効果的です。代表的なアイソトニック飲料には、ポカリスエットやアクエリアスなどがあります。一方、ハイポトニック飲料は体液よりも低い浸透圧で、水分の吸収速度が早く、大量の発汗時や運動中の水分補給に適しています。

暑い日は水分補給に特に注意!

暑い環境での運動は注意が必要で、普段よりもこまめな水分補給が求められます。

5-1暑い日の運動で気を付けるべきポイント

暑い日のスポーツは、体に大きな負担をかけます。気温が高いと、体温調節のために通常以上の発汗が必要となり、水分とミネラルの喪失が加速します。このような環境では、水分補給の頻度と量を通常よりも増やすことが重要です。
また、湿度が高い環境では、汗の蒸発が妨げられ、体温調節効率が低下します。そのため、より多くの汗をかく必要があり、水分補給もより重要になります。暑い日の運動では、可能な限り日陰で休憩を取り、こまめに水分補給を行うことが重要です。さらに、運動前から十分な水分補給を行い、体を冷やすために冷たい飲み物(5~15℃)を選ぶことも効果的です。

5-2熱中症予防と水分補給

熱中症は、体温調節機能が正常に働かなくなることで起こる健康障害です。適切な水分補給は、熱中症予防のもっとも大切な手段の一つです。熱中症の初期症状には、めまい、頭痛、吐き気、倦怠感などがあり、これらの症状が現れた場合は、直ちに運動を中止し、冷たい場所で水分補給を行う必要があります。
熱中症予防のためには、運動前から水分補給を開始し、運動中も定期的に水分を摂取することが重要です。また、尿の色をチェックすることで、体内の水分状態を簡単に確認できます。尿の色が薄い黄色であれば十分な水分補給ができており、濃い黄色やオレンジ色の場合は水分不足のサインです。

5-3体重や筋肉量で判断しよう

水分補給の必要量は、環境条件や個人の体質によって大きく異なります。体重が重い人や筋肉量が多い人は、より多くの水分補給が必要です。また、普段から運動をしている人は暑さに対する適応力が高く、汗の塩分濃度も低くなる傾向があります。
個人の発汗量を把握するためには、運動前後の体重測定が有効です。体重減少量の70~80%を目安に水分補給を行うことが推奨されています。

水分補給の誤解と注意点

水分補給には根強い誤解や危険な思い込みが存在し、正しい知識を身につけることが重要です。

6-1「運動中に水を飲んではいけない」は誤り

かつて日本では、「運動中に水を飲むと体力が落ちる」「根性が足りない」といった根拠のない指導が行われていました。しかし、現在ではこれらが完全に誤った考えであることが科学的に証明されています。
運動中の積極的な水分補給は、パフォーマンスの維持と健康リスクの軽減に不可欠です。適切な水分補給を行うことで、体温調節機能を維持し、筋肉の働きを正常に保つことができます。運動中に水分補給を制限することは、熱中症や脱水症状のリスクを高め、生命に関わる危険を招く可能性があります。

6-2一気飲みのリスク

水分補給において、一度に大量の水分を摂取することは避けるべきです。一気飲みをすると、胃に負担をかけ、腹痛や不快感の原因となります。また、胃の中に大量の水分が留まることで、運動時に胃が揺れて気分が悪くなることもあります。
さらに、一度に大量の水分を摂取しても、体に吸収される速度には限界があります。そのため、余分な水分は尿として排出されてしまい、効率的な水分補給にはなりません。理想的な水分補給は、少量ずつ頻繁に摂取することです。

6-3低ナトリウム血症に注意

水分補給において注意すべきもう一つのリスクが、低ナトリウム血症(水中毒)です。これは、大量の水を短時間で摂取することで、血液中のナトリウム濃度が希釈され、異常に低下する状態です。
低ナトリウム血症は、頭痛、吐き気、意識障害などの症状を引き起こし、重篤な場合は生命に関わることもあります。特に、長時間の運動で大量の汗をかいた後に、水だけを大量に摂取した場合に起こりやすくなります。そのため、大量の発汗がある場合は、水だけでなく、正しい濃度の電解質を含む飲料を選ぶことが重要です。

効果的な水分補給のポイント

ここまで水分補給のタイミングや注意点について見てきました。それでは、より効果的に水分補給を行うためにはどのようなポイントを抑えればよいのでしょうか?以下に詳しく解説していきます。

7-1どのくらいの頻度で飲むべき?

運動中の水分補給の頻度は、運動の強度、環境条件、個人の発汗量によって異なりますが、一般的には15~20分ごとに水分補給を行うことが推奨されます。
この頻度で水分補給を行う理由は、胃からの水分吸収速度と体内での水分利用効率を考慮したものです。あまりに頻繁すぎると運動に集中できず、間隔が空きすぎると脱水が進行してしまいます。マラソンなどの長時間の持久運動では、給水所が約5km(約15分)間隔で設置されているのも、この理論に基づいています。
競技の特性によっては、決められた時間での水分補給が困難な場合もあります。そのような場合は、休憩時間やタイムアウトなど、摂取可能なタイミングで積極的に水分補給を行うことが重要です。

7-2スポーツドリンクは薄めた方がいい?

市販のスポーツドリンクを薄めるべきかどうかは、運動の強度と個人の好みによって決まります。一般的なアイソトニック飲料は、安静時の体液と同じ浸透圧に調整されていますが、大量の発汗時には体液の浸透圧が低下するため、薄めた方が吸収されやすい場合があります。
特に長時間の激しい運動や猛暑日での運動では、市販のスポーツドリンクを1.5~2倍に薄めることで、水分吸収効率を向上させることができます。ただし、薄めすぎると必要な電解質や糖質が不足する可能性があるため、適度な希釈にとどめることが重要です。

7-3子どもや高齢者の水分補給

子どもや高齢者は、成人と比較して水分補給においてより慎重な配慮が必要です。子どもは体重に対する体表面積が大きく、発汗による水分喪失率が高くなります。また、喉の渇きを適切に認識できない場合があるため、大人が積極的に水分補給を促す必要があります。
高齢者では、加齢により喉の渇きを感じにくくなる傾向があり、腎機能の低下により水分調節能力も低下します。また、心疾患や腎疾患などの基礎疾患がある場合は、水分制限が必要な場合もあるため、医師と相談の上で適切な水分補給計画を立てることが大切です。子どもと高齢者の両方において、運動前の健康状態チェックと、運動中の様子観察が特に重要となります。

まとめ

スポーツ時の適切な水分補給は、パフォーマンス向上と健康維持の両面で極めて重要です。体重の2%の水分を失うだけでもパフォーマンスは明確に低下し、3%以上の喪失では危険な状態に陥る可能性があります。効果的な水分補給を行うためには、喉の渇きを感じる前に計画的に摂取し、運動前・中・後の各段階で適切な量とタイミングを心がけることが大切です。また、環境条件や個人差に応じて水分補給戦略を調整し、アイソトニック飲料やハイポトニック飲料を使い分けることで、より効率的な水分補給が可能になります。正しい知識を身につけ、安全で楽しいスポーツライフを送りましょう。

日本インストラクター技術協会編集部
インストラクターの専門性を高めるためや地位向上を目的とした団体である日本インストラクター技術協会(JIA)編集部が運営するコラムです。
美容・健康・ボディケアの資格の筋トレインストラクター、シェイプアップインストラクターや骨格診断士。心理カウンセラー資格のメンタル心理インストラクター、子供心理カウンセラー®、音楽療法カウンセラーや行動主義心理アドバイザー®など様々な資格を認定しています。
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