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日本の食生活に潜む問題点とは?背景・影響・改善策をわかりやすく解説

記事作成日:2025.06.11
「日本の食生活の問題点は?」
「健康や環境にどんな影響があるのか知っておきたい」

そんな疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では 日本の食生活に潜む課題と背景、具体的な影響や改善策 について、わかりやすく解説します。
日々の食事を見直すヒントとして、ぜひ参考にしてください。
日本の食生活に潜む問題点とは?背景・影響・改善策をわかりやすく解説

目次

現代の日本人の食生活に見られる問題とは?

現代の日本人の食生活は、欧米化や忙しさの影響で大きく変化しています。
ここでは、そうした現代の食生活に見られる主な問題点について解説します。

● 欧米化した食生活で栄養バランスが偏っている
● 魚離れが進み、タンパク質のバランスがくずれている

1-1欧米化した食生活で栄養バランスが偏っている

現代の日本人は、欧米化した食生活の影響で、野菜や魚の摂取が不足し、栄養バランスが乱れがちです。

肉類・脂質の多い食品や加工食品の摂取が日常化し、ビタミン・ミネラル・食物繊維などが不足しやすい傾向があります。
とくに野菜不足は深刻で、健康日本21(第3次)が目標とする野菜摂取量350g/日には届いていないのが実情です。

令和5年の国民健康・栄養調査によると、成人の野菜摂取量の平均は男性262.2g、女性250.6g、全体で256.0gと、いずれも目標値を大きく下回っています。
また、20代では男女ともに野菜摂取量が最も少なく、若年層での生活習慣病リスクや将来的な健康寿命への悪影響が懸念されています。
(参考:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」

栄養の偏りを防ぐには、主食・主菜・副菜の揃った食事を意識し、野菜・魚介類を積極的に取り入れることが大切です。

1-2魚離れが進み、タンパク質のバランスがくずれている

日本では魚の消費量が減り、肉類に偏ったタンパク質摂取が続いています。

農林水産省によると、日本人の魚の消費量は2001年の40.2kgから2022年には22.0kgに半減
その一方で、肉の消費量は増え続けており、2011年以降は魚より多くなっています
農林水産省によると、1人あたりの魚介類年間消費量は、2001年度の40.2kgから2022年度には22.0kgに減少しています。
一方で、肉類の消費量は増加し、2011年度以降は魚介類の消費を上回っています。

魚を食べない理由として「値段が高い」「調理がめんどう」「家族が肉を好む」などが挙げられています。
また、魚に含まれるDHAやEPAなどの栄養素が不足しがちで、健康面でも不安が残ります。

魚を手軽に取り入れるために、骨なしや調理済みの魚製品を活用することや、子どもへの食育が大切です。調理しやすい魚商品やレシピの工夫、子ども世代への魚食教育が、魚離れの改善に向けた一歩となります。
(参考:農林水産省「水産物消費の状況」

食生活の乱れがもたらす健康リスク

忙しさやライフスタイルの変化によって、私たちの食生活は乱れがちです。
ここでは、食生活の乱れがもたらす代表的な健康リスクについて紹介します。

● 朝食を抜くと代謝低下と集中力の低下につながる
● 偏った食事が生活習慣病の原因になる
● 子どもの偏食は将来の健康リスクに直結する

2-1朝食を抜くと代謝低下と集中力の低下につながる

朝ごはんを抜くと、脳のエネルギーが不足し、集中力ややる気が出にくくなります。
脳の主なエネルギー源はブドウ糖ですが、体に大量に貯めておくことはできません。

朝は寝ている間にブドウ糖を使い切ってしまうため、朝食をとらないと脳はエネルギー不足に陥ります。
その結果、イライラやぼんやり感、仕事や勉強への集中力の低下につながります。

例えば「朝は時間がないから」「ダイエット中だから」と朝食を抜いて出かけると、午前中にボーッとしたり、注意が散漫になることがあります。
実際、管理栄養士のアドバイスでも、朝ごはんを抜いた子どもは授業に集中できなくなるリスクが指摘されています。

気持ちよく1日をスタートさせるためには、朝ごはんでしっかりブドウ糖を補給するのが大切です。
ごはん・納豆・卵などを組み合わせた「ごはん食」は、脳と体のエネルギー源として効果的です。
(参考:農林水産省「朝ごはんを食べないと?」

2-2偏った食事が生活習慣病の原因になる

偏った食生活を続けていると、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こすリスクが高まります。

特定の栄養素を極端に摂りすぎたり不足させたりすることで、体の調整機能が乱れ、健康に悪影響を及ぼすためです。

以下のように、栄養素ごとの偏りがさまざまな不調を引き起こします。

栄養素 摂りすぎの影響 摂らなすぎの影響 関連するリスク・病気
糖質 脂肪として蓄積され肥満の原因に 疲れやすさ
集中力の低下
糖尿病
肥満
脂質 血管が詰まりやすくなる 血管がもろくなり出血リスクが高まる 動脈硬化
心疾患
たんぱく質 腎臓に負担がかかる 筋力・免疫力の低下
成長障害
腎機能障害
虚弱体質
食物繊維 下痢・ミネラルの排出 便秘になりやすい 大腸がん
肥満
高血圧
ミネラル 高血圧(ナトリウム)
下痢(マグネシウム)
骨粗しょう症
倦怠感
食欲不振
高血圧
骨粗しょう症
ビタミン 過剰摂取で中毒症状
(ビタミンA・Dなど)
成長障害
肌荒れ
免疫力低下
ビタミン欠乏症
皮膚トラブルなど

健康な体づくりのためには、特定の栄養素に偏らず、日々の食事で「いろいろな食品を少しずつ」摂ることが大切です。毎日の積み重ねが、生活習慣病の予防につながります。

2-3子どもの偏食は将来の健康リスクに直結する

子どもの偏食は、成長に必要な栄養が不足するだけでなく、将来的な生活習慣病のリスクを高める要因になります。
幼少期は身体の成長とともに、味覚や食習慣が形成される重要な時期です。

この時期に特定の食品しか食べない偏った食生活が続くと、カルシウム・鉄・ビタミン・食物繊維などの不足が慢性化し、発育不良や免疫力の低下を引き起こす可能性があります。
また、成長後も偏った食習慣が続くと、肥満・糖尿病・高血圧などの生活習慣病に繋がる恐れもあります。

以下は、子どもの偏食によって起こりうる主な健康影響の例です。

偏りのある栄養 摂らないことで起こりうる影響
カルシウム 骨の発育不良、将来の骨粗しょう症リスク
鉄分 貧血、集中力の低下、免疫力の低下
ビタミンA・C 皮膚のトラブル、風邪をひきやすくなる
食物繊維 便秘、腸内環境の悪化

偏食は一時的な好みの問題ではなく、将来の健康状態を左右する深刻な課題です。
家庭では少しずつ食材の幅を広げる工夫をし、子ども自身が「食べる楽しさ」を学べるような食育を心がけることが大切です。

日本の食生活に潜む3つの社会的問題

私たちの毎日の食生活は、実は社会や環境と深くつながっています。
ここでは、日本の食生活に潜む3つの社会的な問題について、わかりやすく解説します。

● 食品ロスは社会・環境・家計すべてに影響する深刻な課題
● 食料自給率の低さが招く供給不安
● 生産と流通が環境に与える負荷の増大

3-1食品ロスは社会・環境・家計すべてに影響する深刻な課題

食品ロスは、健康や環境、そして家計にまで影響する深刻な社会課題です。
特に日本では、家庭から出る食品ロスの割合も大きく、私たち一人ひとりの意識が問われています。

消費者庁の資料によると、日本の食品ロスは「事業系」と「家庭系」でほぼ半々となっており、家庭での食べ残しや未開封の食品の廃棄も深刻です。

消費者庁「食品ロス削減関係参考資料(令和7年3月5日版)」によれば、以下のような実態が明らかになっています。

● 日本の食品ロスは年間472万トン(令和4年度)
● 家庭系ロスは236万トン、うち43%が未開封のまま廃棄
● 1人あたり年間38kg=おにぎり1個分を毎日捨てている計算
● 食品廃棄の処理費用は年間約2.2兆円

(参考:消費者庁「食品ロス削減関係参考資料(令和7年3月5日版)」

私たち一人ひとりが「必要な量だけを買い、食べる」ことが、健康な食生活の維持だけでなく、環境や家計の改善にも直結します。

3-2食料自給率の低さが招く供給不安

日本の食料自給率の低さは、将来的な供給不安につながる重要な課題です。

農林水産省の食料需給表によると、日本のカロリーベースの食料自給率は38%にとどまっています。

食料自給率の低さがもたらす供給不安のリスクは以下の通りです。

● 自給率38%(カロリーベース)は先進国の中でも極めて低い水準
● 小麦・大豆・飼料作物など、日常の食事に欠かせない食品の多くが輸入依存
● 災害や国際情勢の変化で輸入が滞ると、供給量や価格、栄養バランスに影響
● 自給率の低下は、地域の農業・生産基盤の弱体化にもつながる

安定した食の確保には、国内での生産力を高め、食料自給率を向上させる取り組みが不可欠です。
私たち一人ひとりが国産の食品を選ぶことも、将来の供給不安を防ぐ行動のひとつです。

(参考:消費者庁「食品ロス削減関係参考資料」

3-3生産と流通が環境に与える負荷の増大

私たちの食生活は、生産から流通、廃棄にいたるまで多くの資源を消費しており、温室効果ガスの排出など環境に大きな負荷を与えています。

農林水産省の資料によると、日本の温室効果ガス排出量のうち約1割が食に関連する分野から生じています。
特に輸送や加工、冷蔵・冷凍などに使われるエネルギーは多く、さらに廃棄される食品があることで、その分の資源と排出が無駄になってしまうのです。

環境への主な負荷は以下の通りです。

● 食に関わる温室効果ガスは全体の約10%
● 気候変動は農作物の収穫量や品質にも影響
● 環境配慮型の商品(有機・簡易包装・国産品など)の選択が推奨されている

(出典:農林水産省「令和3年度 食育白書」

環境負荷を減らすには、必要な分だけを選んで食べきる、環境に配慮した食材を選ぶといった行動が大切です。日々の食の選択が、地球環境の未来を左右するでしょう。

スマホ時代の食習慣と心理的問題

現代の日本人の食生活には、スマートフォンの普及やライフスタイルの変化が大きな影響を与えています。
ここでは、スマホ時代ならではの食習慣の変化と、そこから生じる心理的な問題について解説します。

● 食事中のスマホ使用による「ながら食い」
● ストレス・孤食が招く食の乱れ

4-1食事中のスマホ使用による「ながら食い」

スマホを見ながらのながら食いは、食事への集中を妨げ、満足感の低下や過食につながる恐れがあります。

画面に意識が向いたまま食べると、満腹感を感じにくくなったり、咀嚼回数が減ったりして、消化にも悪影響を及ぼすためです。
また、食の楽しさや味わう意識も薄れてしまいます。

ながら食いの影響は以下の通りです。

● 食べすぎてしまうなど食事量のコントロールが難しくなる
● 咀嚼回数の減少による消化不良や肥満のリスク
● 食事に対する関心や満足感の低下で味覚の乱れが生じることも

短時間でも「食べることに集中する時間」を意識的に持つことが、心と体の健康に役立ちます。

4-2ストレス・孤食が招く食の乱れ

ストレスや孤独を感じると、食生活が乱れやすくなり、心身の不調につながることがあります。

現代は、仕事や人間関係のストレス、ひとりでの食事(孤食)などが原因で、栄養バランスの偏った食事や食べすぎ・食べなさすぎが起こりやすい環境です。

ストレスや孤食がもたらす影響は以下の通りです。

● イライラや不安から甘いものやジャンクフードに偏る
● 誰とも話さず食べることで食事がただの作業になってしまう
● 孤食が続くと、食事回数や量が不安定になりやすい

心の安定と健康な食習慣は深くつながっています。
ときには誰かと食事を共にしたり、リラックスできる環境で食べたりすることが、乱れた食習慣の改善につながります。

食生活を見直すためにできること

食生活の乱れや栄養バランスの偏りは、放っておくと健康リスクにつながります。
しかし、ちょっとした意識や工夫で、日々の食事を見直すことは十分に可能です。
ここでは、家庭で無理なく始められる「食生活改善のための具体的な方法」を3つ紹介します。

● バランスのとれた食事を意識する
● 無理なく朝食を習慣づける工夫を取り入れる
● 家庭でできる食育を通して子どもの意識を育てる

5-1バランスのとれた食事を意識する

健康的な食生活には、栄養バランスを意識した食事が欠かせません。

主食・主菜・副菜の3点を基本に、ビタミン・ミネラル・たんぱく質などをバランスよく摂ることで、体調管理や集中力の維持に役立ちます。

バランスの良い食事の例は以下の通りです。

● 主食:ごはん、パン、麺など(エネルギー源)
● 主菜:魚、肉、卵、大豆製品など(たんぱく質)
● 副菜:野菜、海藻、きのこなど(ビタミン・ミネラル・食物繊維)

まずは「毎食に3つの要素をそろえる」ところから始めてみましょう。
特別な料理でなくても、組み合わせを意識するだけで、健康への第一歩になります。

5-2無理なく朝食を習慣づける工夫を取り入れる

朝食は一日のリズムを整えるために重要で、無理なく続けられる工夫が必要です。

朝食を抜くと集中力や代謝の低下につながりやすく、体内リズムも乱れがちになります。
しかし、朝は忙しくて準備が難しいという人も多いのが現実です。

無理なく朝食を続けるために、以下のような工夫をしてみるのがおすすめです。

● 前日の夜に準備しておく(サンドイッチ・おにぎりなど)
● 飲み物+手軽な栄養食品(ヨーグルトやバナナ)で済ませる
● 毎朝同じメニューを決めておくと迷わず用意できる

最初から完璧を目指さず、少しでも体に栄養を入れるのが大切です。
自分に合った朝食スタイルを見つけて、気軽に取り入れていきましょう。

5-3家庭でできる食育を通して子どもの意識を育てる

家庭での食育は、子どもが食への関心や感謝の気持ちを育む大切な機会です。
食べ物の由来や調理への関わりを通して、子どもは食べることの意味や栄養の大切さを自然に学んでいきます。

家庭でできる食育の例は、以下の通りです。

● 一緒に食材を選んだり、調理に参加してもらう
● 野菜の切り方や味付けの変化を体験させる
● 食事の前後に「いただきます」「ごちそうさま」を伝える

日々の食事が、子どもの「食べる力」と「生きる力」を育てます。
無理のない範囲で、家族で食を楽しむ時間をつくりましょう。

日本の食生活の問題点に関するよくある質問

ここでは、よくある3つの疑問にわかりやすく答えながら、食生活の見直しにつながるヒントを紹介します。

● 加工食品ばかり食べると健康に悪いの?
● 肥満や生活習慣病の原因は食事にあるの?
● 食生活を改善するための実践的な方法は?

6-1加工食品ばかり食べると健康に悪いですか?

加工食品ばかりを食べ続けると、栄養の偏りや健康への悪影響が出る可能性があります。
加工食品は便利で手軽ですが、塩分や脂質、食品添加物を多く含むことが多く、ビタミンやミネラル、食物繊維が不足しがちのためです。

加工食品の食べすぎによって懸念される影響は以下の通りです。

懸念点 具体的内容
ナトリウムの過剰摂取 高血圧のリスク上昇
食物繊維の不足 便秘や腸内環境の悪化
栄養バランスの偏り 疲れやすさ、集中力の低下

加工食品はうまく取り入れれば便利ですが、主食・主菜・副菜を意識しながら、なるべく手作りや自然に近い食品を取り入れるようにしましょう。

6-2肥満や生活習慣病の原因は食事にありますか?

食事の内容や習慣は肥満や生活習慣病の大きな原因のひとつです。
高カロリーで栄養価の低い食事が続くと、エネルギーの摂りすぎや栄養素の偏りが生じ、体重の増加や糖尿病・高血圧などのリスクが高くなります。

以下のような食習慣が健康を損なう可能性があります。

懸念点 具体的内容
外食やファストフード中心 脂質・糖質過多になりやすく、体重増加や栄養の偏りの原因に
朝食を抜く 血糖値の急変動を招き、代謝が乱れる可能性がある
野菜不足 食物繊維やビタミンが不足し、便秘や免疫力低下につながる

生活習慣病を予防するには、日々の食事を見直し、栄養バランスを整えるのが大切です。
朝食をしっかり食べる、野菜を意識して摂るなど、小さな行動から始めましょう。

6-3食生活を改善するための実践的な方法は?

栄養バランスのとれた食事を意識し、無理なく続けられる方法を生活に取り入れることが改善の第一歩です。
極端な食事制限や一時的なダイエットではなく、毎日の食生活を見直し、継続できる習慣づくりが健康の維持に直結します。

食生活を見直す実践方法は、以下の通りです。

● 1日3食を基本に、主食・主菜・副菜をそろえる
● 野菜は1日350gを目安に摂取する
● 朝食を習慣づけて1日のリズムを整える
● 加工食品を減らし、できるだけ素材の味を活かす調理にする

食生活の改善は、身体だけでなく心の健康にもつながります。
無理のない範囲で少しずつ実践することが、長く続けるコツです。

毎日の食事を見直すことが、自分と社会の未来を守る第一歩

現代の日本人の食生活には、栄養バランスの偏りや食品ロス、環境への負荷など、さまざまな問題が潜んでいます。
こうした課題を放置すると、私たち自身の健康だけでなく、社会や地球環境にも悪影響を及ぼしかねません。

一人ひとりが食の選び方や食べ方を少しずつ見直すことで、生活習慣病の予防や食品ロスの削減、国産食材の活用による自給率向上にもつながります。

「何を食べるか」「どう食べるか」を意識すると、未来の健康と社会を守る第一歩となるでしょう。
まずはできることから、今日の食卓を少しずつ変えていきましょう。

日本インストラクター技術協会編集部
インストラクターの専門性を高めるためや地位向上を目的とした団体である日本インストラクター技術協会(JIA)編集部が運営するコラムです。
美容・健康・ボディケアの資格の筋トレインストラクター、シェイプアップインストラクターや骨格診断士。心理カウンセラー資格のメンタル心理インストラクター、子供心理カウンセラー®、音楽療法カウンセラーや行動主義心理アドバイザー®など様々な資格を認定しています。
日本インストラクター技術協会編集部