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食育の必要性|子どもから大人まで「食べる力」を育てる具体策を解説

記事作成日:2025.06.11
「食育の必要性って、よく聞くけれど実際に何がそんなに大切なの?」
そう感じている方も多いのではないでしょうか。

食育とは、単に「食事のマナーを教えること」ではありません。
現代の食生活には、偏食・孤食・栄養バランスの乱れなど、さまざまな課題が潜んでおり、健康への影響も見過ごせません。

この記事では、なぜ食育が必要なのか?をわかりやすく解説します。
また、年齢やライフステージに応じた具体的な食育の取り組みも紹介します。
ご家庭や教育現場で実践できるヒントも満載なので、ぜひ参考にしてください。
食育の必要性|子どもから大人まで「食べる力」を育てる具体策を解説

目次

食育とは?なぜ今、必要とされているのか

食育という言葉は広く知られるようになりましたが、その本質や、なぜ今あらためて必要とされているのかをご存じでしょうか。
現代は、食の環境が大きく変化し、子どもから大人までの健康に影響を及ぼす課題が数多く存在しています。

ここではまず、食育の基本的な定義や目的をわかりやすく解説します。

● 食育は「食べる力」を育てる生涯教育
● 偏った食生活と孤食の拡大が、食育の必要性を高めている

1-1食育は「食べる力」を育てる生涯教育

食育は「食べる力」を育てる生涯教育です。
食育は子どもから高齢者まで、あらゆる世代が健康的な食生活を実践するための土台となります。
たとえば、食育を通して身につく「食べる力」の具体例は以下の通りです。

● 子ども:五大栄養素の働きを学び、好き嫌いなく食べる力が育つ
● 学生:朝食の重要性や食のマナーを学び、生活リズムが整う
● 保護者:バランスの良い献立を考え、家庭の健康を支える力が高まる
● 高齢者:噛む力や栄養を意識し、年齢を重ねても体調を維持できる食生活を続けられる

食育は、「何を・どれだけ・どのように食べるか」を主体的に判断できる食べる力を育てるための、生涯にわたる教育なのです。

1-2偏った食生活と孤食の拡大が、食育の必要性を高めている

現代では、食生活の乱れや孤食が広がっており、こうした背景から「食育」の重要性がこれまで以上に高まっています。
コンビニやファストフードに頼った偏った食事や、家族で食卓を囲む機会の減少が、子どもの栄養不足や心の発達に影響を与えるためです。

具体的には、以下のような現状が挙げられます。

● 朝食をとらない家庭が増えている
● 野菜の摂取量が1日目標値(350g)に達していない
● 家族がそろって食事をする機会が週に数回以下という家庭も多い
● 食卓での会話が減り、子どもがマナーを学ぶ機会が少ない
● 「好きなものしか食べない」偏食傾向が年々強まっている

だからこそ今、子どもも大人も「食を学ぶ力」を身につけることが求められており、家庭・学校・地域が連携して食育を進めることがますます重要になっています。

年齢やライフステージごとに変わる「食育の必要性」と支援のあり方


食育の必要性は、年齢やライフステージによって大きく変化します。
子どもにとっての食育と、大人や高齢者にとっての食育では、その目的も支援の方法も異なるためです。

ここでは、ライフステージ別に「どのような食育が必要か」「どんな支援が求められるか」を、具体的に見ていきましょう。

● 幼児期(保育園・未就学児):食への興味と基本的生活習慣を育む
● 学童期(小学校):五感と実体験で「食べる力」を育てる
● 思春期(中学生・高校生):栄養管理と自己判断力の育成
● 成人期・家庭期:家族の健康を支える知識と実践

2-1幼児期(保育園・未就学児):食への興味と基本的生活習慣を育む

幼児期には、食への興味を育み、生活の土台となる基本的な食習慣を身につける食育が欠かせません。
保育園や家庭での食事体験は、子どもの味覚形成や生活リズム、健康意識の基礎となるためです。

具体的には、次のような取り組みが重要とされています。

● 食材に触れる・匂いをかぐなど五感を使った体験(野菜スタンプ、皮むき遊びなど)
● 「いただきます」「ごちそうさま」などの食事マナーを習慣づける
● 一緒に配膳をする・机を拭くなど、食事の準備に関わる機会をつくる
● 好き嫌いを責めず、「食べる楽しさ」を伝える声かけ
● 絵本や紙芝居を使って「食べ物ができるまで」を学ぶ

日々の小さな積み重ねが、「食べることは楽しい」という気持ちと、健康的な食習慣の基礎を育てていきます。

2-2学童期(小学校):五感と実体験で「食べる力」を育てる

学童期には、五感と実体験を通じて「食べる力」を育むことが重要です。
小学生は知識を吸収しやすく、日常の経験から食への理解と関心を深められる時期のためです。

学童期に適した食育の取り組みは、以下のようなものがあります。

● 給食の献立表示や食材の産地紹介を通じて、食の背景に目を向ける
● 校内での栽培活動や調理実習を通じて、「育てる・作る・食べる」の一連の流れを体験する
● 地産地消や食品ロスについて考える総合的な学習
● 行事食や地域の食文化を学ぶことで、季節感や伝統への理解を育てる
● 栄養バランスや適切な食事量を学び、自分の健康を自分で守る意識を養う

体験を重ねることで、子どもたちは単なる知識ではなく、実生活に活かせる「食べる力」を身につけていきます。

2-3思春期(中学生・高校生):栄養管理と自己判断力の育成

思春期には、栄養管理と自己判断力を育てる食育が必要です。
この時期は心身の成長が著しく、自分で食を選び、生活習慣をコントロールする力が求められます。

思春期に適した食育の実践例は、以下の通りです。

● 朝食欠食のデメリットや必要な栄養素を学ぶ
● 献立作成や調理実習で、バランスの良い食事を自分で考える経験を積む
● フードマイレージや食品ロスなど社会的課題に触れ、食と環境のつながりを理解する
● 食品表示や原材料表記を読み取り、安全で健全な食品を選ぶ力を養う
● スマホ・SNSとの付き合い方も含めた「ながら食い」や孤食のリスクに気づく機会を設ける

食育での学びを通じて、中高生は「自分の健康を自分で守る」視点と行動力を身に付けられるでしょう。

2-4成人期・家庭期:家族の健康を支える知識と実践

成人期には、家族全体の健康を支えるための食育が重要です。
この時期は、自分だけでなくパートナーや子ども、高齢の親など、複数の家族の食生活を担う立場になるためです。
健康的な食事の知識と、それを日常生活で実践できる力が、家庭の健やかな暮らしを支える基盤になります。

具体的な実践例は、以下の通りです。

● 食事バランスガイドを参考にした献立の設計
● 子どもと一緒に買い物・調理・片付けを行う「共食」の習慣づくり
● 忙しい生活の中でも、冷凍食品や惣菜を上手に取り入れた栄養管理の工夫
● 食物アレルギーや生活習慣病への対応力を身につける
● 家族のライフスタイルに合った無理のない健康づくりの意識づけ

家庭内での「食の会話」を増やし、家族の絆や健康意識を高めることにつながります。

2-5高齢期:健康寿命を延ばす食の選択と社会参加

高齢期には、食を通じて健康寿命を延ばし、社会とのつながりを保つことが重要です。
年齢を重ねると、噛む力や消化機能の低下、食欲の減退などから、栄養バランスが崩れやすくなります。
フレイル(虚弱)や生活習慣病のリスクが高まりやすくなるため、適切な食の選択が欠かせません。

例えば、以下のような取り組みが効果的です。

● 食べやすく栄養価の高い食材や調理法を取り入れる
● 高齢者向けの配食サービスを利用し、栄養不足を防ぐ
● 地域の料理教室や食事会に参加して交流を図る
● 家族と一緒に食事をする機会を増やし、孤食を防ぐ

日々の工夫により、高齢期でも健康で自立した生活を続けやすくなり、心身の健康維持に役立つでしょう。

食育を通じて育てたい「食の自立」とは?


● 自分に合った食を選び、健康を守る力
● 知識・実践・選択力を育てる

3-1自分に合った食を選び、健康を守る力

食育を通じて最も育てたいのは、自分に合った食を選び、健康を守る力です。
現代は情報や食品の選択肢が豊富な一方で、自分にとって本当に必要な食事がわからず、健康を損なうケースも少なくありません。
そのため、年齢・体調・生活習慣に応じた食の判断力が求められます。

「食の自立」を支える主な実践例は以下の通りです。

● 健康診断結果をもとに、必要な栄養素を意識した食事をとる
● 忙しい日でも、外食の中からバランスのよいメニューを選ぶ
● 食品表示や原産地を見て、安心・安全な食材を選ぶ
● アレルギーや持病に合わせた食生活を自分で調整する

年齢・体調・生活習慣に応じた食の判断力が身に付くと、自らの健康を主体的に守り続けられるようになります。それこそが、食育が目指す「食の自立」のゴールなのです。

3-2知識・実践・選択力を育てる

食育では、「知識・実践・選択力」の3つをバランスよく育てることが重要です。
ただ知識を詰め込むだけでは、日常生活で活かせないためです。
実際に体験し、自分に合った食を選び取る力を身につけてこそ、本当の「食べる力」が育ちます。

それぞれの力を育てる具体的な取り組みは以下の通りです。

項目 具体的内容
知識 栄養素や食品のはたらきを学び、体に必要なものを理解する
実践 調理実習や家庭での手伝いを通じて、食事作りのプロセスを経験する
選択力 コンビニや外食の場面で、自分に合った食事を選ぶ練習をする

この積み重ねが、子どもにも大人にも必要な自分で健康を守る力を育てる基盤になります。

現代の食生活に潜む課題と、食育が果たす役割

現代の日本では、ライフスタイルの多様化や核家族化の影響により、家庭の食環境が大きく変化しています。

こうした課題に対して、日常生活の中で「食べることの意味」を学び、正しい食習慣を育むための手段として、改めて食育が注目されています。
ここでは、現代の食生活が抱える具体的な問題と、食育が果たす役割をわかりやすく解説します。

● 多様な「こ食」が生む、食生活の偏りと孤立
● 食の乱れが子どもの健康に及ぼす影響
● 日々の食卓が、もっとも身近な食育の場になる

4-1多様な「こ食」が生む、食生活の偏りと孤立

現代では「こ食」と呼ばれる問題が広がり、子どもたちの食生活に偏りと孤立をもたらしています。
こ食が進行すると、家族や社会とのつながりが希薄になり、心身の健康にも悪影響を及ぼす恐れがあるためです。

具体的な「こ食」の種類と影響は、以下の通りです。

種類 意味
孤食 ひとりで食べる
個食 家族が別々のものを食べる
固食 特定のものばかりを食べる
小食 食べる量が極端に少ない
濃食 味つけが濃い食事が多い
粉食 パン・麺など粉もの中心の食生活

この課題に対し、食事の意味を知り、正しく食べる力を育てることで解決の糸口となります。

4-2食の乱れが子どもの健康に及ぼす影響

食の乱れは、子どもの心身の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
現代の子どもたちは「こ食や偏った食習慣にさらされやすく、栄養バランスの乱れが集中力の低下や肥満・やせすぎといった健康問題を引き起こすケースも増えています。

例えば、以下のような影響が見られます。

食の乱れの例 具体的な状況 子どもへの主な影響
朝食をとらない 忙しさや習慣の欠如で朝食を抜く 集中力・学力の低下
体力不足
野菜不足・
高脂肪食
加工食品中心、野菜摂取が少ない 生活習慣病(肥満・高血圧など)のリスク上昇
固偏食・
濃い味付け食
特定の食品ばかりを好む、味付けが濃い 味覚の発達遅れ
咀嚼力の低下
孤食
(一人での食事)
家族と一緒に食事をとる機会が少ない 食事マナーの習得不足
コミュニケーション能力の低下
食事時間が
不規則
就寝・起床が遅く、決まった時間に食べない 生活リズムの乱れ
内臓や代謝機能への負担

リスクを防ぐには、家庭や学校での適切な食育が欠かせません。
子どもの将来の健康と自己管理能力を育てるためにも、日々の食生活の見直しが第一歩です。

4-3日々の食卓が、もっとも身近な食育の場になる

日々の食卓は、家庭でできる最も身近な食育の場です。
家族と一緒に食事をすると、子どもは自然と食事のマナーや栄養バランス、感謝の気持ちなどを学べるためです。

日常の食卓で実践できる食育の工夫は、以下の通りです。

● 配膳や片付けを一緒に行うことで、食事の流れを体感できる
● 食材や献立について会話を交わすことで、興味や知識が深まる
● 家族全員で「いただきます」「ごちそうさま」を言うことで、命や作り手への感謝を育てられる
● 好き嫌いについて話し合うことで、多様な食の大切さを知る
● 食事中の会話を通じて、コミュニケーションの習慣が身につく

特別な準備がなくても、毎日の食卓を大切にすることが子どもの食べる力を育てる食育につながります。

食育を日常に取り入れるためにできること

食育は、特別な教材や時間がなくても、日常生活の中で無理なく実践可能です。

ここでは、毎日の生活の中に食育を取り入れるための具体的な方法と、その実践例をご紹介します。
今日からでも始められる内容ばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。

● 「食事バランスガイド」で毎日の献立を見直す
● 調理・会話を通じて日常に食育を取り入れる
● 地域・学校・企業との連携で食育を社会に広げる

5-1「食事バランスガイド」で毎日の献立を見直す

「食事バランスガイド」を活用すれば、毎日の献立を栄養バランスのとれた内容に見直すことができます。

バランスガイドは、主食・主菜・副菜・牛乳・果物の適切な割合を視覚的に示しており、誰でも簡単に健康的な食事を組み立てられるためです。

「食事バランスガイド」を活用する具体的な方法は以下の通りです。

活用方法 内容
主食・主菜・副菜をそろえる ごはん+焼き魚+野菜炒めなど、基本の組み合わせを意識
回転するコマの図を確認 1日の食事バランスが整っているか視覚的にチェックできる
不足しがちな食品を補う 果物や乳製品が不足しがちなときは間食や朝食で補う
子どもと一緒に考える コマを見ながら今日のメニューを一緒に決める習慣づけ

食事バランスガイドを参考にすると、日々の献立づくりが簡単になり、家族全員の健康づくりにもつながります。

5-2調理・会話を通じて日常に食育を取り入れる

日々の調理や食事中の会話は、家庭で自然に食育を実践できる大切な機会になります。
料理の手伝いや食卓での会話を通じて、子どもは食材への関心を高めたり、食にまつわる知識やマナーを学んだりできます。

調理や会話を活用した家庭での食育実践例は以下の通りです。

シーン 取り入れ方 育まれる力
調理の手伝い 野菜を洗う
皮をむく
盛り付ける
食材への関心
食の大切さの理解
メニュー決め 一緒に献立を考える 栄養バランスの意識
計画力
食事中の会話 食材の名前
産地を話す
味の感想を共有
言葉で伝える力
家族との絆
買い物体験 スーパーで旬の野菜を探すい 季節感
選ぶ力
配膳・片付け 食器の準備
後片付けを手伝う
マナー
役割意識

特別な準備がなくても、毎日の家庭の中でできる調理や会話を通じた取り組みが、子どもの「食べる力」を育てる効果的な食育となります。

5-3地域・学校・企業との連携で食育を社会に広げる

地域・学校・企業が連携することで、食育は家庭の枠を超え、社会全体で子どもたちを育てる取り組みへと広がります。

さまざまな立場の人が関わると、実生活に即した学びが提供され、子どもたちの関心や視野が大きく広がるためです。

実際に行われている連携による食育の取り組みは以下の通りです。

連携先 具体的な取り組み 学びのポイント
地域
(農家・漁師など)
農業体験
収穫体験
地元食材を使った調理
生産の苦労や季節感を体感
学校 地産地消の給食
栄養教諭による指導
出前授業
栄養の知識
マナー
環境への配慮
企業
(食品メーカー・
小売店など)
食品工場見学
商品開発体験
食育イベント
食品の流通や安全性への理解
行政・自治体 食育講座の開催
パンフレット配布
地域課題への関心
正しい情報リテラシー

多様な主体と連携した食育活動は、子どもたちに「社会とつながる食」の視点を育み、持続可能な食生活を支える基盤となります。

未来の健康を育むために、今日からできる食育を始めよう

食育は、食事のマナーや知識を教えるだけの活動ではありません。
自分の体や暮らしに合った食事を選び、健康を守る「食べる力」を育てる、生涯にわたる学びです。

現代の日本では、偏食や孤食、食習慣の乱れが深刻化し、子どもから大人まで多くの人が食に課題を抱えています。
だからこそ今、家庭や学校、地域や企業など、社会全体で食育を進めることがますます大切になっています。

でも、難しく考える必要はありません。
いつもの食卓で、ちょっとだけ意識してみることから始めてみましょう。

● 一緒に食卓を囲んで「いただきます」と言ってみる
● スーパーで旬の食材を親子で選んでみる
● 今日は何を食べた?と会話をしてみる

日々の小さな積み重ねが、「食べる力」を育てる第一歩になります。

食卓は、毎日できる食育の場です。まずはできることから、一緒に取り入れていきましょう。

日本インストラクター技術協会編集部
インストラクターの専門性を高めるためや地位向上を目的とした団体である日本インストラクター技術協会(JIA)編集部が運営するコラムです。
美容・健康・ボディケアの資格の筋トレインストラクター、シェイプアップインストラクターや骨格診断士。心理カウンセラー資格のメンタル心理インストラクター、子供心理カウンセラー®、音楽療法カウンセラーや行動主義心理アドバイザー®など様々な資格を認定しています。
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