糠(ぬか)漬けは、日本古来からの伝統的な漬物の一つです。
主原料として、米ぬかを使い、さまざまな野菜を漬け込む方法として確立してきました。 精米する前の米の外皮部分が該当しますが、ここには、ビタミン・ミネラルなどが豊富に含まれているのが特徴です。
ぬかを使用し、野菜に独特の風味と栄養も加えられ、腸内環境改善・美肌などのさまざまな健康的な効果が期待できます。
ここでは、ぬか漬けの基本的定義について解説していきましょう。
ぬか漬けとは、米ぬかを利用した漬物の総称です。
米ぬかに塩や水を加え「ぬか床」を作り、そこへ野菜などを漬け込んで完成させます。
ぬかによる発酵は、野菜の保存性を高めて、風味や栄養価をさらに向上させることができるでしょう。
ぬか漬けの最大の特徴は、米ぬかが主原料である点です。
米ぬかには、ビタミンB群・ビタミンE・ミネラル・食物繊維が含まれ、発酵することによって漬け込んだ野菜にも反映されます。
発酵が進むと、乳酸菌や酵母も増殖し風味も豊かにしてくれるのも特徴です。
ぬか漬けの心臓部ともいえる存在は「ぬか床」です。
主原料となる米ぬかを使い、発酵できる環境を形成させる場所を指します。
ぬか床は、時間経過に伴って発酵し、微生物を活発化させて、野菜に特有の風味を加える効果があるのです。
米ぬかを作るおもな材料は、米ぬか・水・塩・昆布・唐辛子などが基本です。
これらの材料が混ざり合うことで、絶妙なぬか床が次第に出来上がっていきます。
ただし、良質なぬか床にするためには管理が重要となり、必ず毎日かき混ぜる必要性や、温度・湿度の管理が大切です。
適切なぬか床を作り上げるためには、適度な手入れを続けながら、自然発酵が健全におこなわれるよう管理する必要があります。
ぬか漬けでは、多くの種類の野菜を漬け込むことが可能です。
日本では昔から、以下のような野菜を中心に、ぬか床に漬けてきました。
● きゅうり
● 大根
● 人参
● なす
● キャベツ
他にも、ごぼう・かぼちゃ・たけのこ・じゃがいもといった固めな野菜でも、一度茹でた上で漬けることで、えぐみがなく美味しく仕上がるでしょう。
よって、ほとんどの野菜がぬか漬けにできると思ってよいでしょう。
ただし、あまり向いていない野菜もあります。
例えば、にがうりや・チコリ・ねぎなどの苦みの強い野菜、水分が多い大粒トマト・新玉ねぎはおすすめできません。
ぬか漬けの理想的な漬け込み時間は、野菜の種類や好みによって異なってきます。
平均すれば、数時間から数日間が一般的です。
主な野菜の基準としては以下のような時間数となるでしょう。
● きゅうり・・・10~12時間で浅漬け
● 大根・・・判割りの場合は約12~24時間、厚さ1cmで約4~6時間
● アボカド・・・約4〜12時間程度
● かぶ・・・約6時間で浅漬けになる
とくに短時間で漬けた種類は「浅漬け」と呼ばれます。
長時間漬ければ漬けるだけ、濃厚な味に変化していくのが特徴です。
ぬか漬けには、発酵食品としての複数の栄養素が含まれています。
おもなものとしては植物性乳酸菌・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・カリウム・ビタミンEなどです。
中でも、ビタミンB1の豊富さが顕著で、野菜を漬けることによって、さらなる栄養価が引き出されるとされています。
では、ぬか漬けに秘められたおもな栄養素について解説していきましょう。
ぬか漬けには、野菜が使われることもあり、食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維には、腸内環境を整える効果など消化器系の健康サポートが期待できるでしょう。
腸内の掃除を果たし老廃物を吸着、やがて便として排出させます。
また、血糖値の急上昇を抑え安定させる効果も考えられるので、糖尿病予防に寄与するでしょう。
ぬか漬けには、カルシウム・鉄・マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれているので、骨や血液の健康サポートにも効果的です。
骨の健康維持に欠かせない栄養素とされています。
他にも、鉄分が豊富に含まれていることで、貧血の予防にもなるとされているのです。
ぬか漬けは、発酵プロセスによって、ビタミンE・ポリフェノールなどの抗酸化物質が増えていくことがわかっています。
抗酸化物質は、体の老化防止に役立ち、体内の活性酸素の除去や細胞の老化を防ぐのが特徴です。
また、美肌効果も期待できるとされています。
ぬか漬けには、ビタミンB1やB2などが含まれており、エネルギー代謝・神経機能の維持・疲労回復に役立ちます。
ビタミンB1は炭水化物の代謝を助け、ビタミンB2は脂質やタンパク質の代謝をサポートする役目で、皮膚や粘膜の健康に効果的です。
他にも、ビタミンB6がアミノ酸の代謝に関与することで、脳機能をサポートします。
ぬか漬けに含まれるビタミンEは、強力な抗酸化作用が期待できるでしょう。
細胞の老化を防ぐ効果があります。
皮膚の細胞を保護する作用が期待されていて、健康な肌を保つことができるでしょう。
また、血行促進の作用があり、血液の流れの改善が図れて、冷え性の人におすすめです。
実は、ぬかそのものはビタミンCの含有量が希薄です。
ところが、野菜などの他の食材をぬか漬けすることで、ビタミンCの補完ができるとされています。
ビタミンCは、免疫機能維持の役割があり、白血球の働きを高め、病気に対する抵抗力を高めることができるでしょう。
また、コラーゲン生成を助け、皮膚や血管の健康に役立ちます。
もしビタミンCを効率よくぬか漬けに応用するのであれば、食材選びがポイントです。
ぬか床へ、ビタミンCを豊富に含む食材を漬け込みます。
おもな野菜としては、ブロッコリー・赤ピーマン・ほうれん草などがおすすめです。
もし果物であれば、キウイフルーツ・オレンジ・いちごなどがよいでしょう。
栄養バランスを考える上でも、日常の食事にぬか漬けを取り入れることをおすすめします。
ぬか漬けは発酵食品であることから、乳酸菌が多く含まれています。
乳酸菌は腸内フローラを改善し、消化に良い働きをしてくれる栄養素です。
ぬか漬けは、発酵食品として腸内環境の改善・免疫力向上・美肌・疲労回復・便秘解消など様々な健康効果が期待できるでしょう。
これらは、ぬかに含まれている植物性乳酸菌・ビタミンB群・カリウムなどの栄養素によってもたらされているものです。
ここでは、ぬか漬けに期待できそうな、具体的な健康に寄与する効果について解説していきます。
ぬか漬けの植物性乳酸菌は、腸内環境改善のために役立ちます。
乳酸菌が腸内にて善玉菌を増やすので、腸内フローラのバランスを整えるからです。
ぬか漬けに含まれる乳酸菌は善玉菌の一種とされ、悪玉菌の増殖を抑制して環境を改善してくれるでしょう。
そのため、下痢の予防や便秘などの解消が期待できます。
腸内フローラとは、腸内に生息する微生物の集合体です。
フローラのバランスを保つのに乳酸菌は大きな力を発揮するとされています。
腸内フローラが整うと、消化吸収が改善し栄養の吸収効率が向上するでしょう。
また、免疫機能の強化にもつながります。
とくに腸管の免疫機能が強化されることで、結果的に全身の免疫力が向上するようです。
ぬか漬けは、美肌への改善も期待できるでしょう。
ぬかに含まれるビタミンや抗酸化物質は、肌の健康サポートを促すからです。
ビタミンEの効果は強力で、抗酸化作用があるので肌の健康維持に役立ちます。
そのため、シミ・シワ予防や紫外線・酸化ストレス対策にもなるとされているのです。
他にも、ビタミンEには、肌のバリア機能強化と保湿効果を高める作用が期待できます。
ぬか漬けには、抗酸化作用を促すビタミンC・ポリフェノールなども含まれています。
これらの物質が、体内にて起こる活性酸素を除去するため、肌の老化防止などになるとされているのです。
他にも、炎症の軽減が期待され、ニキビ予防・肌荒れ対策にもつながるでしょう。
ぬか漬けは、低カロリー食品としても知られ、かつ栄養価が高いことから、ダイエットに最適な食品でもあります。
食物繊維が豊富に含まれ、満腹感が得やすいでしょう。
しかも、漬け込む食材のほとんどは野菜を基本にするので、ビタミン・ミネラル・食物繊維などを効率的に摂取できます。
カロリーを気にせず摂取できるので、ダイエット中の栄養補給にはぴったりです。
ぬか漬けには乳酸菌・ビタミン・ミネラルが多く含まれていることで、免疫力向上効果が期待できます。
乳酸菌は腸内環境を整えることや、風邪やインフルエンザなどの感染症の予防に役立つでしょう。
また、腸内の免疫バランスが整えば、アレルギー症状の緩和が期待できるとされています。
ビタミンやミネラルが豊富に含まれていることで、免疫細胞の機能の向上にもなるでしょう。
他にも、亜鉛などの必要なミネラルがあり、さらに免疫力の向上に寄与します。
ぬか漬けの抗酸化物質により、活性酸素の除去を促進して細胞のダメージを防ぐことも可能です。
できる限り日常の食事に取り入れると、それらの恩恵をを享受できます。
ぬか漬けは栄養素が豊富でメリットが多い食品です。
また保存が利くことも大きいといえるでしょう。
しかし、その分だけ食べる際に注意点が目立っています。
おもには塩分摂取量、表面にできる白い膜(産膜酵母)、ぬか床の管理等があげられるでしょう。
恒常的に適切な管理や注意をしていくことが大切です。
ここでは、おもなぬか漬けの注意点を解説します。
ぬか漬けでの注意点として最も気が抜けない作業が、ぬか床の管理です。
ぬか床は、毎日かき混ぜて酸素を全体に供給させることで雑菌の繁殖を防ぎます。
ぬか床には乳酸菌が繁殖することもあり、清潔な環境を整えることで、カビや有害な菌が繁殖を防ぐことができるのです。
そのために、ぬか床は毎日かき混ぜつつ、臭いが強いと感じ始めたら、新しいぬかを加えるなどの手間を掛けます。
この作業を怠ってしまうと、雑菌が繁殖しやすくなり苦みが生じるなどのダメージになってしまうのです。
ぬか床を作ると決めた以上は、ぬか床の管理を必ずおこなうと自覚しなくてはなりません。
ぬか漬けは栄養素が豊富に含まれた健康食品です。
ただし、塩分が高めなことがデメリットになっています。
食べる際には、塩分過多にならないための注意が必要です。
高血圧や腎臓病などの持病があるようなら、塩分を控えめにするよう、少量ずつ食べるようにしましょう。
ぬか漬けには、さまざまな野菜を使うことが可能です。
そのため、どのような野菜を使うべきか、最初に配慮しておくことが重要です。
特定の食材に関するアレルギー体質がある人にとっては、危険な場合が考えられます。
ちなみに、ぬか床そのものには、小麦や大豆などと同様なアレルギーの原因となる要素が含まれていることも、念頭に入れておかなければなりません。
また、扱う食材自体は新鮮であることを確認しましょう。
ぬか床へ漬ける前には、野菜をしっかりと洗浄しておくことが大切です。
ぬか床は、しっかりとした管理をしていれば、半永久的に使用することができるでしょう。ところが、管理方法を誤ってしまうと使えなくなります。
ぬか床が駄目になるサインとしては、色・匂い・食感の変化・カビの発生などから判断できるでしょう。
本来であれば、明るい茶色のぬか床ですが、黒ずみや灰色になっていたら注意です。
カビが生えている場合は、刺激臭や腐敗臭がします。
また、水分が多すぎる・少なすぎる、酸っぱさや苦みなどを感じたら、ぬか床に原因があるでしょう。
そうならないためには、毎日ぬか床の状況を確認しながら、かき混ぜることや加える作業が重要です。
ぬか漬けにできる食材は豊富にあり、中でもきゅうりやなすなどは美味しい定番です。
しかし、せっかくぬか床を作ったら、バラエティに富む食材に挑戦してみたくなることでしょう。
毎日食べられそうなぬか漬けが完成すれば、腸内環境や美肌効果などへ、習慣として影響があるかもしれません。
ここでは、ぬか漬けにしたら美味しいおすすめの意外な野菜や食材を解説します。
ぬか漬けの定番として名高いきゅうりに近いものとして、白瓜などウリ科の食材は相性が合うとされています。
中でも、ズッキーニはぬか漬けにしても美味しい食材です。
ズッキーニのよさは、きゅうりよりも身の詰まりがあり、シャキシャキとした食感がわかる点ではないでしょうか。
ズッキーニのぬか漬けの方法は、以下のような手順です。
● ズッキーニを縦半分に切る
● 軽く塩もみしてぬか床に入れる
● 12時間くらい漬け込む
● 食べる直前にぬかを洗う
余計な手間はなく、普通に漬け込むだけです。
また、ぬかを洗い落とさずそのまま食べても栄養価があります。
パプリカも、ぬか漬けするのに最適な野菜の一つです。
一般的な野菜では、ぬかに漬けておくと変色しますが、パプリカは鮮やかな色のまま保てるのがメリットで、食感も程よくしんなりします。
乳酸菌の酸味がひと違っていて、独特なテイストが人気です。
漬け込む時間も、6時間程度で完成します。
休みの日などは、ぬか床に仕込んで夕食用に食べられるでしょう。
パプリカのぬか漬けの作り方は、以下のような手順です。
● パプリカを縦半分に切る
● 種を取って軽く塩もみしてからぬか床に入れる
● 約6時間ほど漬け込む
● ぬかを洗い落として完成
通常では、アスパラガスを生で食べる習慣はあまりないものですが、実はぬか漬けすれば、生のままでも食べられるようになるので不思議です。
普段は火を通さないと食べない野菜でも、生の状態で食べれるようにしてしまうのが、ぬか漬けのメリットでもあります。
野菜の酵素もそのまま摂取できるでしょう。
アスパラガスのぬか漬けの作り方は、以下のとおりです。
● アスパラガスを生のまま切らずに使用
● 軽く塩もみしてからぬか床へ入れる
● 食べる時にぬかを洗い落とせば完成
意外なところでは、アボカドがぬか漬けで美味しくなるということです。
最初は違和感があるかも知れませんが、実際に試すと濃厚さが増し、チーズのような味わいになります。
ただ、ぬか漬けすると柔らかくなるため、固めのアボカドを選ぶのがコツです。
茶色に変色はしますが、味わいに影響はなく、むしろ美味しく仕上がるでしょう。
おつまみにもぴったりで美味しすぎると高評価が目立ちます。
アボカドのぬか漬け方法は、以下のような手順です。
● アボカドを半分に切って皮をむく
● 種を取ってキッチンペーパーに巻いてぬか床に入れる
● 約12時間漬け込めば完成
ぬか漬けの印象としては、野菜を漬けるものというイメージが先行しがちです。
ところが、ぬか漬けできる食材は、野菜だけとは限りません。
ゆでたまごをぬか漬けにすると、絶妙な美味しさに変わるので、病みつきになる人もいると聞きます。
アボカドと同じような、濃厚なチーズの味わいに似ているから不思議です。
さらに酸味が加わり、まるでマヨネーズのような風味がするとされています。
水分が抜けて縮む分だけ、旨みも凝縮されているようです。
ゆでたまごのぬか漬け方法は、以下のような流れを汲みます。
● 卵を半熟もしくは固茹でに茹る
● そのままぬか床へ入れる
● 約12時間漬け込む
● ぬかを洗い落として完成
意外な食材として、豆腐もぬか漬けが可能です。
豆腐の漬け方は、以下のように進めます。
● 木綿豆腐を5cm格の正方形に切る
● キッチンペーパーでしっかりと水気を取る
● ぬか床に入れて冷蔵保管を2日する
● 常温保管で1日すれば完成
美味しく仕上げるポイントは、水分をしっかりと抜くことです。
水気を早めに取りたい場合、キッチンペーパーに包み、お皿などの重しを載せて1日寝かせてみましょう。
伝統的な発酵食品として知られるぬか漬けには、多くの健康効果が期待されています。
米ぬかを使いさまざまな食材を漬け込むことができ、腸内環境改善・美肌・ダイエットサポート・免疫力向上などの多岐にわたる相乗効果を生むようです。
適切な摂取方法に従えば、効果を最大限に引き出せます。
過多に塩分摂取をしないよう、ぬか漬けを日常の食事に取り入れていきましょう。