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海外発酵食品の保存性と世界への広がり

記事作成日:2025.09.16
日本では、発酵食品が盛んに作られてきた食文化があります。
しかし、同様に、世界中を見渡してみると、各国で幅広く発酵食品は親しまれてきたことも現実です。
各国によって発酵食品は、その種類や特徴が大きく異なります。
海外で生まれた発酵食品のいくつかの種類の中には、既に日本にも紹介されてすっかり親しまれているものもたくさんあるのです。
もしかすると、発酵食品とは知らずに食べているものもあるかもしれません。
発酵食品とはどのような特質があるのか理解を深めていくと、今まで以上に食生活も楽しくなることでしょう。
本記事は、海外の発酵食品の種類や特徴を中心に解説します。
さらに発酵食品を楽しみたいという人は、ぜひ参考にしてみてください。
海外発酵食品の保存性と世界への広がり

目次

発酵食品の歴史

発酵食品の歴史はかなり古く、古代の人類にとっても重要な意味をなしていました。
やはり、保存性の高さや豊富な栄養価が、多くの文化圏にて重宝されてきたのでしょう。
ここでは、発酵食品の歴史について振り返っていきます。
メソポタミア文明でのワイン醸造から始まり、世界中に発酵食品が普及していった経緯について解説します。

1-1発酵食品の始まりはメソポタミア文明

発酵食品の発祥は、メソポタミア文明にまで遡るとされています。
紀元前6000年頃の現在のイラク地域に位置した地帯で、ワインの醸造から始まりました。
チグリス・ユーフラテス川の流域であることで、肥沃な土地と温暖な気候がブドウ栽培に適していることが理由です。

1-2なぜワイン作りが始まったのか

メソポタミア文明でワインが作られたのは、偶然によるものだという説が濃厚です。
ブドウを保存するために壺に入れていたら、自然発酵が起こってアルコール飲料が生成されるのを知ったことによります。
酵母菌が、ブドウの糖分をアルコールと二酸化炭素に変える現象を発見し、それ以来、ワインがメソポタミア文明の重要な産物となっていきました。
宗教儀式・医療・日常生活など、利用価値が高まっていったとされています。
これらの経緯は、メソポタミア分もの遺産である楔形文字で記された文献に記され、ワインの製造方法や貯蔵方法の詳細が書かれていたのです。
当時の人々が、ワイン醸造の技術を既に得ていたことが分かっています。
また、ワインを通じた周辺地域との文化交流もおこなっていたようです。

1-3チーズの歴史はどこからか

発酵食品の代表格ともいえるのがチーズです。
実はチーズの発祥地を示す決定的証拠は、今現在のところ確定されていません。
有力候補としては、ヨーロッパ・中央アジアあるいは中東などです。
紀元前5500年頃のポーランドにおけるスウィデリアン文化時代の遺物として、チーズづくりに活用された道具らしきものが発見され、現在のところ最も古いチーズ製造の証拠ともされています。
また、約4000年以上前に遡れば、砂漠の商人がラクダの背中に羊の胃袋で作った水筒をくくりつけていて、その中の乳を飲もうとしたところ固まっていたとされ、食べたら美味しかったのがチーズの始まりだという説もあるようです。

1-4パンの歴史とは

日常生活ですっかり定着した食品の一つである、パンも発酵食品です。
パンの歴史も、約8000年〜6000年ほど前の古代メソポタミアが発祥とされています。
ただしこの頃のものは、小麦粉を水でこねて、焼いたものを食べていました。
やがて、古代エジプトにもパンの製法が伝わり、偶然によって発酵いよるパンが誕生したとされています。
古代ローマ時代になると、古代エジプトから古代ギリシャ経由により、パン作りが伝えられ、さらに製パン技術が発展し、専門のパン職人が登場しました。
ブドウ液から作られたパン種も使われ、量産体制に入った最初の頃だとされています。
そしてアジア諸国・アフリカにも伝えられ、世界各地に広がりました。

1-5日本の発酵食品の歴史

日本の発酵食品の歴史として、味噌・醤油があげられるでしょう。
味噌や醤油のルーツとして、醤(ひしお)と呼ばれるものが存在します。
醤は、食塩を混ぜた保存食で、醪(もろみ)のようなものです。
原始時代の中国にて、狩猟民族が肉と食塩を混ぜた肉醤(ししびしお)を作っていたとされ、やがて草と食塩を混ぜた草醤(くさびしお)、魚と食塩を混ぜた魚醤(うおびしお)などが登場しました。
そして、人類が農耕を始めるようになり、穀物を使う穀醤(こくびしお)が誕生します。
穀醤の製造方法は、仏教伝来と同時に日本に伝えられ、未醤(みしょう)となり、室町時代には味噌に変換されました。

発酵食品で使われるおもな菌について

発酵食品として対応するおもな菌類にはさまざまな種類がありますが、代表的なものとして麹菌・酵母菌・乳酸菌・納豆菌・酢酸菌などがあげられるでしょう。
食品の風味や栄養価を高めながら、保存性を向上させる働きがあります。
では、さらに詳しく発酵食品用の菌類について解説していきます。

2-1酵母菌の役割と影響

酵母菌は、発酵食品の製造を担う微生物です。
糖分をアルコールと二酸化炭素に分解する役目があり、数多くの種類が存在します。
伝統的なものとしては、パンを膨らませる効果を持っています。
酵母菌の種類には、サッカロマイセス・セレビシエ、カンジダ・ミレリなどがあり、それぞれに特徴的です。
サッカロマイセス・セレビシエは、パン・ビール・ワインの製造に利用される酵母菌で、アルコール発酵をします。
そのため、独特の風味と香りを感じるでしょう。
カンジダ・ミレリは、天然酵母パンの発酵に使用される酵母菌です。
酸性の環境下でも活動できるとされ、酸味を作り出します。

2-2乳酸菌の役割と影響

乳酸菌は、発酵食品の代表的な菌類です。
糖分を乳酸に変える乳酸発酵により、食品の保存性を高め、風味を向上させます。
乳酸菌にも多くの種類があり、例えばラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプトコッカス・サーモフィルスなどが代表的です。
ラクトバチルス・ブルガリクスは、ヨーグルト製造に使用することで知られています。
乳糖を乳酸に変え、ヨーグルト特有の酸味を与えるのが特徴です。
腸内環境を整え、消化を助ける効果が期待できます。
ストレプトコッカス・サーモフィルスも、ヨーグルト発酵のための乳酸菌です。
ヨーグルトの製造では、これらのラクトバチルス・ブルガリクスとストレプトコッカス・サーモフィルスが共生して発酵を始め、乳糖を乳酸に変換しヨーグルト特有のテクスチャが生まれます。
他にも、キムチを作る際にも乳酸菌で発酵させます。
白菜や大根などの野菜を塩漬けし、乳酸菌による発酵で独特の風味を発するのが特徴です。
腸内環境を整える効果が期待できるでしょう。

2-3麹菌の役割と影響

麹菌は、日本の発酵食品を生成してきた微生物です。
酵素がでんぷんやタンパク質を分解し、食品の旨味や風味・栄養価を高めます。
腸内環境の改善や疲労回復、美容促進に効果的です。
麹菌は、味噌・醤油・日本酒・みりんなどの発酵食品の製造に用いられます。
また、麹菌が生成するオリゴ糖は、腸内にある善玉菌のエサとなって活性化させる効果があり、腸内環境を整えるのに役立つでしょう。

2-4納豆菌の役割と影響

納豆菌とは、納豆の発酵に関わる菌です。
納豆菌の役割としては、腸内環境の改善に役立ち、生きたまま腸で善玉菌を増やします。
便秘解消・肌荒れ改善・免疫力向上の効果が期待できるでしょう。
また、納豆菌はナットウキナーゼという酵素を生成することで血栓を溶かす働きがあり、血液をサラサラにする効果が期待できます。
他にも、ビタミンK2を生成するため、骨形成を促進する効果で、骨粗鬆症の予防に役立つでしょう。

2-5酢酸菌の役割と影響

酢酸菌は、アルコールを酢酸に変えることができる微生物です。
おもにお酢の製造で使用されます。
風味や酸味を生み保存性を高め、健康的な機能性も備えたものです。
酢酸菌によって生成される酢酸は、pHを下げる効果があり食品の腐敗抑制にもなります。
お寿司・ピクルスなどの酢を使った食品・料理などで利用されてきました。

発酵のプロセス

発酵食品が出来上がるまでのプロセスは、どのような流れを組んでいくのでしょうか。
おもに、発酵のプロセスとしては以下の通りです。

● 微生物が引き起こすプロセス
● 発酵過程で見られる変化
● 発酵によってできる旨味

では、これらの流れをを詳しく解説していきましょう。

3-1①微生物が引き起こすプロセス

発酵の流れで、微生物の引き起こすプロセスは大切です。
発酵させる食材の有機物を分解させるために、酵母・乳酸菌・麹菌などが関与します。
食材の栄養素をさらに変化させて、風味や保存性も向上させる働きがあるのが特徴です。
まずは、糖分の分解作業が発生します。
例えば、酵母には糖を発酵させ、アルコールと二酸化炭素を生成する性質があり、ビールの製造過程でも、麦芽に含まれるデンプンが酵素によって糖に変わり、最終的にアルコールを抽出させる流れです。
乳酸の生成の場合、乳酸菌が乳糖や他の糖を乳酸に変え、酸性環境が整い食品の腐敗を抑制する働きを持ちます。
ヨーグルトやキムチに代表されるように、乳酸によって品質や風味を引き立てるのです。
他にも、タンパク質の分解を起こし酵素を生成します。
味噌や日本酒では、タンパク質を酵素に変えつつ風味や深みを生み出す流れです。
以上のように、各種微生物の働きこそ、発酵食品に独自の味わいや品質を与えてくれます。

3-2②発酵過程で見られる変化

発酵過程の途中では、微生物が有機物を分解し変化が生じています。
このプロセスによって、各食品の風味・栄養価・保存性を高めることに努めているのです。
発酵の初期段階では、酵母や乳酸菌が食材の糖を分解し始めます。
単糖や二糖などが生成され、さらにアルコールと二酸化炭素が発生する段階です。
酵母菌においては、ビールやパンの製造ではかなり顕著となる変化とされています。
乳酸菌の場合には、糖を乳酸に変え、酸性環境が発生し、食品の腐敗を防ぐ役割を向上させるでしょう。
ヨーグルトやキムチがその例で、独特の酸味も加わります。
また、香りと風味の変化も徐々に分かってくるでしょう。
タンパク質や脂肪が分解されると、アミノ酸や脂肪酸が生成されます。
これが風味・香りを発生させる元です。
そして発酵による効果としては、ビタミン・ミネラルなどの重要な栄養素が増加する点があげられます。
発酵食品の美味しさと健康の両方は、このように成立していくのです。

3-3③発酵によってできる旨味

発酵によって、各食品に豊かな旨味をもたらします。
発酵による旨味の正体は、おもにアミノ酸・ペプチド・酸などが形成するものです。
おもな旨味の元となる要素には、以下のような成分が考えられるでしょう。

● グルタミン酸
● イノシン酸
● アスパラギン酸
● 乳酸

グルタミン酸は、発酵過程で生成される代表的なアミノ酸です。
発酵食品としては、味噌・醤油・チーズなどに多く含まれています。
イノシン酸は、魚介類や肉の旨味として成立している成分です。
例えば、鰹節・干し椎茸に含まれていて、さまざまな料理の味の引き立て役にもなります。
アスパラギン酸もアミノ酸の一種で、爽やかな旨味が特徴です。
乳酸菌は、発酵食品にてポピュラーな成分ですが、ヨーグルトやキムチの酸味として引き立てます。
これらの成分によって、発酵食品の多くは風味の豊かさを演出し、より深い楽しさを教えてくれるのです。

世界3大発酵食品について

発酵食品は、古くから人々の健康を支える自然由来の食品です。
それらは、「3大発酵」とも称された味噌・チーズ・ヨーグルトのような発酵食品に代表されるでしょう。
そして、世界には3大発酵食品とされている存在があります。
チーズ・ワイン・ビールこそが、「世界3大発酵食品」として広く分布してきました。
しかも地域ごとの異文化に育まれながら、製法などの違いが見られます。
では、とても長い年月をかけて人々に愛され続けてきた3大発酵食品の、それぞれの種類・魅力について解説していきましょう。

4-1チーズ

チーズの原料は動物の乳で、乳酸菌やカビ発酵を利用して作られる発酵食品です。
独特なコクと風味は、チーズの種類によって多種多様で、ヨーロッパを中心に発展してきました。
今では世界中のどこでも愛されています。
熟成過程では、タンパク質・脂肪・カルシウムが得られ、人々の健康維持に大きく貢献しています。
おそらく、発酵食品の王道的存在といってもよいでしょう。

4-2ワイン

ワインも発酵食品の一つとして長い歴史があります。
ブドウを発酵させて製造されるアルコール飲料として知られ、古代より誕生しヨーロッパ・中東の文化に深く根付いてきました。
酵母でアルコール発酵を進行させ、糖がアルコールと二酸化炭素に変化して完成します。
豊かな香りと風味は、世界のどの地域でも楽しめます。
ワインは、抗酸化物質の一つであるポリフェノールが豊富に含まれ、血流改善や抗酸化作用が期待されている発酵食品です。

4-3ビール

ビールの製造では、麦芽とホップを主原料に、酵母菌の発酵によって作られます。
ヨーロッパから世界中に広まり、現在では最もポピュラーなアルコール飲料として君臨しました。
ホップの苦みと酵母の風味が特徴で、ビタミンB群やミネラルも含まれています。
長い歴史を持ちつつ食生活にすっかり浸透し、各ビール会社は日々こぞって独自の製法やテイストを求め、新製品開発を繰り広げているのが特徴です。

海外における発酵食品の人気傾向

発酵食品は、古い歴史が横たわり、世界各国に分布しています。
日本では、味噌や醤油・チーズ・ヨーグルトなどで食卓でもおなじみの食品として認められていますが、世界中ではどのような人気傾向があるのでしょうか。
ここでは、発酵食品の海外での人気傾向を見ていきましょう。

5-1アメリカでの発酵食品事情

アメリカは、近年、発酵食品の人気が急上昇している傾向です。
理由は、全体的な健康志向の高まりによるもので、プロバイオティクスの効果が注目され始めたことが大きいといえます。
プロバイオティクスとは、健康に影響を与える生きた微生物のことです。
乳酸菌・ビフィズス菌などがその代表例で、ヨーグルトを中心に、今ではキムチ、コンブチャなども広く紹介され始めています。
腸内環境を整える効果があるため、欧米の多くの人々が食生活に取り入れようと、関心を高めているようです。
スーパーマーケット・健康食品店を覗けば、たくさんの発酵食品を目にすることになるでしょう。
同様に、発酵食品によるレストラン・カフェも増加中だといいます。
中には、自家製の発酵食品を作る欧米人も増えてきたようです。
今やアメリカにおいて、発酵食品はステイタスを持ち、健康意識の高い食文化と、多様化を象徴するようになりました。

5-2中国での発酵食品事情

中国の発酵食品の種類は多様で、特性などは地域によって異なります。
中国の発酵食品も、食文化や歴史において重要な役割を果たしてきました。
例えば、豆腐を発酵させた「豆腐乳」・大豆から作る「醤油」・紹興酒などが代表的です。
豆腐乳は、発酵させた豆腐が独特な風味を増し、ご飯のお供や調味料にもなります。
醤油は日本でもお馴染みですが、深い旨味を加えさまざまな料理とマッチする調味料です。
実は紹興酒も発酵食品の一種で、米を発酵させて製造される伝統的なお酒とされています。中華料理における食中酒として人気です。
中国でも漬物は存在し、発酵食品の一つに数えられています。
キャベツや大根を数日から数週間かけて塩漬けしながら、発酵させると酸味と風味が増し、食卓のアクセントとなる存在感です。

5-3その他の発酵食品事情

アメリカや中国だけではなく、世界各地にて発酵食品は親しまれてきました。
高い栄養価が評価され、健康効果が期待されています。
代表的なものは、ヨーグルトです。
発祥地は、ブルガリア・トルコを含んだバルカン半島、もしくは中央アジア地域と考えられていますがはっきりとはしていません。
紀元前5000年頃には、遊牧民が乳を保存する容器に入れて旅を重ねた道中にて、偶然乳酸菌が入り込んで発酵したものが始まりとされています。
今ではヨーロッパを中心に全世界に広がったヨーグルトは、良質なタンパク質源としても人気です。
また、韓国のキムチも定番化しました。
大豆や野菜を発酵させ、ビタミンやミネラルが豊富です。
キムチにも乳酸菌があり、腸内フローラの改善、免疫力向上に役立ちます。
日本の代表的な発酵食品としては、納豆があげられるでしょう。
大豆を発酵させ、ビタミンKや食物繊維が多く含まれます。
なかなか、欧米で納豆を食卓に並べる習慣はありませんが、寿司ネタなどの一つとして、一部のファンが存在するようです。
これら世界の発酵食品は、すべて栄養価が高く、その地域の人々の健康サポートに役立っています。

まとめ

発酵食品の歴史は、ほぼ人類の歴史になぞられてきたといって過言ではありません。
古代から現代まで、人々の生活に深く根ざしつつ、地域ごとに製法を進化させ重宝されてきました。
保存性と栄養価の高さに着目し、メソポタミア文明にて誕生したとされ、今では世界中に広まっています。
酵母菌・乳酸菌を代表とした微生物の働きを生かして、風味やテイストに芳醇さを加えています。
発酵食品によって、世界の諸国は交易してきたことで発展してきました。
健康志向の高まりとともに、世界中で再評価されています。

日本インストラクター技術協会編集部
インストラクターの専門性を高めるためや地位向上を目的とした団体である日本インストラクター技術協会(JIA)編集部が運営するコラムです。
美容・健康・ボディケアの資格の筋トレインストラクター、シェイプアップインストラクターや骨格診断士。心理カウンセラー資格のメンタル心理インストラクター、子供心理カウンセラー®、音楽療法カウンセラーや行動主義心理アドバイザー®など様々な資格を認定しています。
日本インストラクター技術協会編集部