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発酵と熟成とは?腐敗との違いについて解説

記事作成日:2025.09.16
あらゆる食品は、発酵と熟成という重要なプロセスを踏んでいます。
発酵は、微生物の助力により食材へ化学変化を起こし、風味と栄養価を向上させる過程のことで、成熟は、時間経過により食材が自ら変化し、風味や質感などを向上させる過程です。
発酵・熟成で完成される複雑な風味や味は、料理を一段と豊かにしてくれるでしょう。
より一層の旨味へと変化させる手段として、発酵や熟成は食文化を形成してきました。
では、発酵と熟成には、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
実は明確な違いがあります。
また、発酵や熟成と類似する腐敗の現象もあり、それぞれの明確な違いによって、食材に対してさまざまな影響や変化をもたらすのが特徴です。
本記事は、食材の発酵・熟成とはなにかをテーマにした特集です。
また、腐敗との違いについても解説します。
それぞれの違いを理解するための参考にしてみてください。
発酵と熟成とは?腐敗との違いについて解説

目次

発酵とはなにか

食品の製造過程では、発酵と呼ばれるものがあります。
発酵とは、微生物の働きを利用しながら食品の成分を変化させる方法です。
例えば、ヨーグルト・チーズ・味噌・醤油・パン・納豆などは、発酵食品の一種として、人々に浸透しています。
微生物が食品中の糖質やタンパク質などを分解することで、風味や栄養価を向上させ、保存性を高めてくれるのが特徴です。
では、さらに詳しく解説していきましょう。

1-1微生物による食材への影響がある

食品の発酵のためには、微生物の役目が欠かせません。
食材へ大きな変化をもたらし、味や風味などを独特なものに仕上げてくれます。
微生物は、大きく細菌・酵母・カビの三種類に分類できて、それぞれに異なった特徴や役割があるのです。
細菌は、発酵食品の中で一般的な微生物で、乳酸菌などがあります。
乳製品や漬物の発酵に必要で、とくに酸味を生み出す効果が期待できるでしょう。
腸内環境を整える効果など、人間の健康にも寄与します。
酵母は、パン・酒・ビールの発酵の際に活躍する微生物です。
糖をアルコールと二酸化炭素に分解させ、食品の良さを引き出します。
パンの発酵の場合は、二酸化炭素が生地を膨らませて食感を作り出すことに貢献するなど、
新しい変化をもたらすのが特徴です。
カビの場合は、味噌・醤油・チーズなどの発酵に関与します。
味噌や醤油の製造では、麹菌が利用されデンプンやタンパク質を分解し、旨味を生成するのが役目です。
チーズの表面に、よく青カビや白カビが発生しますが、これらも独特の風味を付与します。

1-2発酵による食材の変化とその過程に関わる

発酵は、微生物によって食材の成分を分解させ、風味・香り・栄養価・保存性などを高めることが可能です。
例えば、チーズ・ヨーグルトなどの乳酸菌発酵の場合、酸味とクリーミーさを生み出し、
味噌や醤油の発酵の場合は、アミノ酸やペプチドが新たに生まれ旨味が増します。
栄養価を向上させるプロセスにも微生物が関わり、豊富な栄養を与えてくれるでしょう。
納豆の場合、ビタミンK2が生成されて骨の健康維持に役立ちます。
また、食品の保存性を高める手段に発酵は利用されてきました。
微生物が酸やアルコールを作り出し、病原菌の増殖を抑制や腐敗を防ぎます。
食材を長期間保存させる環境作りのために、発酵が利用されてきました。

1-3食品の質や文化に利点をもたらす

発酵食品には、健康効果などの多くの利点があります。
腸内環境を整え、消化器系の健康をサポートすることがあるでしょう。
乳酸菌や酵母などの微生物が、腸内で善玉菌として悪玉菌の増殖を抑制します。
また、味と風味を変化させることが期待できるでしょう。
チーズの発酵などは、ミルクの風味が濃縮しつつ独特のコクと香りを形成します。
味噌や醤油の場合、深い旨味と香ばしさが加わり、料理に役立つ調味料にもなるのです。
しかも発酵食品は、栄養価が高く吸収を促進する効果もあります。
発酵した大豆製品などは、通常の大豆よりも鉄分・カルシウムの吸収率をあげてくれるでしょう。
このような利点により、発酵食品は世界の食文化に重要な役割を果たしてきました。
地域ごとに独自の発酵食品の歴史があり、今でも食文化の伝統を保持しています。
日本であれば味噌や醤油、韓国はキムチ、フランスならチーズといった、各国のアイデンティティを象徴するような食品が誕生してきました。

熟成とはなにか

熟成は、食品を適切な環境内で一定期間保存して、風味・品質を向上させる手法です。
食品そのものに備わっている酵素や、微生物の働きなどで、色・味・香り・食感などを変化させ、より美味しい状態にします。
具体的には、お酒・肉類・チーズ・ワインなどが代表的です。
では、詳しく解説していきましょう。

2-1成熟は3種類に分類される

熟成とは、時間経過を辿り、十分な頃合いで食品の旨味が向上する状態です。
例えば、熟成肉の場合では、じっくり時間をかけてから調理します。
酵素と環境(湿度・温度・時間)によって、総合的な働きがタンパク質を分解して、アミノ酸を形成し、柔らかさや旨味が増していく状態です。
熟成の技術には、おもに3つの種類があります。

● ドライエイジング
● 枯らし熟成
● ウェットエイジング

2-2ドライエイジング

ドライエイジングとは、ニューヨーク発祥の技法で、食品を乾燥させながら熟成させます。
専用貯蔵庫の中で、湿度・温度の調整をし、風を循環させ水分を抜く工程です。
そのスパンは、2週間から2ヵ月程とされています。
熟成期間の中で、自然に微生物がついて食材を成熟させるのが特徴です。
アンガス牛の肉などは、骨付きの枝肉や塊肉のまま利用し、表面にカビが生えてきたら、その都度そぎ落とします。
アミノ酸が増えて旨味が増し、さらにナッツのような香りや柔らかさが味わえる方法です。

2-3枯らし熟成

枯らし熟成は、冷蔵庫内で、肉に菌が自然に付着することで水分が引き出され、骨のままで吊るしながら保存します。
骨格をそのまま残して重力を分散させることで、均等な熟成が可能となる方法です。
ただし、ドライエイジング同様に、表面のカビをそぎ落とすエッジングをする手間がかかります。
元来古くからある技法でしたが、徐々に技術が向上し真空状態を意図的に作れるようになり、近年では活用されなくなりつつあるようです。
人工の風ではなく、ゆっくりと自然乾燥させることで旨味が凝縮され、水分が均一に調整されるので、肉の持つ旨味を引き出します。

2-4ウェットエイジング

ウェットエイジングも、真空状態で貯蔵庫で寝かす技法です。
肉類はパーツごとに分けて、外気に触れないようにします。
0℃〜1℃の貯蔵庫で、1〜2週間程度寝かせます。
また、吸水紙を当て取りかえながら真空パックにすることもあるようです。
本来は輸送時に肉の劣化を防ぐための方法でしたが、数日寝かせたほうが酵素の働きが活発化し、肉質の旨味が増すとわかり熟成方法として採用されました。
他の技法に比べれば管理がしやすいのが特徴です。
トリミングすることもあまりなく効率がよいのですが、他の技法と比較した場合の熟成香や旨味はありません。
スーパーなどの一般の店頭に並ぶ牛肉のほとんどが、ウェットエイジングされたものです。

腐敗とはなにか

腐敗とは、細菌・カビ・酵母などの微生物の働きにより有機物を分解し、食品本来の品質が壊れた状態のことです。
物質が時間経過とともに変化し、悪臭を放ち有害物質を生成します。
ただし、微生物の作用がかえって食品の成分を有益に変化させた場合が「発酵」です。
発酵と腐敗のどちらも、微生物の活動でありながら、その結果は大きく異なります。
ここでは、腐敗の基本概念と微生物による物質の有害化、発酵と腐敗の違いについて解説しましょう。

3-1腐敗は微生物が原因

腐敗とは、特定の微生物が食材などに侵入して繁殖することで引き起こされます。
食材の栄養素を分解して有害物質を生成するのが普通です。
腐敗を引き起こす微生物の種類としては、細菌・カビの2つが考えられるでしょう。
細菌は、腐敗の主要な原因で、腸内細菌・土壌細菌が食品に繁殖して進行します。
大腸菌・サルモネラ菌・リステリア菌などが代表例です。
食材に含まれたタンパク質や炭水化物を分解し、有害物質を生み出します。
カビも、食品の腐敗を引き起こす微生物です。
湿気の多い環境で繁殖し、パン・果物・野菜などの表面に生えます。
食材の見た目や風味を損なう他に、アフラトキシン・オクラトキシンなどの有害物質を生成する恐れがあるのです。
肉や魚が腐敗した場合、タンパク質が分解されアミン類・アンモニアが生成されます。
これらからは強い悪臭が発生し、風味が損なわれるでしょう。
もし、腐敗した食材を摂取すると食中毒を引き起こす危険性をはらんでます。
食中毒のリスクから回避するためには、腐敗した食品を摂取しないようにしましょう。

3-2発酵と腐敗はまったく違う

発酵と腐敗は、どちらも微生物の活動によって引き起こされます。
しかし、その結果と目的が大きく異なっていくものです。
発酵では、食材の保存性・風味・栄養価を向上させるのに対し、腐敗は、食材を有害な状態にします。
微生物が関与するといっても、発酵に関与する微生物と腐敗に関与する微生物は明らかに異なった性質です。
発酵のための微生物は、乳酸菌・酵母・麹菌などで、 食材中の糖類やタンパク質を分解して有益な物質を生成します。
乳酸菌によって、ヨーグルトやキムチなどの食品を新たに作り出したり、酵母でビールやワインのような飲料を生み出すのが発酵です。
一方で、腐敗のための微生物には、大腸菌・サルモネラ菌・リステリア菌などがあり、食材中の栄養素を分解して有害な副産物を生成します。
肉や魚が腐敗すればアンモニアや硫化水素が生成され、強い悪臭を放つのがその例です。
健康に有害な影響を及ぼしてしまうでしょう。
発酵と腐敗の違いを理解して、食材を適切に管理していけば健全な食生活を営めます。

発酵と熟成の基本的な違い

発酵と熟成は、どちらも人体に優良な状態で、類似したプロセスに思えますが、それぞれの過程は異なっています。
どちらも食品の変化過程を指しつつ、微生物が関与するかどうかが決定的な違いです。
発酵では、微生物の働きが加わることで新しい成分が生成される現象ですが、熟成は、食品自身が内包する酵素によって変化する現象を指します。
では、詳しく解説していきましょう。

4-1発酵での微生物の役割

発酵とは、特定の微生物が食品中の栄養素を分解することで引き起こされます。
その結果、有益な化合物を生成するプロセスです。
食品自体も著しい変化があり、風味・香り・栄養価が向上します。
発酵の代表的な微生物には、乳酸菌・酵母・麹菌などがあるでしょう。
乳酸菌は、糖を乳酸に変える働きがあり、ヨーグルト・キムチ・サワークラウトなど日常的にポピュラーな食品があります。
酵母は、糖をアルコールと二酸化炭素に変える微生物です。
パン・ビール・ワインなどの発酵食品で知られています。
麹菌は、でんぷんを糖に分解する酵素を生成する微生物です。
おもに味噌・醤油・清酒などの日本の発酵食品の製造に関わっています。
食品の甘味や旨味・風味が豊かになるのが特徴です。

4-2熟成での微生物の役割

熟成の場合、食品自体の酵素の働きが中心となる現象なので、原則として、微生物の関与は必須ではありません。
肉類・チーズ・ワインなどの食品が顕著で、風味や質感の向上を目指して意図的におこなわれます。
肉の熟成は、酵素がタンパク質を分解し、風味や柔らかみを出すプロセスです。
乾燥熟成と湿潤熟成の2種類があり、乾燥熟成では、一定期間冷蔵庫で保存し、表面の水分を蒸発させて風味を凝縮させます。
一方で、湿潤熟成は、真空状態の肉を冷蔵庫で保存する方法です。
比較的短期間で肉を柔らかくします。
チーズの熟成では、酵素によってタンパク質や脂肪が分解され、風味や質感を向上させるプロセスです。
熟成期間によって風味は大きく変わります。
ワインの熟成は、瓶詰め後に風味を発展させるプロセスです。
酸化還元反応やタンニンのポリマー化といった化学反応が関与します。

代表的な発酵食品

発酵食品には長い歴史があります。
日本はとくに発酵食品先進国として知られ、古くから人々の食を支え続けてきました。
では、どのような発酵食品が製造され続けてきたのでしょうか。
ここでは、日本で主流とされている発酵食品の特徴を解説します。

5-1納豆

蒸した大豆を納豆菌で発酵させて製造されるのが納豆です。
発酵によって「ナットウキナーゼ」という新しい効果が生まれ、納豆独特な風味や粘りを作り上げます。
昔は大豆を蒸して稲のわらに包んで製造していました。
たまたま、わらに付着していた納豆菌が偶然効果を発揮したことに由来します。
ただし今では、純粋培養された納豆菌を利用して大量生産しているのが特徴です。
地域にもよりますが、日本で広く親しまれ続けている発酵食品とされています。

5-2ぬか漬け

ぬか漬けも発酵食品の一種です。
乳酸菌が食材に付着し、糖類によって発酵させます。
漬物の種類としては、塩漬け・味噌漬け・粕漬などもりますが、最もポピュラーなのがぬか漬けです。
まずはぬか床を作りそこに素材を漬け込んで発酵させるのが手順となります。
ぬか床は、水・塩を加え乳酸発酵させたものです。
おもに野菜を漬けますが、魚介類・肉・卵などあらゆる食材もぬか漬けにできます。

5-3醤油

日本を代表する調味料の醤油も、大豆を発酵させて製造します。
麹菌によって発酵させるのが特徴です。
大豆と小麦へ麹菌を加え、さらに塩と水を混ぜると「醪(もろみ)」が形成されます。
醪は木桶やタンクの中で寝かせ、じっくり発酵をさせて完成する流れです。
あらゆる料理に使われる、万能な調味料といえるでしょう。

5-4味噌

味噌も大豆を発酵させた調味料です。
麹菌によって発酵させます。
大豆のたんぱく質は麹菌によって変化し、乳酸菌や酵母などが加わることで、複雑な味わいを醸し出すのが特徴です。
発酵させるために長い期間寝かせればコクや深みが出て、短期間であれば甘味が強く仕上がります。
使用する材料選びや熟成期間などによって、絶妙な味の変化が出る発酵食品です。

5-5塩麹

塩麹とは、塩と麹だけを使った素朴な発酵食品です。
塩麹はあまり普段から使用する機会はないかもしれませんが、江戸時代から既に日本の家庭で手作りされていました。
豊富な酵素が含まれています。

代表的な熟成食品

熟成食品は、食品自身の酵素の働きを生かしながら、風味や食感をより美味しくさせた発酵食品です。
熟成食品は、意外と世界中の人々に浸透していて、誰しもが食しています。
代表的なものは、肉類・チーズ・ワイン・日本酒・かつお節などです。
では、詳しく解説していきましょう。

6-1チーズ

世界中で親しまれているチーズは、乳を発酵させて製造する熟成食品の代表格です。
熟成の期間によって風味やテイストが異なり、より豊かになります。
おもにパルメザン・ゴルゴンゾーラなどが顕著です。

6-2ハム・ベーコン

肉類の中でも、ハム・ベーコンは熟成食品として有名です。
肉を塩漬けし、乾燥もしくは燻製にし熟成させます。
独特な風味が強くなり、より深みが出るのが特徴です。
例えば、イタリアのプロシュート、スペインのハモン・イベリコなどがあります。

6-3ワイン・日本酒

ワインと日本酒も、発酵と熟成を経て完成させるので、熟成食品の一種でもあります。
ワインの場合、熟成が進むと風味が変化し、深みが増すのが特徴です。
日本酒の場合も、長期間熟成させた銘柄などは、まろやかさや香りが増すでしょう。
また、各地域での製造方法も個性豊かなので、絶妙に味の違いが感じられます。

6-4干物

魚など干物も実は熟成食品の仲間です。
魚を塩で漬け、干して熟成させます。
旨味や保存性が向上するので、日本では古くから製造されてきました。
鯵の干物・秋刀魚の干物などが有名です。

6-5まとめ

発酵と熟成とでは、お互いに加工方法などの違いがあり、味わいや風味などに絶妙な差を生み出します。
それぞれの違いを押さえておけば、自分の好みにマッチした食生活を楽しむことができるでしょう。
発酵と熟成は、食品を良い方向に促すために重要なプロセスとして育まれてきた手法です。
栄養価、保存性を大きく向上させる手段として、歴史も深いのが特徴といえるでしょう。
発酵では、微生物の働きで食材が化学変化を起こし、独特の風味と栄養価が生まれます。
熟成は、時間の経過により食材が自己分解し、風味や質感が向上するものです。
どちらの方法も食品の魅力をより引き出し、健康にも良い効果が期待できるでしょう。
ただし、発酵や熟成とは別に、腐敗についての認識も重要です。
腐敗は、発酵や熟成に似ていても、単なる食品の劣化なので有毒性があることに気を配らなければなりません。
以上のように、発酵・熟成、そして腐敗の知識を深めながら、日常の食生活へ積極的に取り入れれば、豊かで健康的な食生活を楽しめます。

日本インストラクター技術協会編集部
インストラクターの専門性を高めるためや地位向上を目的とした団体である日本インストラクター技術協会(JIA)編集部が運営するコラムです。
美容・健康・ボディケアの資格の筋トレインストラクター、シェイプアップインストラクターや骨格診断士。心理カウンセラー資格のメンタル心理インストラクター、子供心理カウンセラー®、音楽療法カウンセラーや行動主義心理アドバイザー®など様々な資格を認定しています。
日本インストラクター技術協会編集部