腸内環境を整える効果として、発酵食品が注目されています。
中でも、味噌はその代表格といえるでしょう。
多様な微生物が豊富に含まれる味噌は、腸内環境改善・免疫力向上に寄与すると実証されているようです。
日本の伝統的な発酵食品として親しまれてきた味噌は、調味料の領域を超え、健康効果にも寄与するパワーを秘めています。
ここでは、味噌の基本知識について解説していきましょう。
味噌は、大豆を使って米・麦・塩を発酵させて製造する食品です。
米味噌・麦味噌・豆味噌の3つに分類されます。
それぞれの味噌には、個性があり日本各地で多くの種類が見受けられるのが特徴です。
米味噌は、米麹から作られ淡い色と甘みがある種類で、長野県の信州味噌などが代表的といえるでしょう。
熟成には1〜2年かかり、味噌汁や和え物などの用途があります。
麦味噌は、大麦麹で作られ、九州地方で親しまれてきた味噌です。
香ばしさに特徴があり、ちゃんぽんには欠かせない存在とされています。
豆味噌は、大豆麹を使用して製造される味噌です。
濃厚な風味があり、愛知県の八丁味噌などが代表的とされています。
熟成には2〜3年を要し、煮込みうどんなどの濃厚なテイストを演出する元です。
味噌は、奈良時代(710-794年)にはすでに存在していたとされています。
「延喜式」という書物には、「未醤」という表記があり、これが味噌の原型です。
元々は中国から伝来した発酵技術が、日本で独自に開発・進化を遂げたとされています。
やがて、味噌造りが本格的に始まりました。
鎌倉時代(1185-1333年)に入ると、禅僧が精進料理に味噌を取り入れます。
このあたりから、次第に人々へ普及することになりました。
江戸時代(1603-1868年)には、地域ごとの味噌蔵も盛んになり、今日に至ります。
昔からの伝統行事や地域文化に深く関わってきたのが味噌といえるでしょう。
発酵食品に関与する微生物は、人間の健康や生活に有益な影響をもたらします。
発酵微生物は、食品の栄養価を向上させる働きがあり、乳酸菌・酵母などが典型です。
発酵過程にて、ビタミンB群・ビタミンK・アミノ酸・抗酸化物質などの有益な成分を生成します。
消化吸収も元の素材以上に良くなり、体内へ効率的に取り込めるのがメリットです。
そして、プロバイオティクスとしての役割があります。
発酵微生物は、腸内フローラを整えるプロバイオティクス効果が期待できるでしょう。
乳酸菌・ビフィズス菌などは腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑制するとされ、腸内環境を改善できる効果があるようです。
また、アレルギーの抑制や治療、感染症リスクの低減なども期待できます。
味噌の発酵プロセスは、麹によるところが大きく、カビがデンプンやタンパク質を分解し、糖やアミノ酸を生成して始まります。
この過程を経ることで、麹の酵素が大豆の栄養素を変化させ、旨味を生み出すのです。
やがて発酵が進むと、乳酸菌が活躍します。
乳酸菌は、糖を乳酸に変えて酸味を加える役割もあり、味噌の風味を豊かにする重要な微生物です。
味噌の発酵プロセスでは、大豆、米、塩を主原料とします。
それらに微生物の働きが加担することで、味噌が形成されていく流れです。
まずは、大豆を水で浸し、数時間以上、できれば一晩かけてふやかします。
2倍くらいに膨れ上がったら、茹でて柔らかくしましょう。
次に麹の準備に入りますが、使用されるのは米麹・大豆麹が多いようです。
麹菌にあるアスペルギルス・オリゼの成分を米が、デンプンを糖分に変換します。
麹菌には酵素を生成する効果があり、それが味噌作りのベースとなっていくのです。
さらに塩を加えることで、微生物のバランスが整えられ、発酵が始まります。
混ぜ合わせた材料を容器に入れたら、発酵へと進みます。
発酵させるための温度は、10〜20℃の範囲が適温です。
徐々に味噌の色が濃くなり、香りや風味が深まります。
この段階で酵素(アミラーゼ、プロテアーゼなど)が、大豆の成分を分解しアミノ酸やペプチドを作り、味噌の旨味となるのです。
発酵の工程が済んだら、味噌を熟成させていきます。
熟成では、時間経過が重要となり、長ければ長いほど味噌の風味が豊かになるとされ、数ヶ月から数年をかけるのが普通です。
発酵期間が十分に進んだら、完成となります。
味噌の原料には、おもに大豆・麹・塩を使います。
それらを発酵・熟成させて作られる日本の伝統的な発酵食品です。
発酵の過程では、麹に含まれる酵素が、大豆のデンプンやタンパク質を分解しながら、旨味や風味を生み出していきます。
では、味噌を構成するおもな成分について解説していきましょう。
味噌の主原料であり、良質な植物性タンパク質を豊富に含んでいます
良質のたんぱく質を豊富に含む食品で、“畑の肉”といわれています。 大豆は発酵によって、アミノ酸やビタミンなどが多量に生成され、栄養的に優れた味噌󠄀になります。 その他にも味噌󠄀には、炭水化物、脂質、灰分、ビタミン、カリウム、マグネシウム、繊維質など、たくさんの栄養素が含まれています。。
麹は、米・麦・大豆などの穀物に、麹菌を繁殖させて生成します。
それぞれ、味噌の種類である米味噌・麦味噌・豆味噌は、使用する麹によって違っているのが特徴です。
麹には酵素が含まれていて、大豆や米に含まれたでんぷんを糖に、タンパク質をアミノ酸に分解します。
味噌のうま味・甘みなどは、麹菌によって決定され、特有の風味として完成させるのに必要です。
味噌には塩分が含まれ、発酵を適切に調整し、風味を加える役割があります。
一般的な味噌に含まれる食塩濃度は、10~13%程度です。
そのままでは少し濃く感じますが、味噌汁などに調理して接する時には、約1%程度に薄まります。
そのため、塩分の摂りすぎを心配する必要はほとんどありません。
味噌にとって、水分量も重要な要素とされています。
なぜなら、味噌の約半分は水分で構成されていると思ってよいからです。
味噌の主原料となる大豆、米、塩へ、仕込みに使う重要な要素になります。
実際に、水も味噌の風味や発酵に影響を与えることになり、できるだけ品質の良い水を選ぶことが大切です。
また、分離した茶色い液体が出ることがあり、これを「たまり」と呼びます。
たまりには旨み成分が凝縮されていて、品質には一切問題はありません。
味噌の旨味を演出する秘訣には、材料選びと発酵・熟成期間の管理に重点が置かれます。
例えば、大豆は大粒で水分の吸収率の高い、煮上がりの味に問題がなさそうな品種選びがポイントになります。
また、麹菌・乳酸菌・酵母などの各種微生物の働きに、適切な温度管理ができる環境を、いかにして整えられるかにかかってくるでしょう。
味噌に使う大豆を選ぶ際には、大粒で、水分の吸収が高そうな、煮上がりの味が良いものを選ぶことです。
麹は、米麹・麦麹など、完成させたい味噌の種類によって変わってきます。どのような味噌に仕上げたいのかを考慮しながら、適切なものを選ぶ必要性があるでしょう。
また、塩の選び方も重要です。
味噌の風味を引き立てる効果があります。
ミネラルが豊富な塩を選びましょう。
味噌作りでは、発酵・熟成に適切な環境作りも大切です。
味噌の製造で最適温度は、種類や仕込む時期によってことなります。
一般的には、15~27℃の範囲が適温です。
同時に湿度も重要となり、高すぎるとカビが生えてしまいます。
適切な湿度は、普段から観察しながら保つようにするのが通常です。
熟成期間としては、米味噌では8ヶ月程度、麦味噌は1年程度の熟成期間が目安となるでしょう。
味噌を作るためには、いくつかの仕込みのポイントを押さえておく必要があります。
まずは、塩切りという工程です。
麹に塩を混ぜて、全体が均一になるように混ぜ合わせます。
この混ぜ具合をしっかり整えないと、出来上がりに影響を与えてしまうでしょう。
次に大豆を煮た後の注意点です。
煮終わった大豆は、30℃以下に冷ますことがポイントで、その後に塩切りした麹と混ぜ合わせます。
やがて混ぜ合わせた材料は団子状にして、空気を抜きながら桶に押し込んでいき、最後に重石を蓋に乗せ、空気に触れないようにすれば終了です。
その状態で、適切な環境で熟成に入ります。
味噌作りは、適切な工程を汲みながら慎重におこなわれています。
もし自宅で味噌作りにチャレンジする際は、逆に失敗しないためのポイントを押さえて注意を払いながら進行させたほうがよいでしょう。
味噌作りを失敗してしまうケースとしては、以下の10項目が考えられます。
● 米こうじを長時間保管してしまう
● 大豆の手洗いで手抜きをしてしまう
● 大豆に十分な水を吸わせていない
● 大豆を煮る際の水分に気を配らない
● 大豆を煮るときに火元から離れてしまう
● 大豆が十分に柔らかくなっていない
● 大豆が熱いまま混ぜてしまう
● 大豆・麹・塩をすべて一緒に入れてしまう
● 適当に混ぜようとしている
● 重石を乗せない
以上のような内容に不注意があると、味噌の出来上がりに影響が出てしまいます。
とにかく、慎重に気を配りながら、各工程を進めていくことが大切です。
味噌の発酵では、さまざまな微生物が寄与します。
主要な微生物としては、麹・酵母・乳酸菌です。
中でも、乳酸菌はヨーグルトなどの乳製品に含まれるものというイメージがありますが、味噌の中にも含まれています。
味噌に含まれている乳酸菌も、腸内フローラを整える働きがあるとされています。
消化を助ける効果や免疫力を高める効果が期待され、腸内の善玉菌を増やすのに役立つでしょう。
味噌の他にもヨーグルト・キムチ・納豆などにも含まれています。
味噌を摂取することによって、自然と乳酸菌を摂取する習慣となり、腸内環境を改善する助けになるでしょう。
味噌の発酵工程にて、乳酸菌が生成する乳酸は、味噌のPHを下げて酵母の生育に寄与して環境を整える役割もあります。
味噌の味に独特の酸味を加え、原料の臭みを消してくれる役目も考えられるでしょう。
また、熟成のコントロールや色を出すなどの効果もあります。
味噌の製造では、乳酸菌の存在が発酵しやすい環境を作り出すものと思ってよいでしょう。
味噌は適切な方法で保存することで、風味を長く保つことができます。
また、開封後・未開封の場合によっても保存方法を考えておくべきでしょう。
未開封の状態であれば、直射日光・高温多湿を避けて、冷暗所や冷蔵庫で保存します。
開封後のものは、空気に触れて酸化が進み始めるので、風味が損なわれないように冷蔵庫での保存がよいでしょう。
また、冷凍保存する場合には、ラップで小分けにあらかじめしておくと、使用の際の効率的です。
では、さらに詳しく解説していきましょう。
一般的に、味噌の常温での保存は可能です。
ただし、その際は、最適な保存状態が保てる環境でなければなりません。
温度変化がなく湿度も低い、暗い場所が推奨されるでしょう。
現在では、むしろ冷蔵保存が推奨されています。
とくに夏場になると、どうしても高温多湿な状態になります。
その渦中では、発酵が進行し始めて風味が劣化するでしょう。
一定の温度状態が保てる冷蔵庫での保存が望ましいです。
開封後についても、冷蔵保存を基本としながら、冷凍保存もすることができます。
できるだけ長期で味噌を保管したいと考えている場合、冷凍庫がおすすめです。
味噌を冷凍にすると、多少は硬くなってしまうものの、凍りつくようなことはありません。
しかも、使いたいタイミングに合わせながら料理に使えるので効率が良く、さまざまな応用が利くでしょう。
味噌を冷凍した状態にした場合には、約1年程度は賞味期限があると思ってください。
味噌の状態は、時間経過と温度の関係により、変色などが生じていきます。
米から分解した糖と、大豆が変化したタンパク質・アミノ酸が反応し合う現象です。
変色しだすと味にも変化が起きてしまいます。
味噌由来の成分同士の反応であるため、未開封の状態でも起こることに注目しましょう。
未開封の味噌の保存では、直射日光や高温多湿な場所から避けて、温度変化がほとんど見られない冷暗所や冷蔵庫での保存がベストです。
また、気温が高い夏の時期や梅雨の時期は、未開封であってもできるだけ冷蔵庫保存がよいでしょう。
開封した後の味噌は、常に冷蔵庫保存をしてください。
その際は、どのような容器に入れてある状態かによって保存のポイントが違います。
もし、プラスチックカップの容器であれば、そのまま保存容器として使えますが、必ず蓋をする前に、凸凹した中身を平らにして表面にラップを密着させて保管するのがおすすめです。
また、袋入りの製品を袋のまま使う場合は、使用の度に味噌の隙間の空気を抜くようにし、
袋の口の間に空間ができないように注意しながら、輪ゴムなどで結んでください。
空気になるべく触れないための工夫をすると思えばよいでしょう。
味噌の平均的な保存期間は、未開封・開封後によって変化を伴います。
未開封の味噌の場合、賞味期限は1年〜2年くらいが標準です。
もちろん、風味が損なわれないうちに早めに消費するようにしましょう。
開封後の味噌の場合は、とにかく早めに使い切るのが理想ですが、冷蔵庫保存にすれば1〜3ヶ月くらいとされています。
味噌は、菌が生きている食品でもあることから、保存状態が重要です。
適切な保存をしないと、風味が変化しカビが生えたりすることがあります。
また、白いカビのようなものが見えたとしても、産膜酵母である場合が多いので無害です。
ただし、風味を損なうため、取り除くようにしましょう。
もし、異臭やモコモコとカビが生えた状態だと明らかにわかれば、食べるのを控えることが無難です。
中でも、減塩味噌・だし入り味噌などは傷みやすいので注意しておきましょう。
その他、味噌は開封後も賞味期限内であれば風味が劣化しても食べることができます。
賞味期限よりも、半年以上過ぎた状態のものは、風味の変化が激しいと考えられるので、破棄したほうがよいでしょう。
味噌のような発酵食品には、微生物の働きが必要です。
微生物が存在することで、様々な食品に寄与して長い歴史を築き上げてきました。
それぞれの食材に適合した微生物を選んで使用することで、発酵をきっちりと進めることができて目標とする食品が完成します。
また、発酵食品は旨みやコクが強くなり、元の食材以上に風味が豊かになるでしょう。
発酵の方法などは各国によって異なりますが、日本は世界有数の発酵食品大国として知られています。
中国から伝来した発酵技術は古くから重宝されてきました。
そして、長い歴史の中で独自性の高いスキルを磨き上げて現在に至っています。
多くの人々に発酵食品が親しまれているのは、歴史に裏打ちされているからともいえるでしょう。
味噌はその中の一つであり、発酵の技術を研究して実践した結果、あのような独特な調味料として誕生しました。
味噌の美味しさと健康効果も、発酵に関わる微生物の働きによって成立しています。
有機物を分解し、アルコール・乳酸・酢酸などの物質を生成し、この過程にて風味や栄養価を大幅に向上させるものです。
大豆・麹菌・塩といった主原料へ微生物が加わり、酵素がデンプンやタンパク質を分解します。
独特な風味と豊かな栄養素は、発酵の力によるものとして認識できるでしょう。