
発酵食品は、古代から世界の食生活に深く根付き、現代にも脈々と受け継がれてきた健康的な食品です。
元となる食品素材を、発酵のプロセスを経て変化を加え、さらに深い味わいや栄養価を高めていることが、主となる特徴といえるでしょう。
発酵のプロセスには、複雑な段階を経ていくため、基礎的な知識を学ぶことは重要です。
日々の食生活を見直す意味でも、その第一歩を踏み出すきっかけになります。
発酵とは、微生物を応用しながら食品の成分を変化させる過程です。
元の食材から新たな成分に変えて、栄養価や風味を向上させます。
古くから食品保存・健康増進の手段として、世界中で培われてきたものです。
その際に活躍するのは、酵母・菌です。
これらの微生物は、食品の糖類やデンプンを分解し、アルコールや酸を生成します。
例えば、酵母の場合、パンの発酵で炭酸ガスを生成し、生地を膨らませる役目です。
また、乳酸菌の場合は、ヨーグルトやチーズの製造にて乳糖を分解し、乳酸を生成します。 これらはすべて、食品の風味や保存性を向上させるのに寄与してきました。
発酵では、微生物が食品中の糖類を分解し、エネルギーを生成します。
酵母の場合、糖をアルコールと二酸化炭素に分解することで、エネルギーを生み出すことになるでしょう。
乳酸菌も同様に、糖を乳酸に分解する過程により、食品が酸性化され保存性が向上します。 発酵の結果で得られる酵素やビタミンは、食品の栄養価をさらに高めることになるでしょう。
世界を見渡すと、豊富な発酵食品が見受けられるでしょう。
ヨーロッパでは、チーズ・ワインがその代表格です。
チーズは、乳酸菌の働きにより乳を固め、熟成させて独特の風味を引き出します。
ワインは、ブドウの糖分を酵母がアルコールに変えて完成する酒類です。
韓国では、キムチが発酵食品の代表的存在です。
塩漬けにした白菜に乳酸菌を加えて発酵させ、辛味と酸味を引き出します。
他にも、インドで広く親しまれているのは、豆や米を発酵させたドーサ・イディリといった料理があるようです。
実は日本こそ、伝統的な発酵食品、あるいは世界の発酵食品が手に入る、発酵食品大国として知られています。
納豆などはその代表格でしょう。
大豆を納豆菌で発酵させて粘りと独特の風味をもたらします。
納豆には、ビタミンKや納豆菌が豊富に含まれ、健康効果が期待できる食品です。
味噌も、日本を代表する発酵食品で、大豆と米や麦を麹菌で発酵させます。
味噌汁として、あるいは調味料としてお馴染みです。
タンパク質やビタミンが豊富に含まれ、酵素やアミノ酸が健康に良い影響を与えます。
醤油も発酵調味料として古くから製造されてきました。
大豆と小麦を麹菌と塩水で発酵させ、独特の風味と香りを放ちます。
調味料としてポピュラーですが、発酵食品という認識が意外と低い気がします。
このように、発酵食品は日常の食生活に取り入れることが可能です。
古くから世界中の人々に親しまれてきた発酵食品ですが、独特な風味や保存性の高さなどが認められてきました。
栄養価の向上や健康効果についても、現代へ引き継がれています。
では、発酵食品には、具体的にどのようなメリットが隠されているのでしょうか。
発酵食品のメリットとして、栄養価の向上は顕著です。
発酵過程にて、微生物が食品中の成分を変化させることで、新しい栄養素を生成します。
既存の栄養素の吸収率を高めることができるでしょう。
例えば、ビタミンの増加が著しいのがメリットです。
微生物が発酵過程にて、ビタミンB群やビタミンkなどを作り出します。
味噌や醤油などの発酵食品には、ビタミンB6やナイアシンが含まれ、神経機能や皮膚の健康維持に役立つとされているのです。
ビタミンKの生成 納豆に含まれるナットウキナーゼは、ビタミンK2の生成を助けます。
また、ミネラルの吸収率が向上するのもメリットです。
発酵過程で生成される酸や酵素は、ミネラルの利用を高めます。。
他にも、カルシウムの吸収率向上もあり得るでしょう。
ヨーグルトなどの乳製品の発酵過程で、乳酸菌が乳糖を分解し乳酸を生成します。
カルシウムの吸収を助ける働きがあり、骨の健康維持に役立つことでしょう。
発酵食品は、その変化の過程で独特の旨みや風味をもたらします。
古くから人々に愛されて現在に至っているのです。
微生物が食品中の糖分やタンパク質を分解し、酸・アルコール・アミノ酸を生成します。
その過程で独特の旨みが形成されるのです。
味噌や醤油の旨みは、アミノ酸によるもので、とくにグルタミン酸が多く含まれ旨みとして感じられます。
しかも、発酵の時間が長くなるほど複雑な風味が楽しめるでしょう。
チーズの風味もまた、発酵の過程で形成されます。
乳酸菌が乳糖を分解し乳酸を生成するため酸味となり、同じ種類のチーズであっても、熟成度合いにより味わいが異なるのです。
発酵食品の場合、各地域にて独自の発酵食品としての歴史が積み重ねられてきました。
それぞれの風土に合った味わい・風味が生まれています。
典型的なのが納豆です。
日本の代表的な発酵食品で独特の風味が特徴といえるでしょう。
キムチの場合も同じことがいえます。
あの独自の辛味と酸味は、韓国ならではの味と風味です。
また、発酵期間や材料の違いでさまざまなバリエーションが生まれます。
発酵食品のもう一つのメリットに、保存性が向上する点もあげられるでしょう。
食品の保存期間を延長させて、長期に渡って安全に消費できるようにします。
保存期間の延長ができる理由は、発酵過程で生成される酸やアルコール、その他の化合物によるところが大きいといえます。
食品中の余分な微生物の活動を抑制してくれるからです。
ヨーグルトの保存性の場合、乳酸が酸性環境を作り出すことで、他の有害な微生物の繁殖を抑える効果をもたらします。
冷蔵庫保存であれば数週間まで品質を保てるでしょう。
また、漬物の保存性は、塩分と発酵の組み合わせが効果をもたらします。
塩分が食品中の水分を引き出し、乳酸菌により酸性環境が形成され、有害な微生物の繁殖が抑えられるからです。
保存方法のポイントは、適切な状態と手法を遵守することが重要となります。
まずは、適切な温度管理という意味で、冷蔵庫保存すれば発酵の進行を遅らせ、品質を長期間保てるでしょう。
ヨーグルトや漬物などは、原則として冷蔵保存をするものです。
また、密閉容器を使用して、 酸素の流入を抑えることで、発酵をコントロールできます。 発酵食品の中には臭いの強いものもあるので、密閉容器を使用して、他の食品への臭い移りを防ぐことも重要です。
発酵食品には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。
1つ目は、腸内環境に関係することが多いため、ガスの発生が増加する点です。
善玉菌が腸内で働くため過剰なガスが生成されます。
腹部の不快感や膨張感を起こすことがあるでしょう。
食物繊維や乳酸菌が多い発酵食品を大量に摂取した場合、ガスを作り出すリスクが考えられます。
2つmは、塩分の過剰摂取の恐れがあることです。
醤油・漬物などの一部の発酵食品には、塩分が多く含まれます。
そのため、過剰に摂取すると、その分だけ塩分過多になるでしょう。
高血圧やむくみの原因になることも考えられるのです。
3つ目は、アレルギーのリスクがあるかもしれません。
おもに乳製品と大豆製品には、アレルギーを引き起こす物質があり、過剰摂取はかえって体調を崩すことがあります。
発酵食品の摂取では、適量を守りながらバランスの良い食事を心がける必要があることを考慮しておきましょう。
発酵食品は、腸内環境の改善・免疫力向上・生活習慣病予防・美肌といった健康効果をもたらす可能性が秘められています。
発酵食品によって、どのような健康効果が期待できるのかを詳しく解説していきましょう。
発酵過程によって微生物が発生し、原料に含まれたでんぷんやたんぱく質を分解することで、新しい栄養素が誕生します。
つまり、発酵時点ですでに形成されているので、あえて体内で分解する必要がなくなると思ってよいでしょう。
その分、体への負担が軽減され体内吸収率が高まります。
発酵食品での健康効果で、最もわかりやすいのが免疫力強化です。
発酵食品に含まれる乳酸菌や納豆菌には、腸内環境を整える働きがあります。
発酵食品からとり入れる手軽さと、摂取による免疫力の強化こそ、健康維持に役立つでしょう。
発酵食品を摂取することで、老化を抑制することが期待できるでしょう。
老化の原因とされるのは、体内にて活性酸素が増えることによります。
発酵食品は、活性酸素の発生を抑える抗酸化物質の摂取が有効です。
味噌・ワインなどの発酵食品には、抗酸化物質のポリフェノールが豊富に含まれています。
体内の酸化を防いでくれるでしょう。
また、アミノ酸や酵素などの新しい細胞の生成を促すことで、美肌効果も期待できるのも特徴です。
発酵食品を摂取することで、生活習慣病の抑制が期待できます。
多くの発酵食品にはビタミンB群が含まれ、基礎代謝を促進する作用があるので、その恩恵といえるでしょう。
味噌・醤油・納豆など大豆による発酵食品には、イソフラボンが含まれていて、血液中の悪玉コレステロールを減らす働きがあります。
そのため、動脈硬化の予防に寄与するとされているのです。
発酵食品を適宜に摂取すれば、ストレスの軽減にもなるでしょう。
味噌・納豆・ぬか漬け・キムチ・ヨーグルトなどの発酵食品には、天然アミノ酸の一種「GABA(ギャバ)」が含まれています。
GABAは、神経伝達物質として脳の興奮を鎮め、リラックス効果をもたらす抗ストレス作用があるとされているからです。
毎日の習慣として、発酵食品を規則正しく摂取しながら心のケアも期待していきましょう。
発酵食品には菌類の活動が欠かせません。
どのような食品を作るのかは、菌類の選択によって決まります。
おもな菌類としては、麹菌・酵母・乳酸菌・納豆菌などが典型的です。
これらの微生物には、食品の風味や栄養価を高めて保存性を向上させる効果があります。
では、発酵食品を形成する菌類について解説していきましょう。
麹菌は、日本の発酵食品の歴史を作り上げた重要な菌類です。
日本の麹菌は「コウジカビ」とも呼ばれ、日本人の食文化になくてはならない存在として重宝されています。
カビの一種とされ、味噌・醤油・日本酒・焼酎などの製造に関わり、現在でも広く使用されています。
麹菌には酵素があり、デンプンやタンパク質を分解し、旨味成分を生み出すのが特徴です。
また、クエン酸も生成するため、食品の保存性を高める効果が期待できるでしょう。
酵母も、古くから親しまれている、発酵食品を生み出してきた真菌です。
とくに、アルコール発酵をするのに用いられてきました。
ビール・ワインなどのアルコール飲料やパンの製造に不可欠です。
酵母は、糖を分解してアルコールと二酸化炭素を作り出し、それが風味や香りの良さを演出するとされています。
乳酸菌は、おもに乳製品の発酵に広く使用される菌類です。
ヨーグルト・チーズをメインに、キムチなどにも活用されています。
乳酸を生成することで酸味を出し、保存性を高める効果があるのが特徴です。
また、腸内環境を整える効果も期待できます。
納豆菌は、日本固有の菌類といえるでしょう。
枯草菌の一種とされ、納豆の製造に用いられます。
大豆のタンパク質を分解し、独特の風味や粘りを作り出すのが特徴です。
ナットウキナーゼが、血栓溶解酵素を生成することでも知られています。
発酵食品を効果的に摂取する方法としては、おもに以下のようなポイントが考えられるでしょう。
● 食べ合わせの工夫
● 日常生活への反映
● レシピの工夫
では、詳しく内容を解説していきます。
発酵食品の効果を引き出すには、食べ方・食べ合わせの工夫が必要です。
発酵食品はそのまま食べるのが前提ですが、料理へ取り入れることができます。
ヨーグルトは、フルーツやナッツと組み合わせれば、栄養価や風味も向上するでしょう。
納豆は、ネギ・しょうが・醤油を加えることで、臭みがやわらいで食べやすくなります。
味噌は味噌汁に限らず、スープ・ドレッシングに使うことができるでしょう。
あるいは、納豆・キムチを一緒に合わせてみてもよいでしょう。
相乗効果が期待できて、腸内環境にもよい影響が考えられます。
発酵食品を上手に取り入れるために、さまざまなアレンジを試してみましょう。
発酵食品は、とにかく日常生活に取り入れるように工夫が大切です。
朝食にヨーグルトを追加する、納豆をサラダに加えるなど、ちょっとしたアイデアと発想が大切になります。
キムチや漬物は、夕食の副菜としていつも食卓に出すようにすると、食欲増進にもつながるのでおすすめです。
また、発酵食品を使ったプロテインバー・発酵ドリンクをなども市販されています。
ライフスタイルに合わせながら、日常的に発酵食品を摂取して楽しむようにしましょう。
発酵食品をうまく利用しながら、自分なりに得意なレシピを考案してみましょう。
発酵食品の多くは、単品で食べることができますが、それだけではなく、他の食材とのコラボレーションが可能です。
例えば、ヨーグルトは考え方次第で、無数のレシピが作れます。
もしパフェをつくるのであれば、以下のようなレシピです。
材料はヨーグルト・グラノーラ・好みのフルーツ・はちみつを使ってみましょう。
● グラスにヨーグルトを入れグラノーラを重ねる
● そこへさらにフルーツを乗せる
● 最後にはちみつをかけて完成
納豆サラダの作り方も簡単です。
使う材料は、納豆・きゅうり・トマト・アボカド・市販のドレッシングを使います。
● 野菜を食べやすい大きさに切る
● 納豆と混ぜる
● お好みのドレッシングをかけて完成
キムチ炒飯のレシピも簡単です。
材料は、ご飯・キムチ・卵・ネギ・醤油を揃えます。
● フライパンで卵を炒める
● ご飯とキムチを加える
● 全体が温まったら醤油で味を調える
● 最後にネギを適宜散らして完成
人間の味覚としては、甘み・苦味・塩味・酸味を感じるものですが、他にも旨味なども実感できる性質があります。
中でも、発酵食品からは深い旨味を感じ取ることができるはずです。
発酵食品は、栄養価が高く独特の旨味や風味を放ち、保存性もあることで、昔から世界中で採用されてきました。
健康効果も期待できて、食生活において重要な役割を果たしています。
発酵食品では、酵母・細菌などが存在しますが、10μm(マイクロメートル)以下なので、肉眼では確認ができません。
しかし、これらの働きによって成立します。
元になる食材から発酵によって新しい成分が生成されることで、人体にも必要な栄養素が生まれるのが特徴です。
ビタミンB群・ビタミンK2・ミネラル・アミノ酸などが一般的で、効率よく補給できるでしょう。
さらに、乳酸菌や酢酸菌は、腸内環境を整え、免疫力を高める効果があります。
とくに、日本は発酵食品大国としても知られているので、あらゆる発酵食品が手軽に入手できる環境です。
ぜひ、日々の食生活に取り入れながら、健康的で豊かな生活を送りましょう。
